【インタビュー】WANDS、『名探偵コナンvs. 怪盗キッド』テーマソング「大胆」に挑戦「初々しい気分でいられるのは嬉しい」

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■ギターパートもアレンジ要素のひとつ
■この曲は楽しかったかもしれない


──では続いて、「大胆」通常盤のカップリング曲「honey」について話しましょう。

柴崎:「honey」は8ビートだけど、ダンスっぽい雰囲気も、ロックンロールっぽいニュアンスもある曲です。ライブで気楽に盛り上がれる曲を作りたかったのと、WANDSにはベースからスタートする曲がないのでベースリフ始まりにするのもいいなと。そのあたりを制作の導入口に作りました。頭のベースリフは、フレーズ的にいなたいというか、ベースは分かりやすいものにして、他のパートでがんばろうというイメージでしたね。

──幕開けのベースリフはスモーキーな味わいがカッコいいです。「honey」も曲中のセクションごとにテイストが異なりますが、そのあたりは自然な結果でしょうか?

柴崎: 1990年代の定番の曲構成ってあるじゃないですか。Aメロ、Bメロ、サビを2回繰り返して、間奏、Dメロみたいな。WANDSも当時はその形でしたけど、第5期として新たな曲を作るにあたって、そういうところから少し離れたものにもトライしてみようという考えもあったんです。だけど、「honey」は逆に1990年代の感じがいいのかなと思って、こういう曲構成にしました。

──ただ、曲構成としては王道ですが、Bメロがコンパクトだったり、サビ後半がメロディアスだったり。パチパチッと場面が変わるモダンな感覚もあって、1990年代オマージュという感じはしません。

柴崎:本当ですか? たしかに僕としても時代感は意識していなくて、あまり小賢しくしないほうがいいと思ってアレンジした感じですね。でね、歌がかなりロックフレイバーを持ち込んでくれたというのがある。歌い出しを聴いた瞬間、予想以上に良くてめちゃくちゃシビれました(笑)。


▲柴崎浩 (G)

──「honey」のブルージーなボーカルはすごく魅力的です。

柴崎:そう。上原のなかにそういう要素があることは知っていたけど、ちょっとビックリしたというか。いい歌を歌うなと改めて思いましたね。

上原:どちらかというと、こういうのは得意分野なんですけど、カップリングだからこそ出せたというか。タイアップ曲や表題曲でここまでやり切ってしまうと、“これはWANDSじゃない”とか、賛否もすごいだろうなと思うんですよね(笑)。だけど「honey」はカップリング曲で、そもそも他とちょっと異なる楽曲なので、好きなように歌おうというか、大史でしかない歌というか。往年のWANDSをまるで意識していないんじゃないか?というくらいのボーカルになっていると思います。

──それがいい方向に出ていると思います。

柴崎:そうなんです。何にも繋がれていない状態で、解き放たれたように歌っている感じがすごくいい。

──それに、Aメロには1拍3連のメロディが出てきたりして、そういうところにもセンスの良さを感じます。

上原:そこに令和を感じてもらえると思います(笑)。

柴崎:最近のK-POPに多いよね(笑)。

上原:そうそう(笑)。

──WANDSらしさを継承しながらも柔軟に時代性を採り入れることで、「honey」という楽曲に新たな魅力が生まれています。歌詞は夜のドライヴをモチーフにした艶やかなものですね。

上原:家で“うーんうーん”と聴く感じじゃなくて、ライブでみんなが楽しくなるような曲かなということで。勢いがあって、でもカッコいいみたいなところを意識して作詞しました。1980年代だったり、昔のヤンチャな感じを令和にフィットさせるように最適化した、みたいなイメージかな。

──オシャレありきのセクシー感が魅力的です。

上原:そこはやはり国民的バンドなので(笑)。WANDSという看板がある以上、セクシーを通り越して、ただのエロみたいな歌詞ではなくて、普通の人の少しセクシーくらいにとどめました。


▲名探偵コナン盤

──そういった見極めもさすがです。そして「honey」のギターはまず、クリーントーンと歪んだ音を左右のチャンネルに振ったアンサンブルが印象的です。

柴崎:この曲のバッキングはドラムとベースと一緒になって、気持ちいいリズムを出したいというのがありました。ユニゾンしているところも結構多くて、ちょっとした歌の隙間にメロディーになるようなフィルインというか、そういうフレーズが聴こえてきたらいいなというイメージでしたね。間奏は元々、最初の8小節くらいはギターソロを入れていなかったんだけど、上原が自由にフェイクを入れてくれて、だったらそれに呼応するようなギターソロを入れたらいいじゃんと思って、後から足したんです。

──そこから本格的なギターソロに入っていく流れも秀逸です。

柴崎:ライブっぽい感じになっているのもいいんじゃないかなって。ギターソロは、僕が大好きなブルージーなニュアンスを入れることにしたというのもあって、楽しく弾けました。

──ブルースフィーリングを押し出しつつ、エモーショナルなフレージングで締め括るあたりは柴崎さんらしいです。あと、この曲のギターは左チャンネルで鳴っているクリーントーンに軽い衝撃を受けました。ガツンとしたクリーントーンでコードストロークをされていて、柴崎さんはこういうプレイもされるんだ!?と思ったんです。

柴崎:ファンキーな感じにしたかったんです。だから、リアのハムバッカーピックアップでクリーンを弾いちゃうみたいな。洗練感のあるシングルコイルのハーフトーンとかじゃなくて、武骨な感じのクリーンでいきたかったので、ちょっと思い切ったことをしました。

──柴崎さんはストイックに曲作りやアレンジなどをされているうえで、ギターを弾くステップになると、いちギタリストとして弾くことを楽しまれている感じが伝わります。

柴崎:そうですね。この曲は楽しかったかもしれない。

──えっ、「この曲は」ですか?

柴崎:いや、曲全体のアレンジをしていると、ギターパートもそのアレンジ要素のひとつじゃないですか。なので、“ギターでめちゃくちゃカッコよくしてやるぜ”みたいな部分で言えば、そこまで元気が持たないというか(笑)。アレンジャーが別にいて、自分はギターを弾くだけであれば、“よし、腕の見せどころだ。カッコよくしてやろう”ってことだけに頭を使えるけど、自分でアレンジもするとなると、他にエネルギーが必要なところがたくさんあるんですよ。

──なるほど。楽曲トータルで見るプロデューサー的な視点も必要でしょうし。

柴崎:僕が曲を作る時の優先順位って、まず曲を聴いてノレるとか、楽しいとか心地いいとか、歌いたくなるメロディーである、といったことが上のほうにあるんです。ギターはそう思わせる要素のひとつじゃないですか。なので、優先順位が低くなりがち。その一方で、“お前、ギタリストじゃん”とも思うし、事実ギタリストとして見られているわけだし、“ギターをがんばらないでどうするんだよ”とも思うわけですよ。そういう自分のなかでのせめぎ合いみたいなものは、たしかにありますね。たとえば、アレンジャーが別にいて「ギターソロのコード進行どうしようか」という話になった時、僕はわざわざ難しくするんですよ(笑)。で、いざギターソロをレコーディングするとなったら、コード進行が難しくて弾けない…みたいな(笑)。

上原:あはははは!

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