尋常ではない濃密さ…Dir en greyのツアーが幕開け

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つい先頃、約1ヵ月間にわたる全米ツアーを終了したばかりのDir en greyが、帰国からわずか11日後にあたる3月10日、待望の国内ツアーを開始した。

題して<TOUR07 THE MARROW OF A BONE>。

会場となったのは幕張メッセ・イベントホール。このツアー中においても最大規模の会場での公演をもって、彼らはまさに新たな局面へと足を踏み入れ、そのさまを飢餓感の高まった数多くのファンが目撃/体感することになった。

このツアーが、去る2月7日に国内発売された最新アルバム『THE MARROW OF A BONE』に呼応するものであることはそのツアー・タイトルからも明白だが、ステージはまさに同作の世界観を体現しながら、絶対的な存在感を誇示するかのようにして幕を開けた。

耳慣れないSEに導かれて闇のなかに登場した5人がまず最初に演奏したのは、あまりにも印象深いあの曲。その正体は敢えて文字にするまでもないだろう。実際、まだまだ先の長いツアーであるだけに、この場で具体的な演奏内容や演出などについて明言することは避けておきたい。が、冒頭からどっぷりと『THE MARROW OF A BONE』の世界に浸ることのできる構成であったこと、同作の多面性と深みとを存分に堪能させてくれる内容であったことはここに記しておきたい。

また、ひとつ確実に言えるのは、このツアーが、昨年夏の武道館第二夜から始まった<TOUR 06/07 INWARD SCREAM>とは明らかに性質を異にするものだということ。

昨年11~12月に国内ツアーの中で熟成され、去る2月の全米各地でのトータル18公演をもってさらなる試行錯誤を重ねながら極限的な高みにまで達していた同ツアーは、そこである意味、本当に“完結”していたのだ。言い換えれば、それを確実に実感できていたからこそ、5人はこの日、躊躇なくネクスト・レヴェルへと踏み込んでいくことができたのだろう。もちろんこの真新しいツアーが、これまでの積み重ねがあってこそ成立する類のものであることは確かだ。が、それは間違っても前回のツアーの延長戦のような性質のものではないのである。

そして、もうひとつ付け加えておきたいのは、『THE MARROW OF A BONE』という絶対的なアルバムが、かならずしもDir en greyの現在を過去から完全に切り離そうとするものではないということ。

ツアー開始前日の3月9日をもって発表からちょうど丸2年が経過した前作、『Withering to death.』の中から演奏された楽曲たちは、度重なるツアーを経て圧倒的な説得力を身につけながらも、“落ち着く”というのとは真逆の成熟を見せていた。さらには、敢えて素直に“懐かしい”と言うべき「ain't afraid to die」が、ごく自然な流れのなかで披露された事実についても無視するわけにはいかない。

2001年4月、メジャー・デビューから数えて9作目のシングルとしてリリースされているこの曲は、単純に時代的な意味で言えば『MACABRE』と『鬼葬』の間に位置しているが、実はどのアルバムにも収録されていない。もはやライヴでこの曲を聴くことのできる機会が訪れようとは筆者も予想していなかったが、それは観衆にとっても同じことだったはずである。「THE PLEDGE」の余韻が耳に残るなかでこの曲のイントロが聴こえてきた瞬間、場内はどよめきの入り交じった大きな歓声に包まれていた。

ただし、彼らがこの曲を演奏したのは、待望感を募らせてきた古くからのファンへのサービス精神からなどではないはず。Dir en greyがそんなバンドじゃないことは、これを読んでいる皆さんが誰よりもよく知っていることだろう。しかし、この曲がこれから毎晩演奏されるとは限らないのと同時に、今後の公演にさらなるサプライズが用意されている可能性もあるはずだ。僕には、そんな気がしてならない。

しかも今回のツアーには、この夜の幕張メッセ・イベントホールのような大規模なスタンディング形式のアリーナもあれば、椅子の並ぶホールでの公演も、いわゆるライヴハウス的な会場での公演も組み込まれている。そこでDir en greyが、毎回同じようなライヴを展開することになるとは、僕には考え難い。もちろんその核となるのは『THE MARROW OF A BONE』の世界観であるはずだが、なにしろバンドの核そのものが揺るぎないものなのだから、そこで何が登場しようとDir en greyの像がブレることはないのである。

怒涛のアンコールを含めても2時間に満たないライヴは、世の平均からすれば、もしかしたらむしろ短い部類に入るものだったかもしれない。が、その濃密さは、言うまでもなく尋常ではなかった。

大規模会場でありながら、ステージ後方のヴィジョンにメンバーたちの姿などが映し出されることは一切なく、5人の表情や一挙手一投足を確認することは不可能に近くもあった。が、現在のDir en greyには、自分たちの表情や姿以上に提示したい世界があり、感じさせたいものが存在するのである。もちろん映像も含めた照明効果の質の高さについても特筆すべきものがあったが、それ以上にここで強調しておくべきなのは、仮にそこが完全な暗闇であろうと鮮烈に体感できる何かをステージ上の5人が発していたということだろう。

ツアーは、まだ始まったばかり。果たしてこれから何が起ころうとしているのか? その経過については可能なかぎりこの場でもお伝えしていくつもりだが、何よりもまず皆さんの肉眼で、現在のDir en greyと対峙してみてほしい。一刻も早く、一秒でも長く。

取材・文●増田勇一


<TOUR07 THE MARROW OF A BONE>
3月17日(土) 愛知県・愛知県勤労会館
3月18日(日) 愛知県・愛知県勤労会館
3月20日(火) 福岡県・メルパルクホールFUKUOKA
3月22日(木) 高知県・BAY5 SQUARE
3月24日(土) 大阪府・ATCホール
3月29日(木) 東京都・NHKホール
3月30日(金) 東京都・NHKホール
4月6日(金) 石川県・金沢市文化ホール
4月8日(日) 長野県・長野県松本文化会館・中ホール
4月13日(金) 宮城県・Zepp Sendai
4月15日(日) 北海道・サッポロファクトリーホール

オフィシャル・サイト http://www.direngrey.co.jp/
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