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イギリスのグラムポップバンド、Pulpは、''90年代にブリットポップが爆発的な人気を得るまで、10年近く下積み生活を送らねばならなかったバンドだ。しかし、彼らのアルバム『Different Class』は、ブリットポップどころか''90年代を代表するアルバムの1つとなっている。

Pulpのルーツはイングランド北部の工業都市シェフィールドにさかのぼる。''81年、まだ10代の学生だったシンガー/作詞担当のJarvis Cockerが結成したArabacus Pulpがその始まりだ。今では華やかなフロントマンとして知られるJarvisだが、学生時代の彼は堅物の変人扱いされていた(何しろ彼の母親ときたら、膝までの革のズボンをはかせていたのだから)。今の彼が歌詞の中で見せる世の中に対する鋭い観察眼と、優れたファッションセンスは、きっとこの頃に培われたものに違いない。

''83年にリリースされたPulpのデビューアルバム『It』は、なかなかの野心作だったが、当時はSmithsに影響を受けた憂鬱な暗いロックをプレイしていた。''86年にリリースされた2ndアルバム『Freaks』でも、彼らは、未だに自分達のサウンドを探している最中、といった印象を与えた。ラインナップも中心メンバーのJarvis Cockerとギタリスト/ヴァイオリニストのRussell Senior、そしてキーボードのCandida Doyle以外は常に流動的だった。

しかし、''80年代後半になって、ベーシストのSteve MackeyとドラマーのNick Banksが加入した後は、メンバーも固まるようになった。それにつれて、Jarvis Cockerのスター願望もはっきりと現れるようになっていった。女性の気を引こうと窓から飛び降りて、1年ほど車椅子で過ごしたJarvisは、その後も、車椅子に乗ってステージに現れ続けた。

自らのレーベルGiftから、''90年にまずシングル“My Legendary Girlfriend”をリリースし、''92年にアルバム『Separations』をリリースする頃になると、彼ら独特のサウンドというものが確立されるようになる。David Bowieのようなグラムサウンドと、安っぽいディスコからの影響をミックスし、Jarvisが酔っぱらって性的に満たされていないBryan Ferryのように歌うのだ。

こうして独自のサウンドができあがった結果、彼らは''93年にIsland Recordsと契約。まず、初期の作品が『Intro:The Gift Recordings』というアルバムで再リリースされ、''94年には大成功を収めたアルバム『His''N''Hers』を発表。シングルの“Do You Remember The First Time?”と“Babies”のヒットがアルバムの売れ行きに拍車をかけた。

やがて彼らもイギリスで起こったブリットポップの波に乗る。伝統的な曲作りや、イギリス的なものをよしとするこの流れに乗って、彼らは''95年、代表作の『Different Class』を発表。このアルバムでJarvisは、イギリスで現在も進行中の階級闘争を鋭く描き、''90年代イギリスの若きアウトサイダー達の生活を綴った素晴らしい物語を作り上げた。そして、ギターやキーボード、傷ついたようなストリングスのサウンドに乗せて、控えめなウイットと驚くほどの普遍性を展開したのである。

結局、このアルバムは''95年度の様々なイギリスの音楽賞に軒並みノミネートされることとなった。熱狂的な反応の中、彼らは母国イギリスのみならず、世界をツアーして回った。アメリカでも、大きな商業的成功は収めていなかったものの、イギリス好きなファン達が存在していた。ツアーのクライマックスは、''96年のグラストンベリー・フェスティヴァルだった。