強靭さを増し、いっそう神がかったDir en greyの北米ツアー

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2月25日、Dir en greyにとって初の全米ヘッドライン・ツアーは幕を閉じた。追加公演を含めてトータル18公演となったこのツアーの最後の会場に選ばれたのは、サンフランシスコの伝統的なクラブ、“フィルモア”。

60年代からロックの歴史を綴り続けてきたこのステージには、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、レッド・ツェッペリンやザ・フーなども立ってきた。


場内の壁には“フィルモア”名物ともいうべきこの会場オリジナルの公演ポスターがびっしりと飾られ、まさに40年を超えるこの会場とロックそのもののヒストリーを物語っている。さながらロック博物館のような風情でもあるこの場所に、この夜、Dir en greyの名前も刻まれることになったわけだ。

彼らのステージは、2組のオープニング・アクトをしたがえ、午後9時にスタート。当然のごとくチケットは完全ソールドアウト。しかしフロア後方や2階のバルコニー席に若干の余裕があるのは、フロア前方にそれだけ尋常ではない密度で人がひしめきあっているからだ。開演前から人の波が前後左右に揺れ、会場関係者は怪我人が続出するのではないかと心配顔。しかし結果、大きな混乱につながることがなかったのは、すべてのオーディエンスの意識のベクトルがステージに向かって集中していたからだろうし、同時に、あまりにもぎっしりと埋まっているために無闇に暴れようとするファンが仮にいても、それ自体があらかじめ無理な状態にあったからだろう。

アメリカの各メディアでも高評価を得ているニュー・アルバム『THE MARROW OF A BONE』の収録曲である「THE FATAL BELIEVER」で幕を開けたライヴは、アンコール最後の「CLEVER SLEAZOID」まで、一瞬たりとも場内の温度を下降させることがなかった。25日間で計18本、つまりほぼ週5日はライヴという過酷なツアー経験のなかでさらにバンド・サウンドは強靭さを増し、京のステージ・パフォーマンスもいっそう神がかった何かを感じさせるようになっていた。

アメリカ側ツアー・スタッフとのコミュニケーションが日々の生活のなかで強さを増してきたこともそうした進化の要因といえるだろうし、同時に、バンドが常に“攻め”の姿勢でライヴに取り組んできたことも、そのひとつとして数えられるべきだろう。

昨年11~12月に行なわれた国内ツアーとの具体的な差異といえば、いくつかの演奏楽曲の違いを除けば、映像を用いた演出の有無ぐらいのもの。この全米ツアーでは「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS」や「朔-saku-」、「OBSCURE」といった楽曲のビデオ・クリップも、演奏とシンクロしながら用いられてきた。

ことにMTV2の音楽番組『ヘッドバンガーズ・ボウル』でファン投票により年間最優秀メタル・ビデオに選出された「朔-saku-」はさすがに好反応だったが、他のどの映像にも驚嘆の声が上がっていた。さらには、現地では2月20日に発売されたばかりの『THE MARROW OF A BONE』から披露された「GRIEF」や「DISABLED COMPLEXES」といった楽曲が、すでにファンの間にしっかりと浸透している事実も、客席の様子からうかがうことができた。

前述のとおり、発売に前後しながらアメリカの各メディアはアルバム・レヴューでこの作品を積極的に取り上げており、“典型的な今様メタルとは一線を画す多様性”といった評価を得ている。また、発売後1週間のセールス結果などもそろそろ聞こえてくることになるはず。とりあえず読者の皆さんには続報をお待ちいただきたいところだ。


この公演を終えたDir en grey一行は、翌26日には米国を発ち、日本時間の27日夕刻、無事に帰国した。サンフランシスコ公演の楽屋で“厳しいツアーではあったけど、終わってみると寂しい”と異口同音に語っていたメンバーたちだが、同時に、このツアーに関わったアメリカ側のスタッフや共演バンドたちもまた同じことを口にしていた。

実際、現地ではすでに、次のアメリカ・ツアーについての検討が重ねられていたりもする模様だ。しかしもちろん、どんなに活動範囲が広がろうと彼らの本拠地がここ日本であることに変わりはない。

3月10日、幕張メッセ・イベントホールで幕を開ける国内ツアー、<TOUR07 THE MARROW OF A BONE>に、是非ご注目いただきたいところだ。

取材・文●増田勇一
 
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