【音楽と映画の密接な関係 2001 Summer】『ラマになった王様』

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ディズニー・アニメ史上、最も性格の悪い主人公!?

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スピード感あふれる痛快アニメ

ラマになった王様
(2000年アメリカ)

▲南米の山奥の王国に君臨する若き王クスコは、超ワガママ、イジワル、ゴーマンな弱冠17歳の暴君。逆らう者が誰もいないのをいいことに、自分勝手やりたい放題の毎日を送っていた。ところが、ひそかに王座を狙う魔女イズマの謀略により、魔法の薬でラマに姿を変えられてしまう。城から放り出され、途方に暮れたクスコは、心優しい村人パチャの助けを借りることになるが、王のプライドが邪魔をして、素直にものを頼むことが出来ない。パチャにしても、この横柄なラマ(しかも別荘建設のためにパチャの家を壊そうとしていたワガママ王)に、ただで手を貸す義理はない。2人は反発しあいながらも、何とか危機を乗り越えて城を目指すが……。


2001年7月14日より全国松竹・東急系劇場にて公開!
●監督/マーク・ディンダル
●原案/クリス・ウィリアムス、マーク・ディンダル
●音楽/スティング、デヴィッド・ハートレー
「ラッキー・ムーチョ」歌:ムーチョ★ヒデキ(西城秀樹)
●ヴォイス・キャスト/デシッド・スペイド、ジョン・グッドマン、(英語版)、藤原竜也(日本語版)
●配給/ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
●上映時間/78分
Special Thanx to www.disney.co.jp

オリジナル・サウンドトラック

「ラマになった王様」オリジナル・サウンドトラック

AVCW-12204 2,548(tax in)
2001年5月16日発売


1 Perfect World/TOM JONES
2 My Funny Friend and Me/STING
3 Snuff Out the Light/EARTHA KITT
4 Walk the Llama Llama/RASCAL FLATTS
5 Perfect World(Reprise)/TOM JONES
6 Run Llama Run
7 One Day She'll Love Me/STING AND SHAWN COLVIN
8 A New Hope
9 Beware the Groove
10 The Jungle Rescue
11 Pacha's Homecoming~The Blue Plate Special
12 The Great Battle~Friends Forever
13 Lucky Mucho/ムーチョ★ヒデキ

※このサウンドトラックのために書き下ろしたというスティングの新曲2曲も、大きな聴きどころ! スティングのインタビュー記事も読んでみてね!

あの人気俳優、藤原竜也が、よりによってラマである。それも、とびっきり性格の悪いラマ。

いきなり何の話かというと、この映画の日本語吹替え版で主人公クスコの声を担当しているのが、藤原竜也なのだ。ディズニーの夏休みファミリー向け作品ということで、吹替え版を作ったのだろうが、くれぐれも子供向けアニメと決めつけてあなどることなかれ。作品自体もさることながら、この日本語版の出来がとても良いのである。

冒頭、ジャングルで雨に降られてふてくされているラマの口から、何の前触れもなく藤原の声が聞こえてくるのにはちょっと驚いたが、予想外にスピードの速いストーリー展開をすんなり理解し、小気味のいいテンポの会話を満喫できるのは吹替え版ならでは。そして、軽妙な会話を引っ張る藤原のセリフ回しが、これまた予想外に(失礼!)素晴らしい。

▲いがみ合っていたパチャ(右)と、ラマになってしまったクスコだけど、のちには信頼しあって助け合って…。
何しろクスコは、ディズニー・アニメ史上、最も性格の悪い主人公と言いたくなるようなキャラクター。ワガママで気まぐれで傲慢で、ラマに姿を変えられてからも王様気取りは変わらず、憎まれ口ばかり叩いているような奴なのだ。ただ、口は悪いが腹黒いところはなく、どこか憎めないナイーヴさも持っている。そんなビミョーな役どころを、藤原はそれこそ口先だけで見事に演じてみせている。彼は以前、『スチュワート・リトル』でもネズミ役の吹替えをやっていて、今度はラマ。動物ものは十八番なのか…?(笑)

他のキャラクターも類型的とはいえ、なかなかに魅力的だ。クスコを助ける村人パチャは、大人の分別を持った誠実な男。クスコの傍若無人な振舞いを、時に反発しながらも辛抱強く見守っていく。そして、この映画の唯一のテーマといえる“友情”の大切さを教えるのがパチャの役割だ。

▲藤原竜也の声が、妙にハマっていて、ハイテンポな映画。もちろん大人も楽しめます!
といって、妙に説教くさいところがまるでないのが本作のいいところ。そして、クスコのひねくれた性格の面白さとともに、もうひとつ忘れられないのが敵役の魔女イズマと、その手下のクロンク。この2人の悪者キャラクターが、絶妙なはじけ具合いで大いに楽しませてくれるのだ。特にクロンクの天然ボケぶりは凄まじく、ストーリーに関係なく随所で爆笑を誘う。このあたりも吹替え版の声優たちがいい仕事をしている。

とにかく、1時間18分という短い上映時間がさらに短く感じられるほどのスピード感あふれる痛快アニメ。西城秀樹ならぬムーチョ★ヒデキの“ラッキー・ムーチョ”もしっかりフィーチャーされた日本語吹替え版で、『ラマになった藤原竜也』(!)をぜひご堪能あれ。

文●原 令美

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