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Christopher Owens/クリストファー・オウエンス(歌詞とメロディー担当)とJR White/JR ホワイト(プロダクションとスタジオ・ワーク担当)による2人組。

ヴェルヴェッツがニューヨークの街と共に音を鳴らし、スミスの曲はマンチェスターから生まれてきたように、ガールズのサウンドは、酔って日干しになったようなサンフランシスコでの生活を見事に描き上げている。ブライアン・ウィルソンにより作り上げられたカリフォルニア・ポップのテンプレートにローファイ色を被せた彼らのサウンドからは、50年代のサーフポップ、60年代のサイケデリア、80年代のハードコアを見つけ出すことができる。そう、サンフランシスコのライフスタイルを反映した純粋な音楽を聴くことができるのだ。

「僕らは出会うまでは本当に荒れていたんだ。いつも酔っ払っていて毎晩であるいていた」とJRホワイト(プロダクションとスタジオ・ワーク担当)は認める。「サンフランシスコはそのライフスタイルの為に作られた街なんだ。老人だって(そんな僕らの生活に)ガミガミ言うことはないよ。だって60年代に彼らもそうしてきたんだから」とクリストファー・オウエンス(歌詞とメロディー担当)が付け加える。

Girlsが生まれる前、クリストファーはCurlsと呼ばれているプロジェクトで彼のガールフレンドと活動していた。2人の関係が先細りになるとプロジェクトも終わり、クリストファーはヴォーカルも担当することになった。こうして彼は、新しい音楽的才能を持つパートナーを見つけることを強制されたのだ。「サンフランシスコへ引っ越したあと、僕はすぐに親友でもあった女の子とつきあい始めたんだ。2年の間僕らは同棲して、一緒に音楽を作った。それだからこそ、この別れは僕にとってドラスティックな変化だったんだ。最初の頃に作った曲は、この別れから大きな影響を受けている」とクリストファーは語る。ハートブレイクとデザイア、これが「シンプルな歌詞は最高な方法になるんだ。Tim McGrawのカントリーの曲で“僕らは愛を探して、それこそが生きる意味なんだ”という歌詞がある。これは本当にシンプルな歌詞なんだけど、僕にとっては大いに物語っている歌詞なんだ」と、クリストファーは語る。

クリストファー自身にも大きな物語がある。彼は、“Children of God”というカルト教団のヒッピーの子として生まれ、幼児期に世界中を旅し、外界から保護される間、プレイヤー(祈り)・セッションに出席するという生活を送ってきた。彼自身の言葉を借りて話すと、「かなり地獄のような生活だった。教団は僕らを色んなものから隠して、幸せになることや完璧な神の子になることを教えたんだ。人をそんな風にコントロールするなんて誰もできやしないのに…」自殺、売春、テキサスへの逃亡…、こうした彼のカルト教団時代の話は別の機会にすることにしよう。但し明らかなのは、Children of Godでの生活がクリストファーのソングライティングに大きな影響を及ぼしていることだ。バスキングをすることを学んだのも、他のカルトのメンバーが作る多種多様な音楽を聴いたのも、このChildren of Godでの生活の中であった。そして、クリストファーの最初のギター(今でも彼が曲を書くときに使う楽器)は、同じカルトのメンバーでもあった元フリートウッド・マックのギタリスト、ジェレミー・スペンサーから譲り受けたものだった。

「カルトの全てのことは音楽に基礎をおいているんだ。実際Girls は、Children Of Godの音楽の様なサウンドを持っている。スピリチュアルな本質が存在するんだ。実際、僕は全く信心深くはないけれど、両者の間には共通するスピリチュアルな本質がある。ブライアン・ウィルソンは音楽のスピリチュアルなことについて話すけど、実際それが何なのかはわからない。けど、目を閉じたとき、音楽は僕を他のどこかに連れて行ってくれることは知っている」とクリストファーは言う。実際、カルトの中で彼が歌ってきた多くの歌の中には“美”が存在するということを彼は認めている。

16歳の時にカルトを去って、アマリロのパンク・シーンに没頭しながらドラッグ漬けになっていた数年を過ごした後、クリストファーはサンフランシスコに移った。そこで彼はローカルのミュージック・シーンに浸かり、Ariel Pink や彼のプロジェクトであるHoly Shitとギグをするようになった。「もしHoly Shitとプレイしなかったら、僕は曲を書くようにはならなかったと思う」とクリストファーは語っている。そして、最終的に、ここでクリストファーはJRと出会うこととなる。

曲を書いたり、リハーサルをしたり、パーティーをしたりと、全ての時間を一緒に費やすだけではなく、2人の部屋の間にあった壁を壊してベッドルームを共有するくらい、クリストファーとJRの間には強い友好がある。クリストファーの書く無垢で素直な曲が形になり始めると、そこにJRが音楽的な背景を付ける。彼らのデビュー・アルバムは、ベットルームとリハーサル・スペースで壊れた機材でレコーディングされた“DIYの『ペット・サウンズ』”のように考えることが出来る。

「ストリング・セクションとティンパニーを僕は雇いたかったんだ。60年代だったらそうしただろう。けど、僕らはベッドルームで同じことをしたんだ。オープンリールのテープと古いコンピューターにレコーディングすることによって」とJRは言う。「けど、僕らはパンクのバックグラウンドを持っている。だからアルバムは、素晴らしいポップソングの僕らなりのパンク・ヴァージョン、みたいなものかな」とクリストファーは付け加える。

おそらくGirlsのアルバムの曲の中でもベストなエントリー・ポイントは「Hellhole Ratrace」だろう。この曲は、穏やかなアコースティックの音から、スピリチュアライズドに対する彼らの愛情を感じ取ることができるファジーな福音の爆音まで高まっていく。「僕がこの曲を書いたとき、僕の人生の中でも最高の曲が出来た、とJRに話すために家を飛び出したんだ。で、その時やってたことを全てやめて、直ぐにレコーディングを始めたんだよ」とクリストファーは話す。

一方、この曲のヴィデオは彼らのサンフランシスコでの生活を完全に描ききったものとなった。このヴィデオはGirlsの友達のAaron Brown により撮られた。アルバムのどの曲も物語を持つことは直ぐに理解できるだろう。「Curls」はインストゥルメンタルの小曲で、クリストファーの前のガールフレンドがロックンロールじゃない、との理由で歌うこと拒否した曲だ。「Lust for Life」は、クリストファーが前のガールフレンドに会って彼女に色々な素晴らしい事(新しいボーイ・フレンドや友達との浜辺でのビーチパーティーなど)を聞かされる羽目になった出来事のドキュメント。一方「Laura」は親友への嘆願の歌で、互いの違いを修復して新たに出発できるか、と尋ねている曲だ。どの曲でもクリストファーは誠実で、心のこもったストーリーテリングのモードである。また多様性は今日の風潮だ。単純なポップ復興論者からはほど遠く、Girlsの曲からはあらゆる音楽的な要素を聴くことができる。「Headache 」からはMartin Denny 的スタイルのエキゾチックさ、「Morning Light」からはシューゲーザーのように。エルヴィス・コステロのヴォーカル・スタイル、スペースマン3のようなサウンド、プリンスの持つポップさなども同様だ。Girlsからもわかるように、音楽は多くの魅力的な部品をかけあわせたものなのである。

最後にバンドについてJRは言う。「既に書き終わっている次の30 曲こそが、僕にとっては最もエキサイティングなことなんだ。次のステップをファンが知りたがる、僕らはそんなバンドなんだよ」