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アフリカ系アメリカ人の音楽のメッカと言われるカリフォルニア州北部の街、オークランド。そこから登場したHammer(Capitolからデビューした当時の名はMC Hammer)は、自らを、ラップからJames Brownへの回答として売り出そうとしていた。前向きな自慢話や元気が出るメッセージに満ちた彼のサウンドは、ノンストップでマラソンのように踊り続けるという意味では、確かにJames Brownの'90年代ヴァージョンと言えたかもしれない。

しかし、当初のギャングスタっぽくないイメージと、数々のスポンサー契約(例えばTaco BellのTVコマーシャル出演など)のせいで、彼はヒップホップ界全体から手厳しく非難されることになる。これがMC Hammerのときと同様、結局彼の名声に傷をつけ、キャリアにダメージを与える結果となった。とはいえ彼は'80年代後半、一瞬ではあったが一大音楽現象を巻き起こし、初めて本物のラップのスーパースターの1人となった。しかも、スターの座へ登り詰める過程で、彼はビジネスの世界に帝国を築き上げたのだ。

扉がはっきりと開かれたのは'90年、“U Can't Touch This”の大ヒットがきっかけだった。この曲はRick Jamesの“Superfreak”のリフを恥ずかしげもなく好き勝手にサンプリングしたものだった(結局Jamesはこれを裁判に訴えて、著作権料の支払いを勝ち取っている。実はこの曲、このファンク・プレイヤーにとっては、自らのキャリアがあっという間に下り坂となるきっかけとなった曲なのだが)。

しかし、Hammerは単なるサンプリングの嵐だった状況を克服した最初のメジャーなラップスターだった。コンサートではライヴ演奏も取り入れ、アルバムでは時によりR&Bに近いアプローチも見せていた。2ndアルバムではChi-Litesの“Have You Seen Her”を原曲に忠実にカヴァーしたりもしている。

ところが、“Too Legit To Quit”で再びチャートの1位に輝いた後、辛辣な言葉が彼をむしばむようになる。'90年代の中頃にはGiant Recordsと契約し、恥ずかしいことに、ギャングスタっぽい、セクシュアルな(つまり性差別主義的な)方向性を選んで“カムバック”を果たそうとした。しかし、彼が最後に世間をにぎわせたのは2年前、自己破産を申し立てた時だった。