【ライブレポート】未来古代楽団、2度目のライブ、テーマは「学園」

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砂守岳央(指揮・マニピュレート)

未来古代楽団が、2023年に続き2度目となるライブ<追奏のニシュカサル~祝祭あるいは断章7~>を、4月20日に東京スクールオブミュージック&ダンス専門学校9Fホールにて開催した。

2023年より本格的にアーティストとしての活動を始動した未来古代楽団は、1年ほどでYouTubeチャンネル登録者数が20,000人を突破するなど、勢いに乗る中での2度目の主催ライブとなった。

未来古代楽団は、主宰の砂守岳央(指揮・マニピュレート)を中心に毎回参加メンバーが異なることを特徴としているが、今回音色を奏でる楽団員は砂守のほか、吉田篤貴(ヴァイオリン)・河村泉(ヴィオラ)・豊田耕三(アイリッシュフルート/ティンホイッスル)・松岡美弥子(ピアノ)・吉田和人(ギター)・田中教順(ドラム)という面々に、前回に続きLuciaとbotan、さらにデジタルロックシンガー・VALSHEをゲストボーカルに迎え、3つの異なる歌声で会場を彩った。


吉田篤貴(ヴァイオリン)


河村泉(ヴィオラ)


松岡美弥子(ピアノ)


吉田和人(ギター)


田中教順(ドラム)

   ◆   ◆   ◆

ライブ会場は専門学校で、学校の玄関をくぐり、エレベーターでライブ会場に上がると何やら無機質な「ゴーレム管理人」の声に迎えられた。ここは未来の「学園」で、これから「古代音楽の研究発表会」が行われるという。

これは、各楽曲にまつわるエピソードが順番に語られ、壮大な物語が紡がれるストーリーライブなのだ。

突然の展開に客席が驚く中、楽団員が登場し、最初に奏でられたのは「吸って、吐く」。ライブオリジナルのインストバージョンが披露された。メンバー紹介のように交代で奏でられるメロディが未来古代楽団の世界へと誘う。

二曲目に登場したのは黒の衣装と大きな帽子を被り、赤色の髪が映える妖艶な姿のゲストボーカルbotan。2023年末にリリースされた「フタハ」をライブで初めて歌いあげる。

楽曲にまつわる研究成果=ストーリーが語られたあと、次に歌われたのはグリムエコーズの主題歌「はじまりのまえ、おしまいのあと」。繊細な歌声と演奏が会場を包み込んだ。続いて演奏されたのはTVアニメ『グリムノーツ The Animation』挿入歌「英雄の詩篇」。グリムシリーズのファンにとって懐かしい2曲だ。

会場一体が別世界に迷い込んだような雰囲気となる中、こちらもライブ初披露となる「さよなら、光」が演奏される。未発表の映像とともに"別れ"という感情について語るように歌われた。そしてbotan最後の歌唱となるのは「銀の旧約」。会場に優しい温度感を残し去っていった。


botan

会場が拍手で包まれる中、輝くようなティンホイッスルの旋律が響き渡る。そこに次々と音が連なり重ねられていき、やがて手拍子が巻き起こった。インストゥルメンタルで演奏されたのは「輪廻する大地の舞踏」(「グリムノーツ オリジナルサウンドトラック」)。古くからのファンには嬉しいサプライズだっただろう。


豊田耕三(アイリッシュフルート/ティンホイッスル)

次に登場したのはLucia。白いドレスに身を包み、どこか儚く優しい研究員を演じる彼女が最初に披露したのは「エデンの揺り籃」。未来古代楽団とLuciaの初フィーチャリング曲という思い入れの強い楽曲であり、美しくも力強い歌声が響き渡った。

「もろびと」では、Luciaの「お手を拝借」の言葉で、あまり聞き馴染みのない"13拍子"の手拍子が刻まれる。未来古代楽団公式X(旧Twitter)では事前に手拍子の練習動画が投稿されており、完璧に叩いているファンらの姿に驚いた。

不思議な一体感(と、一部の困惑)の中、YouTubeチャンネルでも人気の楽曲「醒めない夢の微睡みの」で会場の熱量が一気に高まる。そして、Luciaパート最後の楽曲は、未来古代楽団とのタッグでリリースされた初のアルバム『神話集1[兆光]』より、「黄金」。壮大な映像とともに見事に世界観を表現した。


Lucia

Luciaが去るとともにピアノソロで演奏されたのは「止まり木の歌」。優しい音色が会場を包む中、金色があしらわれた黒いジャケットの凛々しい姿で登場したのは、今回初参加となるゲストボーカルVALSHE。

自身のオリジナルナンバーで、ピアノ・松岡美弥子が編曲を担当している「doctus-7.8.6.9-」。今回の出演につながるきっかけとなった楽曲を、圧倒的な歌唱力と迫力で披露し客席を奮い立たせた。


VALSHE

VALSHEは少し毒舌なキャラクターという役回りで、心地よい低音の声色で淡々と楽曲解説をしていく。次に演奏されたのは、なんと未発表の新曲「約束のプリムラ」。本公演で初披露となったこの楽曲は「今後研究への支援が大きくなれば、この曲も世に出るかもしれない」と冗談めかして語られただけに、今後のリリース情報に期待がかかる。

VALSHEの圧倒的な存在感が会場を飲み込む中、今回自らのリクエストで実現したカバー「光あれ」が披露された。サビで放たれる美しい高音は鳥肌ものである。


VALSHE

いよいよ本編の最後、奏でられた楽曲は「忘れじの言の葉」。

おそらく、この曲をきっかけに未来古代楽団を知ることになった人が多いだろう。楽団員も、ファンにとっても特に大切な楽曲である。さらに今回のライブで初披露となるオリジナル映像も交わって、締めにふさわしい演奏となった。

終演後、カーテンコールで「現代に戻って参りました」と、主宰の砂守が登場する。その言葉に、本当に別世界から帰還した感覚となった。未来古代楽団のファンにそろそろ名前をつけようと考えた名称が「未来古代人」だと発表すると、会場から笑いが巻き起こる。今回は“東京スクールオブミュージック&ダンス専門学校”(通称TSM)にあるライブスペースでの開催であり、準備や当日の運営などに協力をしてくれた学校の教員や学生に向けて感謝の言葉を述べた。そして最後に「次回ライブ!Next Winter!ここまでしか発表できない!」と"次の冬"にライブ開催が決定したことを発表。

砂守のメンバー紹介でステージ上に全員が集合し、会場は大きな拍手に包まれながら幕を閉じた。


砂守岳央(指揮・マニピュレート)

文◎瑞貴えのぐ
写真◎伊藤真広(TRANSISTOR)

◆未来古代楽団オフィシャルサイト
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