ジャック・ホワイト新バンド、ザ・ラカンターズのロンドンお披露目ギグをレポ!

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どんなに音楽好きで何よりもパフォーマンスすることが大好きというミュージシャンでも、レコーディング、そしてそれに続く長く過酷なツアーが終わった後では、しばらくのんびりしたいと考えるのが普通だろう。しかし、鬼才ジャック・ホワイトは違う。昨春から続いたホワイト・ストライプスの世界ツアーを日本で終了したわずか10日後に、今度は新プロジェクト、ザ・ラカンターズのツアーをスタートした。

同郷(デトロイト)の友人、ブレンダン・ベンソン、グリーンホーンズのパトリック・キーラー、ジャック・ローレンスとともに結成されたラカンターズは、本国アメリカに先駆け3月20日にUKデビューを飾った。デビュー・アルバム発売前ではあるが、リバプール、グラスゴー、ニューカッスル、ロンドンの4公演のチケットは瞬く間にソールド・アウト。特に最終日となったロンドン、アストリアの公演(23日)は注目度が高く、多くのジャーナリスト、マスコミ関係者の間に混じり、ケイト・モス、ジュード・ロウ、ヤー・ヤー・ヤーズのメンバーらの姿も見られた。

ホワイト・ストライプスの赤と黒を基調にしたスタイリッシュなデザインとは違い、この夜のステージは刺繍をほどこした光沢感のある褐色の垂れ幕にアンティーク調のランプという落ち着いた雰囲気。9時ちょうどにライトが落ちると、ベンソンのバック・バンドで活躍するキーボーディストのディーン・フェルティタを加えた5人がステージに登場。ジャックはスーツ姿ではなく、革ジャンと黒いジーンズというラフなスタイルで現れた。

オーディエンスの歓声に軽く答えた後、バンドは、デビュー・アルバム『Broken Boy Soldier』(日本盤5月発売予定)の収録曲「Level」からショウをスタート。このブルースをベースにしたヘヴィなロック・トラックでは、ベンソンがヴォーカルを担当、ジャックは一歩下がった場所でギターに専念した。ジャックのギターは、ストライプスのときと同様、奔放でエネルギッシュだが、そこにベース、キーボード、さらにベンソンのギターが加わることにより、サウンドはよりビッグで重厚なものとなった。

その後、間髪を入れることなく「Intimate Secretary」「Hands」、そしてシングルとして先行リリースされた「Steady As She Goes」と続く。ヴォーカルはベンソンだでなく、ツインになったり、ジャックがリードすることも。どれも、ブルージーなサウンドではあるが、ストライプスの持つ“ブルース”とは趣向が違う。ツェッペリンだけでなく、フリーやレーナード・スキナード、さらにベンソンのポップさが前面に押し出され、イーグルスを彷彿させるトラックさえある。サウンドも演奏スタイルもストライプスのような革命的な要素はなく、ときとして'60~'70年代のロックをそのまま再現しているだけのように感じてしまうこともあるが、どのトラックも最上の出来であることは間違いない。とくに、トリプル・ギターで演奏されたラブのカヴァー曲「A House Is Not A Motel」、アンコールで披露されたブルースのバラード「Blue Veins」は圧倒的な存在感で、会場からは惜しみない拍手が沸き起こった。

ブラーを好きな人がそのままゴリラズを好むとは限らないように、ホワイト・ストライプスのファンがそのままラカンターズを受け入れるとは思わない。しかし、ブラーを聴かない人がゴリラズのファンとなるように、ホワイト・ストライプスに興味がなかった人がラカンターズの大ファンになることは大いにあり得る。60’sのロック・ファンには堪らないバンドが誕生した。

Ako Suzuki, London

セット・リスト
「Level」
「Intimate Secretary」
「Hands」
「Steady, As She Goes」
「Together」
「A House Is Not A Motel」
「Store Bought Bones」
「Call It A Day」
「Yellow Sun」
「Broken Boy Soldier」
「5 On The 5」
「It Ain’t Easy」
「Blue Veins」
「Headin’ For The Texas Border」
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