プロフィール・バイオグラフィ・リンク

かつて、FMラジオをつけると、真にクラシックなロックン・ロールが立て続けに流れてくるという、音楽にとって魔法のような時代があった。T-Rexの楽曲がThin Lizzyに溶け込んでいき、Alice CooperとCheap Trickのアルバムの曲が連続してかかるという…。

ロックン・ロールにとって70年代とは、アルバムを買うことは神聖な儀式で、コンサートに参加することは大規模な宗教的体験に等しく、ロックンローラーのイメージとアートがひとつに融合した、そんな時代だった。カナダはトロント出身のCRASH KELLYは今、そうした時代を取り戻そうとしている。バンドの中心となるのは、セッション・ミュージシャンとしてカナダの音楽シーンにおいて様々なビッグ・ネームとのツアーやレコーディングを経験してきたショーン・ケリーだ。何年もの間サイドマンとして種々様々なアーティストとプレイした後、もはやショーンの中のロックン・ロール・アニマルを抑えておくことはできなかった…そして2002年、CRASH KELLYが誕生する。

CRASH KELLYは受けてきた影響に正直なバンドだ。Aerosmith、The Rolling Stones、KISS、T-Rexで離乳したショーンは、姉のレコード・コレクションを通じ、すぐさまツイン・ギターのサウンド、叩き付けるようなグラム・ロックのビート、パフォーマンス重視のロックンロールに夢中になっていった。

80年代の申し子として、ショーンは名高いサンセット・ストリップのハード・ロック・バンドの中から、良いものを見分けることができた。ケリー邸では、初期Motley CrueとHanoi Rocksは欠かすことのできないものとされた。こうした様々な影響を、70年代のスタイルやサウンドというフィルターに通したものが、CRASH KELLYの基礎となっている。バンドのデビュー・アルバム「Penny Pills」は、ショーンがほぼ全ての楽器をプレイする形で制作された。ショーン自身に加え、マイケル・モンローやNew York Dollsのシルヴェイン・シルヴェインらとプレイしたキャリアを持つ“キラー”カイ・アントがプロデュースを担当したこのアルバムは、プロダクションに関する豊富な知識と、クラシックなプロダクションに対する愛情を兼ね備えたカイの助力もあって、フックに満ち、ロックン・ロールのスピリットに溢れた正直なアルバムに仕上がった。

このアルバムは2003年6月、カナダでBhurr Recordsよりリリースされ、バンドはカナダ・ツアーを行なった後、9月にはQuireboysのサポートとしてUKツアーを行なう機会を得る。10月に本作がTB Recordsよりイギリスでもリリースされると、11月にはEnuff Z'nuffのサポートとして再度渡英、アイルランドも含めたツアーを行なう。また、この間、イギリスでThin Lizzyのカヴァー「Waiting For An Alibi」をレコーディング。Tigertailzのメンバーも参加したこの曲は、3曲入りシングルとしてTB Recordsより限定リリースされた。続いて2004年夏にはLiquor and Poker Musicとの契約が成立。『Penny Pills』はCheap Trickのカヴァーとビデオを追加収録して、2005年1月に同レーベルから再リリースされた。そして同年6月には、アメリカでのレーベル・メートとなったBackyard BabiesのUSツアーにサポートとして参加する。

SPIN誌が『Penny Pills』について“ブライアン・メイを微笑ませるようなリフ”と“フレディ・マーキュリーを卒倒させるようなハーモニー”を持つと評したとき、バンドはセカンド・アルバム『Electric Satisfaction』を制作するにあたり賭けに出ることを決意、ロサンゼルスに飛んで元Guns 'N Rosesのギタリスト、ギルビー・クラークをプロデューサーに迎えてレコーディングを行なう。クラシックなプロダクション・テクニックを好むギルビーと、70年代のパワー・ポップ、グラム、クラシック・ロックの伝統に浸された楽曲を生み出すショーンの嗜好は見事に融和、“ロックン・ロール界に衝撃を与える”ことが約束された作品が誕生。2006年4月にまずカナダで、続いて6月にはアメリカで、そして10月にはここ日本でもリリースされ(続いて11月には「Penny Pills」も日本リリース)、世界的に高い評価を得たこのアルバムにより、バンドはAlice Cooperとツアーする機会を得た。また、2007年11月には、フランスのBad Reputationレーベルより2枚のアルバムから選曲したコンピレーション・アルバム『Love You Electric』がリリースされ、Classic Rock誌のレビューでは8/10を獲得するなど、ヨーロッパ各地で高い評価を得る。

その後、ショーンはクラシック・ギターによるソロ・アルバム『The #1 Classical Guitar Album』をレコーディングする一方で、CRASH KELLYのサード・アルバム『One More Heart Attack』の作業も初めていた。このアルバムの「A面」(1~5曲目)は、ロサンゼルスで再びギルビー・クラークをプロデューサーに迎えてレコーディングされた。このセッションでは、元Ozzy Osbourne、Quiet Riot、Whitesnakeで、現在Dioに在籍するルディ・サーゾが数曲でベースをプレイした他、ブライアン・ティッシー(Billy Idol、Pride & Glory、Slash's Snakepit、Foreigner etc)がドラムで参加。また、カナダの伝説的なバンドGoddoのギタリスト、ジノ・スカーペリの息子で、Revolverに続き現在はCRASH KELLYでもショーンのパートナーを務めるジーン・スカーペリがギターをプレイした他、ギルビーもゲスト参加している。更にはブロードウェイ・ミュージカル「RENT」のカナダ版に出演(これが好評を得たことで後にオリジナル・ブローロウェイ版にも出演)した他、現在ではソングライティング・ユニットJackで活躍しているマルチ・タレント、チャド・リチャードソンがコーラスで参加、クラシック・ハード・ロックの叩きつけるサウンドにBeatles的な瑞々しさを加えている。

「B面」(6~10曲目)は、トロントでレコーディングされ、ショーン自らと、チャドとともにJackを構成する紛れもなき天才、クレイグ・マッコーネルによってプロデュースされた。こちらのセッションでは、Rough Tradeでショーンとともにプレイした経験もあるティム・ティムレック(ds)がクラシックなグラムのビートを披露する一方で、長きに亘るメンバーのアリスター・トンプソンは6弦から4弦にスイッチして70年代スタイルのベース・プレイを聴かせ、その上でショーンとジーンのツイン・ギターが火を噴いている。また、クレイグはエンジニアリングでその才能を発揮しただけでなく、ベース/キーボードでもアルバムに貢献、“5人目のメンバー”という評価がふさわしい働きを披露している。

こうして完成したこの『One More Heart Attack』は、日本盤のみボーナス・トラックを3曲追加収録して、2008年6月、SPIRITUAL BEASTよりリリースされる。どんなトレンドが流行っていようと、ラウドなギターとアリーナ・ロックを目指す野心が優れた楽曲と最高のプロダクションと共存する、ロックン・ロールの信者が集まることのできる場所があることが、このアルバムによって再度証明されるだろう。