【対談】GLIM SPANKY × LOVE PSYCHEDELICO、音楽愛に満ちたコラボ曲を語る「この4人でひとつのバンド」

■デリコのスタジオのパソコンが
■これ以上は録れないってところまで
──何日ぐらいスタジオに入ったんですか?
亀本:けっこう行きましたよね。
松尾:マネージャーがさっき調べたら、計16回でした。
亀本:半月やってるじゃないですか。
──スタジオに集まってセッションが始まっちゃったら、いつまでも終わらないんじゃないか?って気もするんですけど、その日1日はどんなふうに終わるのかちょっと気になったんです。
NAOKI:疲れたら終わりみたいな感じだったよね。
KUMI:私がそんなに遅くまでいられないから、私がまず「帰ります」って。
亀本:それでも夜9時とか10時とかまでやってましたね。最後はけっこう詰め詰めな感じでやりましたけど。
KUMI:そうだね。最後は遅くまでやったね。
亀本:ギターを録るまでは割とさくさくやってたと思うんですけど…ギターは2日ぐらい掛けて録りましたね。
NAOKI:ギターDAYっていうのがあって、それはもう亀ちゃんと二人きりでね。“このトラックを録ろう”ってなったら、まずアンプにマイクを立てるところから始めて、OKテイクが録れたら、普通は次に行くんだけど、そこはじっくり。たとえば、“今、Fenderのアンプで録ったけど、Voxのアンプだったらどんなふうになるだろう?”って。
亀本:アンプを変えて、もう一回やりましたね。
NAOKI:どっち使ってもいいように。ほとんどのテイクはそういう感じでやったじゃん。
亀本:やりましたね。アンプに繋いだ状態でサステインとかコンプレッションとかが、ある程度掛かってる音色で録ったじゃないですか。
NAOKI:そうだね。僕はミックス前の録りの段階で、EQもけっこう決め打ちで“かけ録り”しちゃうんだけど。Lowが要らないと思ったら、もう録りの段階でばっさり切っちゃうとか。“一応どうにでも料理できるようにフルレンジで録っておこう”じゃなくて、トラックごとサウンドまでに決め打ちの録り方をしてたよね。ただ、そうやって丁寧に録ったのはいいんだけどさ、いっぱい録りすぎちゃって、ミックスするとき、めちゃくちゃ迷ったんだよね(笑)。
松尾:そうだそうだ。デリコのスタジオのパソコンがこれ以上は録れないっていうところまでいきましたね。
NAOKI:Pro Toolsが、“トラックが足りません”ってなった(笑)。
亀本:でも、そういう録り方ってあんまりやったことがなかったら、すごくおもしろかったです。
NAOKI:そこらへんは一番順調だったよね。最初のソングライティングの作業は、いろいろなアイデアを試したからけっこう時間が掛かったけど、その分、4人の意見をソングライティングに入れることができたわけで。
──GLIM SPANKYの二人はBARKSインタビューで「デリコとアルバムを作りたいと思うぐらい楽しかった」と言ってましたけど。
KUMI:おもしろいかもね。
松尾:個人的には4人で曲作りが成立するってことが奇跡的だと思っていて。私、誰かと曲を作るとか、本当に無理で。今回は、“デリコ大好きだったし、信頼があるから絶対大丈夫”って気持ちから入ったので、そんなことは全然なかったんですけど。たとえば誰かとメロディーを作るにしても自分たちの音楽マナーだったり、ルーツだったり、感覚だったりが合わないと、もう永遠に終わらないような気がしてたんですよ。でも、今回、それをやってみたらすごく楽しくて。歌詞もNAOKIさんとKUMIさんと私の3人で、いろいろとアイデアを出し合いながら作りましたけど、普通だったらストレスになるであろうことがめちゃめちゃ楽しかったっていうのが自分でも驚きで。ああいう音楽の制作っていうのをまたやりたいって思ってます。
KUMI:次があったらさらに進化しそうだね。
NAOKI:“1曲、ミックスまで16日”って決めておけば、できるかもね(笑)。
松尾:お菓子も持ち寄って。おなかが空いたらピザを頼んで。
亀本:ピザ、旨かったね。
松尾:ピザパーティーを二回やりましたからね。

──さっき「楽器は持っているんだけど、お菓子を食べながらお喋りしていた」という話が出ましたけど、どんなことを喋るんですか?
亀本:いろいろですよ。
松尾:うん、いろいろ。
亀本:もちろん、今作っている曲の話だったり、それとは関係ない別の音楽の話だったり、楽器の話だったり、本当にいろいろなことを話した記憶があります。
松尾:雑談も含めね。
──雑談って、この4人だとどんなことが話題に上るんですか?
NAOKI:学生時代の話とかね。みんなが思ってるほど、先輩後輩みたいな感じじゃないですよ。
松尾:でもそれは、KUMIさんとNAOKIさんの懐が深いというか、私たちに対して、心を開いて接してくれるので。だから、普段の会話もめっちゃ楽しいし、曲のアイデアも本当に出しやすいんですよ。“却下されるかも”なんて思わせない、いい空気を作ってくれるから。
NAOKI:意識して、そうしてたわけじゃないよ。

松尾:じゃあ、めちゃめちゃ相性が良かったわけですね。そうそう、NAOKIさんはKUMIさんの歌を録るとき、毎回、遮音板を組み合わせて、その上にでっかい布とかカーテンとかを乗せて、特別なテントを作るそうなんですけど、今回もそれを作ってくれて。「おはようございます」ってスタジオに行ったら、NAOKIさんがカンカンって大工さんみたいなことをしてるから、「何ですか、これ?」って訊いたら、「いつもやるんだけどさ」って。その中にいい感じの間接照明を入れてくれて。それが本当に特別な空間になるんです。
NAOKI:そうやって、その曲にふさわしい広さの部屋を作るんですよ。
──「曲にふさわしい広さ」というのは?
NAOKI:レコーディングに使うコンデンサーマイクって感度がすごく高いから、壁に跳ね返った声も遅れて拾うんですよ。いわゆる“部屋の響き”というのが多かれ少なかれ必ず入るんです。だから、毎回その曲に合わせて、どれくらいの距離感で聴こえるのが一番いいのか考えて、たとえば2畳なのか3畳なのか、その楽曲の声の響きにふさわしい広さの部屋を作るんです。距離だけじゃなくて、壁や天井の素材や質感もマイクに影響するからそれも曲に合わせて変えてね。
松尾:それのお陰で、曲の世界観により入り込めたっていうのもあったし、“デリコの歌ってこうやって録ってるのか”って納得もいったし。もちろん、KUMIさんのボーカルが最高っていうのは当たり前として、そういうレコーディングのやり方も自分的にはいい発見だったと言うか、いい経験ができました。そう言えばKUMIさん、ご自宅からイスを運び込んでましたよね。
NAOKI:ディレクターズチェアみたいなやつね。
KUMI:スタジオの居住性を高めようと思って。
NAOKI:みんなで喋ってる時間が長いからね(笑)。







