セカイイチ、『世界で一番嫌いなこと』インタビュー

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最新アルバム『世界で一番嫌いなこと』は、男臭く、アングラな匂いも濃厚、それでいて聴きやすいポップソングという、セカイイチの特徴をすべて含んでいるが、一方、バンドで作った曲をコンピュータソフトで再構築するという新たな手法を取り入れ、アナログ的な生バンドとデジタルのテクノロジーを融合させた意欲作になった。これまでのサウンドを一度壊してみたら新たなものが生まれてきたと語る岩﨑慧(Vo/G)に、最新作について話を訊いた。

――今回の曲作りには、Garage BandやLogicといったコンピュータソフトも使ったそうだけど、どんなところで使っているの?

岩﨑:僕はこれまで、コンピュータというものを使ったこともなければ信用もしてなかった。でも2年くらい前、初めてGarage Bandを使ってみたら衝撃があったんです。Garage Bandで初めてコンピュータで録音してみたら、それこそ衝動っていうか、初めて家に録音機が来たときみたいな感動で、すごく面白くて何時間もずっと曲を作り続けてた。実はそこから生まれた曲も今回のアルバムには入ってるんですよ。でもそのうち、Garage Bandにもちょっと飽きてきて、もっと色々なことができるシーケンスソフトのLogicに移行したんです。

――Logicではどんな作業を?

岩﨑:プリプロとか、スタジオで録ってきたバンドの音をオーディオでLogicに流し込んで、リミックスというか、アレンジし直すんです。だいたい全部のパートを順に取っ払っていって、MIDIで作ったパートに差し替えていく。それでアレンジを考えるんです。

――そこでドラムのループやブレイクビーツも入れていくの?

岩﨑:はい。響ちゃん(※ドラマー吉澤響)に誰々みたいなドラムを叩いてくれって言っても、なかなかそうはいかないですからね。たとえばクエストラヴみたいな、耳で聴くというよりまず身体が反応するようなドラムが欲しいなあと思ったりすると、少しそういう要素を足すという意味でループを使ったり。アレンジを考えるときって、実はLogicで響ちゃんのドラムをまず全部消しちゃったりもしてるんです(笑)。それで自分でMIDIで作ったパターンをはめていって、響ちゃんに聴いてもらったり。

――バンドなんだけど打ち込みやループも使う、そのバランスってどう考えてるの?

岩﨑:バンドならバンドだけ、打ち込みなら打ち込みだけでやっちゃえば簡単かもしれないんですけど、色々なときに浮かぶアイデアを殺したくないというのが一番ですね。レコーディングしてる最中にも、ああこうしたら、ってアイデアが浮かぶこともあるから、それを取り入れるために打ち込みを使うんです。バンドの生の音と打ち込みの機械的なものを一緒にやっても、フレーズだけ変えればうまくハマることもあるんで、バランスとか難しいことはあまり考えてないですね。音楽としてカッコよければなんでもいい。

――打ち込みと生の音が融合したノリ、そういう音楽が好きなのかな?

岩﨑:というより、“フォーマット化されていない音楽”が好きなんですよね。フリー・フォークでもアシッド・フォークでもなんでもそうなんですけど、きっちりフォーマットされてしまっている音楽じゃないヤツ。以前はアンダーグラウンドと呼ばれてたものが、今はメインストリームに出てきていたりしているし、テクノとかハウスでもただ打ち込みで鳴らしてるだけじゃ面白くないし、全然そういう時代じゃない。そういうものを通過して、新たなものを生み出そうとしてる人たちがたくさんいるんで。そういう音楽が好きだし、そういうことをやりたいと思いますね。

――そういうアレンジをまとめるのに気を遣っているところは?

岩﨑:曲の方向性とかアレンジはほとんど、今サポートでやってもらってるnenemの山本創くんと僕の二人で一緒に考えてるんですけど、うーん、あまり何も考えてないですね。こういう曲がいいなと思って作ってて、“あ、できた”という瞬間があるんですね。“じゃあその方向でいくか”っていうくらいで、けっこう簡単なんですよ。

――1曲目の「勇気の花」は2年前にできた曲なんだって?

岩﨑:原曲ができたのは2年くらい前でしたね。いい曲だなあと思っていたのでずっと手を加え続けていたんですけど、やっとこれで完成だなという感じになったので今回入れました。メロディは変わっていないんですが、曲の方向性とかは変わりましたね。最初はアコギとブレイクビーツだけ、みたいな感じだったんで。

――ドラムだけのインスト「118」はどんな発想からできた曲?

岩﨑:もともとインタールードになる曲をどこかにはさみたいと思っていて、最初はMIDIで打ち込んだヤツを入れようかと思っていたんです。経緯はわからないんですが、いつの間にかtoeのドラマー柏倉隆史さんと響ちゃんのネットワークがつながっていたんで、それなら二人でやってみたら? ってことで。ただ僕はこの曲の作業にまったく関わっていないんで、どうやってできてきたかよく知らないんです。レコーディングにも行かず、ひたすらでき上がりを楽しみにしてました。ただのドラムソロじゃなくて、ちゃんと曲として完成させたいと思ってやってた、と彼らは言ってましたね。

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