決め手を欠いた発展途上のライヴ

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決め手を欠いた発展途上のライヴ

昨今のアートロックのコンサートは、こんなふうに始まるのだ。

二人の女性がテーブルに座って、一本のスポットライトの下でストリップポーカーをやっている。観客は彼女らが一枚ずつ服を脱いでいくたびにやんやの喝采を送っていたが、最後に二人がキスを交わすとライトが消えて、聞き取りにくい声による詩の朗読が流れた。

その次の瞬間、A Perfect Circleがステージに登場し、いきなり「The Hollow」の演奏を始めたのである。

そうした演出にどんな意味があったのか定かではないが、エキサイティングなヴィジュアルを提供するためだけにでも、バンドは女性たちにポーカーゲームを続けさせることを検討すべきだったかもしれない。

ToolのリードシンガーMaynard James Keenanをフロントに据えたA Perfect Circleは、『Mer De Noms』を年間で最高のヘヴィロックのデビュー作として誇りにしていいだろう。

しかし、ライヴでのKeenanの奇妙にエロティックなパフォーマンスアートのスタイルを別にすれば、このバンドを見ているのは二人の老婦人がゴーフィッシュに興じているのを見るのと同じくらい“魅力的”なものであった。

極めてラフなサウンドミックスが事態を好転させるはずもなく、「Orestes」「Rose」といった曲に聞かれるバンドのゴージャスな繊細さは台無しにされてしまった。また「Judith」(この日のセットで最も直截的かつTool風の曲)や「Thinking Of You」といったギンギラのヘヴィチューンではどうにか輝きを保っていたが、最大の問題点は赤い超短パン1枚になって熱演したKeenan自身が認めるように、彼らにはアルバム1枚分のレパートリーしかなくヘッドライナーを務めるには曲が足りないという点である。

そのため充分なカタログを持つバンドならば提供できるような自然なメリハリをセットにつけることができないのだ。A Perfect Circleが提示した解決策は、Ozzy Osbourne「Diary Of A Madman」の歌詞とThe Cureの「Lovesong」の曲を組み合わせた突然変異的なカヴァーであったが、大半がMTV育ちの観客の耳を通り過ぎてしまう果敢な失敗に終わった。

Keenanは確かに現在のハードロックのシーンにおいて最高の声を持っているし、A Perfect Circleの音楽は彼がフルタイムで参加しているバンドに匹敵する魅力がある。しかし、彼らはバンドとしてはまだ発展途上であり、この夜のショウも切り札を何枚か欠いたゲームに終始したようだ。

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