祝・デビュー10周年&移籍第1弾アルバム完成記念特集/佐藤タイジ インタヴュー

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――メンバーが変わってフレッシュになるのは当たり前ですけどね。

タイジ:
長年やってて、やっとここに来れた。でもそれはすごい自然な流れだったんですよね。ビジネスという側面がバンドから一瞬なくなって…でもこのバンドをみんなが続けたかった。続けるためにどうすればいいか、みんなが同じところに向いてたんですよね。それで明らかにバンドのアンサンブルとか実際の演奏も、ステージが上がってるのを自分でも感じたから、ここで止めたくはなかったですよね。この4人でどこまで行くんや?っていうのをまだまだ見てみたいし。

――ビジネスというキーワードが遠のいたときに、バンドがよりピュアでクリーンになった。

タイジ:
そうですね。やっぱり僕は、バンドマンでいたいんです。で、ギタリストでいたい。作詞家、作曲家、プロデューサーっていうのは、ギター以降についてくる人間で。バンドっていうものに対して、ものすごいカッコ良いっていうイメージを持ってますから、未だに。やっぱりバンドって、簡単じゃないですよ。4人で動くのは金かかるし、ビジネスってなったらややこしいし、いろんな意見が出てくるから、もう、どう考えてもバンドよりピンでやるほうが手っ取り早いに決まってる。けど、大人が4人一つのところに向かってやってくのって、簡単ではないからこそ、こだわってやる醍醐味はありますよね。だからニール・ヤング&クレイジーホースとかを<フジロック>で観たときに、感動するわけですよ。オッサン連中が、ドラムとかヨレヨレなんやけどカッコ良いんです。彼らがああやってやれてるのを観るとすごい勇気をもらうし。どのバンドにも、メッセージやテーマがあって、それは1枚1枚の作品のコンセプトとかそういう小っちゃいんじゃなくて、もはやそれは「生き様」になってくるわけじゃないですか? だから、俺もああいう人間になりたいと思うんです。

“大統領やめてくれない”ってスゲェ歌詞だな、みたいな。
結局なんか、楽しくやりたいんですよね。

――そういった生き様やメッセージがストレートに反映するのが歌詞なわけですけど、今作品の歌詞の位置付けは?

タイジ:
契約的にフリーだった期間に作り出したっていうのは、やっぱり要素としてはでっかいですね。俺はけっこう周りの人のことを気にするタイプの人間で、嫁さんのこととか、事務所の社長のこととか、レコード会社のディレクターのこととか(笑)。でも、契約的にフリーだった期間に書き出してるから、周りのことを気にしなくて良かったんですよね。で、そうなると、やっぱり自分が書いてて楽しいものを書くんですよね。書いてる途中に「くくっ、こんなの書いたりして(笑)」とか「“大統領やめてくれない”ってスゲェなぁ、コレ」みたいな。言いたいことは結局何も変わってないんですけど、自分がまず楽しめて、それを一緒に演奏しながら“ククッ”と笑ったり、そこで聴いてるヤツが“プッ”とかなったり。結局なんか、楽しくやりたいんだよね。

――11曲目の「Mama」なんて、けっこう衝撃的な歌詞だったんですけど。

タイジ:
ほんとですか?

――日本のプロ・ミュージシャンが書く詞じゃないですよ。

タイジ:
あ~ぁ、そうかもしれないですね。

――最初はすごく引きますよ、「マザコンじゃないんだから」って。

タイジ:
ははははは(笑)。

――その感覚がすごく外タレっぽいんです。その、ナヨっちく感じる歌詞やテーマを、1回だけ聴いて判断してほしくないと若いリスナーに言いたいワケです。何度も聴いていくと、中心にある本人の意思・気持ちが心に残ってくる。曲の長さが5分半ある気持ちよさにも気付き出す。

タイジ:
なるほどね。

――「第一印象では「Mama」は最悪だけど何度も聴いてくれ」と言いたい。

タイジ:
あ~ぁ、なるほどね。、曲を書いてるときは、もぅ、何も考えてないですよね。本当に「ヘロヘロでヤバイ~、グッタグタやなぁ~……。“くたびれた体にムチを打つ”で始めたろ」みたいな感じでしたから。

――“煙草はやめれない”って歌詞も情けないでしょ(笑)。

タイジ:
情けないよねぇ、ほんとに(笑)。もぅ、コメントのしようもない(笑)。実際、田舎に帰れてなかったから“ゴメンネ”みたいなのもあったし。これはもう、相当パーソナルな歌詞だから、何にも言えないですね。

バンドとして、すごいセクシーな作品ができたんちゃうかなと思う。
これは、恋人と裸でいちゃつくときのサウンドトラックにしてください。

――そういう自分がまずそこにあって、曲を作り詞を書きアレンジをして作品にする…その楽曲に対する携わり方が、洋楽のアーティスト的なんですよね。

タイジ:
自分の思う「かっこいいなぁ、この歌詞」っていうのって、そういえば確かにそういうところがありますね。スモッグっていうアーティストが好きなんやけど、どうもその人は嫁さんに逃げられているんですが(笑)、別れた次の年ぐらいの作品に“俺の葬式にはセクシーな格好で来てくれ”ってあるわけ。それって「スゲェ~、カッコイィ~」と思います。なんか、ものすごく優しいしね。ほんとにこの女のこと愛してたんだろうなって、すごいグググッてくる言葉ですよね? それって、もう何にもないものっすごい素直な言葉だったりする。ほんまピュアな言葉でね。こういうのが書けたら最高だなと思います。周りが思う佐藤タイジ像とかさ、そういうのに対して応えなくてはならないとか、そういう葛藤もあります。でもそういうのって、本当にいらん葛藤ですよね。みんなが何を聴きたいか、何をカッコいいと思うかって、本当に、何もないところでのポロッと出る言葉がグサッてきたりするもんですよ、やっぱり。歌っていうのは、そういうのが残っていくものだろうし。ただねぇ、音楽ビジネスがこんだけ発達すると、音楽をやりたいっていうピュアな気持ちよりも、音楽を売りたいと思う気持ちのほうが現代は強いですよね。やれる素養があっても、それをできない環境っていうのがものすごいあると思うんですよ。

――ビジネスである以上、それは否定できないけれど…。

タイジ:
だから俺はこのアルバムがすごい好きなんですよ。バンド4人がすごい素直にやれてるから。虚飾や飾りがぜんぜんない状態って、俺はやっぱりセクシーやと思う。女性でもそうじゃないですか。着飾ってお洒落な格好して、肩がちょっと見えてたりとかしても別にそんなのでセクシーとは思わないけど、そういう人が家に帰ってちょっと力が抜けてホッとなったときにグッとか来て「ヤリてぇ!」みたいな(笑)。だからバンドとして、すごいセクシーな作品ができたんじゃないかなと思う。他の取材でも言ってるけど。これは「恋人と裸でいちゃつくときのサウンドトラックにしてください」、と。テクニック的にも、そうとうディープなことやってるし。沼澤さんも北村さんも中條さんも、ここに至るまでのキャリアの重ね方ってハンパじゃないですから、スゲェなって、ほんとに。もう「頭が高い!」みたいな(笑)。そんな皆さんにメンバーとして正式にやらしていただいて、本当に幸せですよ。フォーライフにもすごい感謝してて、ややこしい契約の形態があっても、それでもやってくれるメーカーがまだあるのかっていうのが、俺にはすごい嬉しいニュースやったし。ほんま、ありがとうございますっていう感じで。

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