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オースティン出身のまったく無名だった3人組Fastballが、一度耳にしたら忘れられないキャッチ-なシングル曲“The Way”を引っさげて、豪速球の勢いで世界の舞台へ飛び出したとき、多くの人は、彼らが一夜にして成功を手にしたラッキーなグループだと考えた。しかし、真実はまったく違う。Fastballとして出した1stアルバムは、世間からまったく注目されず、実は2ndアルバムを出すチャンスもほとんどなかったような状態だった。

ギタリストMiles ZunigaとドラマーのJoey Shuffieldは、過去Big Carというバンドに在籍していたときも世間から完全にそっぽを向かれていたから、音楽業界の厳しさはすでに身を持って経験済みだ。(そのうえ、彼らが気に入っていて、しかもまだ手つかずに残っていたFastballという名前に落ち着くまで、Star 69、Magneto、Magneto USA、Starchyと、何回も名前を変えさせられたという)

しかし、辛いが得ることも多かった下積み生活は、結局は実を結んだ。Fastballが“一夜にして”成功を手にしたときには、メンバーはすでに30代になっており、長年の間に曲作りの技術も、Elvis CostelloやNick Loweなどの作曲家たちのように、成熟の域に達するようになっていた。そしてその結果できたのが、旋律の美しい曲がちりばめられた2枚目のアルバム『All The Pain Money Can Buy』である。

このアルバムは、もっとパンクでシンプルな作りのデビュー作『Make Your Mama Proud』をはるかに凌ぐ力作で、''98年にリリースされたベストアルバムの1つと言っていいだろう。ストレートで飾り気がない普段着のロックンロール『All The Pain Money Can Buy』は、職人技で作られた、ハーモニー溢れるパワフルなポップの逸品だ。少年非行を歌った“G.O.D.(Good Old Days)”、ゴスペル/ソウルナンバーの“Out Of My Head”、そしてほろ苦いバラード“Sweetwater, Texas”。これらは、Tom Pettyや、SqueezeのDifford & Tilbrookらに通じる古き良き曲作りの伝統を踏襲している。

残念なことに、急に商業ベースでスターダムに上り詰めたために、Fastballは時折、“''98年度卒業生”のような一発屋(Eve 6、 Fuel 、Marcy Playground等)や、ありきたりのオルタナティヴ・ロックの二番煎じ(Matchbox 20、Third Eye Blind、Smash Mouth等)などと不当な扱いを受けることもある。だが、Zunigaによる2ndシングル“Fire Escape”が、前作“The Way”(ベーシストTonyScalzo作)ほどチャートを勢いよく駆け上らなくても、Fastballの実力を疑うものではないだろう。他の“98年度卒業生”と違って、なにしろFastballは、完璧なまでの曲作りの才能と、すばらしいポップのセンスに恵まれているのだ。