【音楽と映画の密接な関係 2001 秋!】『グリッター きらめきの向こうに』

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マライア自身をダブらせるかのようなサクセス・ストーリー
強く生きようとする豊かなハートを持った女性像を演じます


10年以上も歌で人々の心を掴んできただけに、演技も心あるもの、が……

グリッター きらめきの向こうに
(2001年アメリカ)

▲'80年代N.Y.のクラブ・シーンが舞台。クラブ歌手の母リリアン(ヴァレリー・ペティフォード)の才能を受け継いだビリー(マライア・キャリー)は、天性の美声を持っていた。そのリリアンの火の不始末が原因で家を失い、孤児院に送られたビリーはやがて、同じ境遇の親友とクラブ・ダンサーに。ここで注目を集めバック・コーラスの仕事をゲットしたビリーは、人気DJのダイス(マックス・ビーズリー)に引き抜かれ、デビューを果たす。と同時に熱烈な恋に落ちるふたり。が、さまざまなトラブルに見舞われ、別れることに。しかし、気持ちは離れてはいなかった。ダイスへの愛を改めて確信したビリーは、かつてのふたりの夢だった、マジソン・スクエア・ガーデンでの初ステージの日を迎える。ダイスが来てくれることを信じて。ところが……。


『グリッター きらめきの向こうに』予告編が観られます!
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2001年10月20日より、全国東宝洋画系劇場にて公開!
●監督/ボンディ・カーティス=ホール
●脚本/ケイト・ラニエー
●原案/シェリル・L・ウエスト
●音楽/テレンス・ブランチャード
●出演/マライア・キャリー、マックス・ビーズリー、ダ・ブラット、エリック・ベネイほか
●配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
●上映時間/104分

オリジナル・サウンドトラック

『GLITTER』

SRCS-2500 2,520(tax in)
2001年8月18日発売

1LOVERBOY REMIX
2LEAD THE WAY
3IF WE
4DIDN'T MEAN TO TURN YOU ON
5DON'T STOP (FUNKIN' 4 JAMAICA(
6ALL MY LIFE
7REFLECTIONS (CARE ENOUGH)
8LAST NIGHT A DJ SAVED MY LIFE
9WANT YOU
10NEVER TOO FAR
11TWISTER
12LOVERBOY

マライアさん、ゴメンナサイ。


▲赤いバラに恋人を、そして母親を思うビリー(マライア・キャリー)。すべては歌が彼女を支えてきた。
正直なところぼくは、アナタの演技には期待が持てませんでした。何というか、最初からタカをくくってしまっておりました。――っていうのも、昨年の来日公演の際のシアトリカルなステージ(随所に「演技」シーンが)の印象が強かったし、それにインタヴューなどでの、ベッドに横たわり、片手にはワイン……てなシーンが強烈に目に焼き付いていたから。女王の座に安住し、何事においても自己満足に溺れてしまっているのではないか、どんな映画であろうと、そういう、ある種浮世から完全に隔絶されたところにいる人に、人間模様なり人生の機微なりがリアルに演じられるものなのだろうか……などとちょっと冷めた視線を送っていたように思います。

ところが、なかなかどうして。心ある演技でございました。特に恋人、ダイスとの破局の後の、切なく揺れる女心を描いた場面での繊細でセンチメンタルな演技など、堂に入ったものです。涙する観客もたくさんいるでしょう。10年以上も歌で人々の心を掴んできたのもダテじゃないですね。あ、お調子者でスミマセン。

というわけでこの映画、アメリカン・ドリームを地で行くサクセス・ストーリーを軸に、母親とのディスコミュニケーション、友情、ロマンス、別れ、そして希望が織り込まれた、極めてオーソドックスでわかりやすいエンターテインメント・ムーヴィーなのだけれど、それ故に当然、登場人物のキャラクターの立ち方や演技力が重要なポイント。


▲歌うシーンもたっぷり。サントラはマライア自身がプロデュース、映画でも女優だけでなくエグゼクティヴ・ミュージック・プロデューサーとしても深く関わった。
ヒロインのビリー役を演じるマライアは、急速でスターダムを駆け上がることへ喜びやとまどいを覚えながらも、大切なもの、大切な人を信じ、愛し続け、強く生きようとする豊かなハートを持った女性像を、しなやかな演技で浮き彫りにしている。このあたり、ウェイトレスから“'90年代のシンデレラ”に成り上がった自分の、劇的なアーティスト人生とダブる部分もあったことだろう。人気シンガー、ラファエル役で登場するエリック・ベネイはご愛嬌として(笑)、ビリーの母親役のヴァレリー・ペティフォード、恋人役のマックス・ビーズリー(痩せたカビラ・ジェイを連想してしまうのは、ぼくだけ?)らも、味のある演技でマライアをサポートしている。

ただ、大きな不満も。はっきり言わせていただきます。それはラヴ・シーンだ! いくら何でも、あんな子供だましのようなキスはないんじゃないですかー? それに、すりガラス越し(!?)の3秒ぐらいのベッド・シーン。マライアが着けているの、それ水着なんじゃ?

いや、男のスケベ心だけで言ってるんじゃないんですよ。リアリティが著しく損なわれてしまっているということ。もう十二分に大人のオンナなんだし、本格女優を目指すのなら、身も心も、文字通り裸になっていただかないと。そのへんは次作に期待させていただきます。

文●鈴木宏和

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