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Trickyの音楽はMassive AttackやPortisheadと同じブリストルのシーン出身ながら、もっと底なしに暗く混沌としたもので、薬物によるパラノイアと滑り落ちるようなビート、そして不気味に凍りついたメロディによる奇妙な混合物となっている。Smashing Pumpkins(「Pumpkin」)やIsaac Hayes(「Hell Is Around The Corner」)をサンプリングする一方で、Public Enemy(「Black Steel In The Hour Of Chaos」)をカヴァーするTrickyは、恐怖や妄想をさらに怠惰な絶望といった自身のヴィジョンに適合するようにルールをリアレンジするのである。

ブリストルのギャング仲間にTricky Kidと呼ばれた'64年生まれのAdrian Thawesは、ちゃちな犯罪に加担したこともあったが、やがてスローでシュールリアルなラッピングスタイルを始め、Wild Bunchとして知られる伝説的な集団と出会ってMassive Attackとコラボレートするチャンスをつかんだ。大きな称賛を集めた彼らのデビュー作『Blue Lines』では3トラックに、続く『Protection』でも2トラックに貢献したTrickyだが、自身のキャリアを歩みだすことは運命づけられていた。彼はシンガーのMartinaとチームを組んで、陰鬱で美しいスローペースのトリップホップ「Aftermath」をレコーディング、続いて“混沌の幻想”と“異なるレベルにある悪魔の仲間”についての歌「Ponderosa」をリリースした。アルバム『Maxinquaye』はまるで、氷の溶岩を噴出しながら爆発する火山のような作品で、奇妙なタイミングで鳴る変な音のパーカッションと幽霊のようなサンプリング音に加えて、雰囲気のあるメロディがMartinaの官能的なヴォーカルを盛り立てていた。「Overcome」は心地よい神経ガスの雲のような作品で、“When there's trust, there'll be treats. When we funk, we'll hear beats”という風変わりな歌詞がついている。Public Enemyの「Black Steel」はパンクなミドルセクションで煽り、快い「Hell Is Around The Corner」では、Isaac Hayesのサンプルをやはりブリストル出身のグループ、Portisheadに前例があるのを知らずに使用した。『Maxinquaye』は可能性に富んだパワフルな作品で、まぎれもないオリジナリティが感じられる。次作の『Nearly God』はスモーク吸引の描写で始まり、サウンドは前作よりも奇妙になったが、それだけ取っつきにくくなった面もある。腐食性の大気を思わせるサウンドを背景に、TrickyはBjork、Terry Hall、Neneh Cherry、Alison Moyetなどとデュエットを聴かせている。さらに幽玄な夜の幻影を世界の別のサイドから眺めたような作品であった。

暗く残忍でねじ曲がった『Pre-Millennium Tension』は、Grandmaster Flashの「The Message」からの不吉な引用でスタートし、次第にゆっくりと緊張は解かれていく。空気がエコーとノイズ、そして“サイキックな汚染物質”で満ちていくように思われるにつれて、TrickyとMartinaは“Can't hardly breathe(息ができない)”と歌いだす。『Pre-Millennium Tension』は一部からは絶賛され、残りの人々からは誤解と非難が集中したが、ここでのTrickyは抵抗の少ないストレートな道のりを歩み始めている。黙示録の予言者の化身としてTrickyの右に出るものはいないだろう。

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