国際的な顔ぶれが支援を訴えたチベット慈善コンサート

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国際的な顔ぶれが支援を訴えたチベット慈善コンサート

 

'59年の中国によるチベット侵略で、作曲家Philip Glassは、自らもチベット大脱出の一員となった。その経験を忘れない彼は2月26日、ニューヨークのTibet Houseにおいて、絶滅の危機にあるチベット文化保存の支援コンサートを行なった。ソールドアウトのベネフィットコンサートに出演した著名アーティストたちの顔ぶれは、David BowiePatti SmithMobyDave MatthewsEmmylou HarrisNatalie Merchant、Rahat Nusrat Fateh Ali Khan、そしてグラミー候補にもなったNawang Khechog。

チベット暦の新年を祝うTibet Houseの13回目のギグは、Bob Thurman教授(女優Umaの父親)による開会の言葉で始まった。「チベット開放は、必ず我々の時代に実現させたい」。これを受けてPhilip Glassは、今夜のコンサートは「世界の音楽のコラボレーション」であると述べ、熱心に支援を訴えたのち、Drepung Gomang Monksを紹介。彼らの感動的なホーンとチャントに続いては、Rahat Nusrat Fateh Ali Khanがうっとりするほど印象的なカバーリを披露した(カバーリは神秘的な古代のラップと言えよう)。

続いてDave Matthewsがステージに登場。「Khanのパフォーマンスの後を引き継ぐほどたいへんな役目は初めてだよ」と言ったが、彼最高のプレイで2曲のアコースティックナンバーを聴かせた。その1曲は“Only Fools Fall In Love”や“The Stone”をほうふつさせるニューアルバム『Everyday』からタイトルトラック。そして静かな声で次の生ける伝説を紹介した。

その伝説とはEmmylou Harrisだ。真紅の衣装に映える色白の肌、ビロードのような声。ギターのEthan Johnをバックに“Red Dirt Girl”の短縮ヴァージョンを歌うと、Matthewsと絶妙のデュエットで“My Antonia”を披露、そして“Michaelangelo”の繊細なソロで締めくくる。

次はNatalie Merchant。巨大なSteinwayのピアノのせいで見えにくいでしょうと言ってから、このコンサートのために書き下ろした新曲“Three Wishes”を歌う。それからHarris、Nawang Khechog、Dana Bryantと共に、1845年の聖歌“The Weeping Pilgrim”をリメイクした曲を熱唱した。

Bryantによるファンキーなジャズ・ポエム“Heat”と“Religion”の後は、Khechogがひとりでステージに立ち、「人類がお互いを思いやることを願って」と厳かに言うと、悲しみを込めてフルートを吹く。そのあまりの荘厳さに会場はしんと静まり、観客は深く胸を打たれた。

再びKhanが登場してカバーリを披露し、その豊かなヴォーカルを生かしてPatti Smithと共に、Ginsbergの詩“Magic Song”をインプロヴィゼーションで感動的に謳いあげた。コンサートの前、Pattiは、兄弟と夫を亡くして悲嘆にくれていたとき、活動を再開する動機となったのはGinsbergの作品だったと話している。リハーサルではDavid Bowieが、「Ginsbergに相応しいのはPattiだけだ」と太鼓判を押していた。

Glassもコンサート監督としての立場をおして、繊細なソロでピアノ・エチュード10番を弾いた。その後、内気なMobyがおずおずとステージに登場し、自作ヒットアルバム『Play』から“Porcelain”をプレイ。彼は少々上がった様子でアコースティックギターを手にし、伴奏はヴァイオリンのMartha Mookeのみ。この曲の主題が「愛する人がいながらも、決して関わりをもってはならないという立場を歌ったもの」と話して、心のこもったパフォーマンスを見せた。観客からはその純朴な素晴らしさに感嘆の声があがる。

それからMobyが簡単に「21世紀のベストミュージシャンです」と紹介すると、Bowieがにこやかに現れ、スポットライトを浴びる。たちまち轟くような歓声があがった。これほどの歓声は、ニューヨークではヤンキー・スタジアムでホームランが出た時くらいのもの。Bowieも期待を裏切らないパフォーマンスを見せる。選曲は予想通りの“Heroes”。豪華なバックバンドは、ベースにTony Visconti、ギターにMoby、ピアノにGlass、ドラムにSterling Campbell、そしてMartha Mookeのストリング・カルテット。Bowieは「実は、若いころ仏教徒になろうと思ってね」と話すと、“Silly Boy Blue”を歌う。チベットを歌った内容で、'65年以来初めて取り上げる曲だ。最高に盛り上がったところで、大勢の僧が加わり、ステージはサフラン色一色に染まった。

Bowieの後を引き継ぐのは至難の業だが、18歳のJacksonが登場。背が高く細身で、両親であるPatti SmithとMC5の故Fred Smithに生き写し。3分間の巧いギターソロを聴いて両親も喜んだはずだ。母親のPattiが再登場し、息子を抱きしめると、スタンダード曲“Sea Of Love”をプレイ。曲の合間には、中国政府によるヒマラヤの核および化学廃棄物投棄を批難した――「雪解け水が中国周辺の海に流れ込めば、結局は全部我が身にはね返ってくるのに!」。フィナーレではPattiの力強い“People Have The Power”に合わせ、出演者全員が拳を振り上げ、手拍子を取っている。御大David Bowieを差し置いて他のアーティストがフィナーレを飾るのは珍しいが、チベット文化を称える今回の趣旨ではPatti Smithの歌のほうがぴったりだといえる。

コンサート終了後、観客はそれぞれタクシーに乗り込んで帰っていった。願わくば音楽が終わっても、Khechogの訴え(「時間があまり残されていない私たちに支援をお願いします。チベットの民衆も皆さんと同じように自由に生きる権利があるのです……」)を忘れないでほしいものだ。

 

 

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