予言していた未来が現実に!

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予言していた未来が現実に!

『Pioneers Who Got Scalped (An Anthology)』は、Devoとして大々的にリリースされたニューアルバムである。

このCDをプレイするだけなら大した心の準備は要らない。だが聴いていくにつれ、この矛盾の塊のようなバンドに頭をかきむしっている自分に気がつく。

聴くんじゃなかったと思うかもしれない。そう、オハイオ州アクロン出身の彼らは、二つとないまったく奇妙なバンドなのだ。

大抵1曲か2曲も聴けばDevo独特の世界の虜になってしまう。

『Pioneers』のCDは4面もあり、凝ったパッケージがバンドのビジュアルな面を強調している。彼らの代表曲とレアな曲を集めたこのアルバムは、DevoファンにもアンチDevoにも、相変わらず次の問いを突きつけてくる。

彼らに啓蒙された気がするのか、それともウンザリするのか? 元気づけられるのか、ぞっとするのか? 同感なのか、それとも反対なのか?

1つ確かなことがある。それは、5人のメンバーはエレクトロニクスやパンク、ポップ、過去のロックに未来のロックを、ほろ苦い1粒の錠剤に押し込み、まさにニュージェネレーションを予見していたわけであり、彼ら自身、このコレクションアルバムに誇りを持っているだろうということだ。

いや、誇りというのは正しくない。Devoの創設メンバーの1人、Jerry Casaleも言うように、このRhino Recordsからのリリース作は

僕たちのアイデアじゃなかった。レコード会社が勝手に決めたことで、僕としては少なくともそのパッケージには意見を反映させたいと言っただけなんだ。何が何でもリリースするというんであれば、何かしら僕たちの形跡を残しておきたいからだ。だからリリースの理由は知らないし、僕ならもっと違ったものにしただろうけど、パッケージは気に入ってるよ

Casaleは曲の順番と選曲に一番腹が立ったと言うが、過去を振り返る内容にはかなり満足するはずだ。52ページのブックレットに、CasaleとDevoの創設メンバーMark Mothersbaughの個人的な写真、またバンドの20年間にわたるビジュアルや、レアな音源(Nine Inch Nails「Head Like A Hole」のカヴァーなど)が満載された『Pioneers』は、なんら恥じるところのないアルバムである。

Devoは「Whip It」「Freedom Of Choice」「Beautiful World」などの初期ヒット曲で、考えうるあらゆるエスタブリッシュメントをコケにしているが、その彼らにしてさえ出し抜くことができなかった相手がいた。音楽業界である。

戦略にかけては世界有数のロックバンドが、金銭面で業界のやり手にまんまとしてやられた話をCasaleから聞くのはショッキングだ。だからその真実に耐えられそうもない人は、ここから目をつぶって欲しい。

Casaleの話はこうだ。

いつだって主客逆転の落とし穴があるってこと。Devoはレコード業界の餌食になったんだ。(『Pioneers』のアルバムカヴァーの)トマホークを投げている連中は、実は金目当てのビジネスマンなのさ。ヒッピーを気取ってるが、本当はスーツを着込んだ実務担当者で、汚い手を使って僕たちを利用した。あるいは僕たちにとってもうまい話だったのに、連中が約束を守らなかったと言ってもいい。まったく素晴らしい手口だったね。金をちょろまかすことにかけては天才的さ。僕たちの知らない間に金が消えてしまう。連中の会計操作ときたら悪評ものなんだ。ありとあらゆる手口で僕たちから金を巻き上げてしまう。あれだけ一生懸命やったのに、後味悪いよ

だが悪いことばかりグチグチ言うのはやめたらどうだろう?

Devoも結局人間だったということ。彼らが一番興味を持っていたのは、その人間だったはずだ。これまで社会の腐敗についてはっきりと物を言い、その結果、聞く耳を持つ人が多いこともわかった。

Casaleは言う。

僕たちは誰も話題にしていなかったことを取り上げて、別の世界を提供したんだ。人々に考えさせ、エネルギーを与えた。皮肉やウイットに富んだバンドとして知られた僕たちの存在は、人々の頭にくっきりと焼きついたシンボルとなったんだ。社会に取り残されたり、なじめなかったり、世の中が正当に認めないことを考えていた人々を、僕たちが正当に認めたということなんだ。思想や文化、政治、科学の進歩など、いろんなことを取り上げた。ロナルド・レーガンみたいな愚か者も攻撃の対象だった

'72年にバンドを始めた時、CasaleとMothersbaughは、レコード会社の上層部などに決して左右されない、目に見えない威力に導かれていると信じていた。

社会的立場のある企業のトップは、マラソンをやるとか、バンドを組んだりポルノ映画を撮ったりするなんて考えもしない。こういうことは自分の中の何かに突き動かされてやるもんなんだ。やらずにいられないからやるんだよ。やらなければ、いてもたってもいられないからなんだ。遺伝子に組みこまれた義務感みたいなものさ」とCasaleは強調する。

こういうことが言えるのは、やはりDevoには、聴き手の体に突き刺さり、心の中にグサッとくる良い歌を書く才能があったからだ。

Jerryの兄弟のBobと、Markの兄弟のBob、それにドラムのAlan Myersと共に、CasaleとMothersbaughは多くの歌を書き、画期的なサウンドで『Q: Are We Not Men? A: We Are Devo』『Duty Now For The Future』『Freedom Of Choice』『New Traditionalists』などのアルバムを出した。

Casaleは言う。

僕たちは新たな組み合わせ方を示したんだ。作曲の方法やサウンドの重ね方も変わったやり方をした。ある意味で数学問題をやるような感じだ。クリエイティヴィティを発揮したし、歌詞もセックスとドラッグ以外のことを取り上げた。セクシーにやるには他の方法もあるということを示したんだ。思想を掲げて組織力を高め、チームワークに徹し、個人主義崇拝を超越することによってね。Devoの人気はエネルギーと熱意、正確さにあったんだ

Devoやその写真を見た人なら誰でも、バンドの統一性に驚くはずだ。5人のメンバーは背丈も体重もほとんど同じ(靴のサイズさえ一緒らしい)。結束した戦闘力を見せつけたことは、彼らの成功に大きく貢献した。波長が合っていることがバンドの第一条件だったが、団結力を高めたのはそれだけではなかった。

努力の賜物さ」とCasaleは言う。

ものすごい練習を重ねたんだ。しかも長期間にわたってね。だからあれだけのことができたのさ

解散した理由を聞くと、Casaleは率直に、質問に質問で答えてくれた。

それが人間ってもんじゃないのかい? 企業だって、初めはいいことをして良いサービスを提供するのに、結局自社のパロディになってしまうのは、いったいどうしてだい? アーティストを見てみろよ。みんな最高の作品を出すのは最初の2年ほどだ。売れまくるようになるとクズばかり作ってる。それはなぜだい?

もしDevoがインターネットなどなかった'70年代でなく、今の時代に生まれていたら一体どうなっているだろうか。

想像通りCasale自身、大のネットファンで、インターネットには人間性の最高の部分と最低の部分が両方表れているという。

これは4次元の世界だよ。良くも悪くも宣伝と情報が幾何学的に増大することになる。そこには人間の意識状態を完全に自由に解き放ったものがあふれている。つまり、醜いこともキテレツなことも汚れた栄光も、そのまま放置されているってことだ

今Devoが存在したら、インターネットを洗練されたやり方で存分に使うだろうね。それは間違いない。ウィルスのように増殖して、あらゆる組織に入りこむ音楽を発信するだろうさ

もちろん今のCasaleはそんなことは決してしない。最近では多少地位もでき、テレビコマーシャルや、Foo FightersやSilverchairなどの音楽ビデオの監督を務めている。

一方Mark Mothersbaughは、これも需要が高いコマーシャルのサウンドデザイナーとなっている。確かにDevoは世界を乗っ取ったとはいえないが、Casaleはかなり自負している。

Devoは制度化された文化を攻撃しただけでなく、そういったことに対する人々の考え方を変えるきっかけとなったと考えているからだ。

僕たちは一般に信じられていた通説をぶち壊し、今では当たり前と思われていることを取り上げていたんだ。権威には正当性があると考えられているが、例えば民主党と共和党には違いがあるだとか、組織化された宗教やテレビを使った伝道活動は良いことだというのは、故意の偽情報なんだよ。今後も状況は同じさ。テレビ番組の『E! True Hollywood Stories』なんか見てみろよ。故意の偽情報と狂気ばかりじゃないか。Silverchairみたいな類人猿が乗っ取ろうとしている。いや、もう乗っ取ってしまった。だから僕たちの言ってたことは正しかったのさ。ただ、今じゃ現実過ぎて冗談にもならないがね

by David Weiss

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