イングヴェイ・マルムスティーン、降臨した王者の来日インタビュー特集

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高速クラシカルギターの開拓者にして元祖、イングヴェイ・マルムスティーンが久しぶりに来日し、東京、名古屋、大阪の3箇所でコンサートを行った。

ヴォーカルやキーボードの音が聴き取れないほどギターは大音量で、様々な超絶テクニックと哀愁あふれるクラシカルフレーバーでファンをお腹いっぱいにしてくれた。

インギーにしかできないこと、インギーだけの世界、インギーだけのギターを楽しませてくれたのだ。

王者らしい唯我独尊の姿勢を貫くさまは、むしろ潔くさえ思えてしまう。

そのインギーを離日間際にインタビューできた。
王者は、帰りの飛行機の時間が気になって終始不機嫌さの権化。
前半はそれでも質問に答えてくれていたが、15分が限界。
最後は常日頃の不満をブチまけて喋り続けたのだった。

さすがインギー。これこそが王者。
わがまま王者と言われ続けた男は、やっぱり本物の自己チューだった。
でも、インギーなら許せる。それだけのことを本当にやり続けているのだから。

そんな雰囲気を感じながら読んでみてね!

◆ ◆ ◆

──素晴らしいライヴだったけど、今回のジャパン・ツアーの感想は?

イングヴェイ・マルムスティーン(以下、イングヴェイ):ツアー? どのツアー? 今回のこれはツアーじゃないよ。ただの“訪問”だ。ツアーって言うのは半年とか8ヶ月のことを言うんだ。まあ、今回の日本訪問もいつも通りよかったけどね。日本は“イチバン”だ。他に大したエピソードはないね。

──東京、名古屋、大阪の3箇所に行ったけど、特に何か印象的なことはあった?

イングヴェイ:普段だったらけっこういいエピソードもあるんだけどねえ。今回は、ヨーロッパで始まって、長ーいアメリカン・ツアーを経て日本に来たんだけど、このアメリカン・ツアーがめちゃくちゃきつかった。で、アトランタでショウをやった後、そのままマイアミまで車を飛ばして、2時間ぐらいで準備をして、日本行きの飛行機に乗った。頭クラクラだよ。で、東京に着いたと思ったら、気がついたら名古屋にいて、もちろんショウはグレイトだったんだけど、次はハイ大阪、ハイ東京って、めちゃくちゃ急かされて、何も覚えちゃいない。楽しんでないわけじゃないけど、とにかく時間がなくてさ。いつもなら、あっち行ったりこっち行ったりするんだけど、今回はそんな余裕もなかった。だから、残念ながら、エピソードは何もない。

──ライヴは、セットリストは新旧のバランスがとてもよかった。選曲は大変だったでしょ?

イングヴェイ:大変どころかインポッシブル! 本当に大変だったよ。だからまあ、そう言ってもらえると嬉しいね。みんなが新曲を聴きたいのか昔の曲を中心に聴きたいのか、判断が難しかったんだ。それに、都市によってもウケが違うしね。個人的に気に入っているのは「Fugue(フーガ)」で、これはいかにもマルムスティーン調の曲だ。アメリカだと、場所によっては分かってくれない連中も多いけど、日本のオーディエンスは音楽をちゃんと理解してくれるから、弾きがいがあるってもんだ。俺は全力を尽くしてプレイしてるつもりだから、日本人みたいに、直に反応してもらえるとすごく嬉しい。俺は20年間それを糧にやってきたんだ。時々「Cherokee Warrior」みたいなものを入れるとみんな喜んでくれるしね。

──「Dreaming」を聴けたのは意外だったよ。最近よくやってるの?

イングヴェイ:気が向くとね。毎回じゃないよ。

──メンバーとのコンビネーションも素晴らしかったよ。

イングヴェイ:確かにね。でも俺は俺流でやってるだけで、他の連中がどれだけ居心地がいいかはわからない。みんながちゃんと自分の役割を果たしてるって? それはいいことだ。でも俺は俺。その図式は永遠に変わらない。新しいキーボード・プレイヤーはとても気に入ってる。ヤツは、ほとんどまっさらな状態でやってきて、すごくいい仕事をしてくれている。だから彼のことは褒めたいが、他の連中は4年だか5年だか付き合ってるわけだから、別のコメントのしようもないね。今さら“ヤツらはすげーよ”なんて言う気もないしね。

──それにしてもデカい音だった。プレイ・ラウドの精神は変わってないね。

イングヴェイ:え?(と聞こえないフリ)。俺は、ただ自分らしくプレイしてるだけだ。マーシャルはマーシャルらしい音を出すことしかできない。だから、あとは会場のど真ん中で仕事してるサウンドマン次第だ。どれぐらいラウドにするかはヤツの責任。俺が決められることじゃない。それがいいか悪いかは別として。

──アルバム『UNLEASH THE FURY』のコンセプトについて教えて。

イングヴェイ:そんなものはない。ただ、1曲ずつのテーマはある。18曲もあるんだから、その一つ一つがまとまればアルバムとなる。あとは聞き手の判断だ。これはヘヴィ、これはメロディック、これはさほどメロディックじゃない、これはギター指向、これはギターが少ない、などなど、細かいことを決めるのは聞き手の方だ。俺じゃない。俺は俺のやりたいことをやる。それだけだ。

──18曲収録ってのはすごいよ。アイディアがあふれ出してるカンジなのかな?

イングヴェイ:そう。俺は子供の頃、もっとたくさん曲があればいいのに、と思うことがあった。大好きなディープ・パープルの『MADE IN JAPAN』とか『FIREBALL』や『IN ROCK』なんか4、5曲しかなくて“もっと聴きたい”と思った。だから、今の俺はそういう観点からアルバムを作っている。俺がファンの立場から聴きたいと思うアルバムを作ったらこういう風になった。

──今回新しくチャレンジしたことは?

イングヴェイ:新しいことは常にやっている。おかげで、アルバムを作れば作るほど、俺の肩の荷は重くなっていく。俺はレイジーになる気はない。プロデューサーの指図を受ける気もない。ベーシストを雇う気もない。なぜなら俺の方がうまいから。他人に歌詞を書かせる気はない。なぜなら歌詞は俺の気持ちだから。以上のことがあるから、俺はがむしゃらに働かなければならない。それは『ALCHEMY』以来ずっと続いている。仕事は全部俺一人でやらなければならない。こうやって取材を受けるのも俺一人。バンドの連中は何もしやしない。ヤツらは給料をもらうためだけにいるんだ。だから、これをイングヴェイ・マルムスティーンと呼ぶのは正当だ。なぜなら、俺一人で何から何までやっているのだから。

──良い評価も悪い評価も、全部一人で引き受けちゃうってことだね。

イングヴェイ:もし君らが俺の音楽を気に入らないとしたら、それは俺の責任さ。プロデューサーにもシンガーにも責任転嫁できない。このバンドでは、シンガーもキーボード・プレイヤーもドラマーも、俺の指示に従っている。俺はコントロール・フリークなんだ。クレイジーと呼ぶがいい。でも、あのレオナルド・ダヴィンチだってすべてを仕切った。ヴィヴァルディもバッハもすべての指示を出した。チェロやコントラバスや管楽器の奏者が、それに文句は言わなかったはずだ。俺はロックンローラーだが、方法論はロックンロールじゃない。スティーヴン・タイラーと、あのジョーなんとかというヤツはグレイトだと思うが、あれはあくまでコラボレーションだ。ブラックモアとロードもそうだった。それはそれでいい。彼らのことは俺も好きだしね。ただ、俺の場合は全責任が俺にある。タムのマイキングから、ハイハットのEQまで。ドラムのセッティングからレコーディングまで、俺の思ってる通りにしなければならない。その上ベースを弾いてリズム・ギターも弾いて、ソリッドな音楽を作らなければならない。そして次はエキサイティングな歌詞も書かなければならない。つまり、最初から最後まで“俺”なんだよ。言いたくはないけど、それが事実なんだ。言いたかねーけど、何度も言わせてもらってることだ。


(取材・文●森本 智)
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