【BARKS編集部レビュー】Klipsch Image X7i、名機Image X5&X10と比較すると?

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Klipsch Image X7i(クリプシュ・イメージX7i)の筐体をみて、ふとオタマジャクシを思い出し、ほんのりノスタルジックな気持ちが漂った。しかもこの形とぬめっとしたテカり具合は、手のひらで散々もてあそび、息も絶え絶えのてろんとした状態のオタマジャクシだなぁ…。

◆Klipsch Image X7i画像

あ、お食事中にすいません。

▲Klipsch Image X7i。カラーバリエーションとして黒と白がある。スリーボタン・リモコンマイクが付き、ケーブルはフラットケーブル。ジャックはX5やX10が斜めのL型だったが、X7iではストレートに変更されている。

▲イヤーピースは、クリプシュ特有の断面が円ではなく楕円型をしているEar Gels。外耳道への自然なフィットと高い遮音性を誇るイヤーピースだ。

▲セラミック特有の光沢が特徴的。こうやって見ているとオタマジャクシというよりも2匹のクリオネにも見えたり見えなかったり。

▲左から名機X5、X10、そしてX7i。短く太くなったことで、X5、X10のように外耳道に深く挿し込むタイプではなく、耳穴ふもとに蓋をするような感覚になった。

▲付属品は取説、ポーチ、イヤーピース各種。ボックスは厚紙でできており破らないと中身が取り出せない。

そんな昭和な思い出とは裏腹に、Image X7iの非常にバランスのとれた中庸なトーンは、日を追うごとに品質が向上している現代のイヤホン事情を牽引する、最先端の完成度だ。しかもそこはさすがのKlipschで、飛び道具的なトーンは決して出さないし、つかみのいいサウンドで人の気を惹こうともしない。決して使用者を選ばないごくごく平凡を装ったハイエンドなイヤホンとして、安心の完成度を見せている。

Image X7iがオタマジャクシ的テカりを放つのは、ハウジングがセラミック製だからだ。セラミック製のハウジングと言えばFischer AudioのCeramique(セラミーク)を思い起こすが、セラミークは鮮烈な高域と低域を叩き出す強烈な潜在能力を携えながらも、筐体の形状が個性的過ぎて、その実力を叩き出すに必要なフィット感が得られないというド変態イヤホンであった。Fischer Audioはロシアのブランドなので西洋人に最適化された形状だったのかもしれないが、典型的な日本人顔の私にはフィットが難しかった。日常使用は断念したものの、セラミック製の筐体が響かせる素晴らしいサウンドは忘れ難い強烈なインパクトがあったので、セラミック製のイヤホンにはどうしても特別な期待を抱いてしまう。そんな高めのハードルをもってしてもImage X7iは、装着感、サウンド共に何の不満も生じない。

フィット感が良いと言ってしまえばそのままだが、注目すべきは、装着が非常に楽という点だ。耳穴に差し込めば、そのままスポッと収まりそのまま落ち着いてしまい、そこから全くぶれることがない。差し込むというよりも、むしろ感覚的には耳穴のふもとにスポッと置く感じで見事なフィットをみせてくれる。それで遮音性も上々なのだ。耳穴の大きさに合わせて最初にイヤーチップのサイズだけ決めてしまえば、装着状態にブレがないので、常に安定した再生環境を提供してくれる。一部のカナル型イヤホンでは、装着自体にコツや慣れが必要なものもあり、遮音性、低域の伝わりや高域の再現性などが装着のたびに変わってしまうことがあるのだけれど、そういう意味においても、Image X7iにぶれはない。

Image X7iのサウンドは、人気モデルImage X5、X10の血統をそのまま受け継ぐ、キレの良い低域と清潔感のある中高域を持ち合わせている。基本はX5と非常に似通っていると言えるが、筐体の違いなのかチューニングによる差異は顕著で、X7iはX5よりも低域が出ている。分離が良くなり雑味感がなくなったことで低域のクリアネスが上がり、よりはっきりとビート感が伝わってくるイメージだ。

中~高域の量はあまり変わらないが、頭打ち感は少なくなり、周波数帯域はぐっと広がった印象が出ている。好き嫌いはまた別の話で人それぞれの意見があろうが、サウンドの品質という意味においては、間違いなくX5よりハイクオリティなサウンドだ。こと中域における音の実在感はX7iの方が数段上手で、X5はザラザラすかすかしたすの入ったようなバランスに聞こえる。ちょっと雑味が含まれているという感じか。その両者の差異は微細でさして大きな違いではないのだけれど、X5がいかにもバランスのとれたフルレンジのシングル・バランスド・アーマチュアドライバーのサウンドであるのに対し、X7iはシングルBAとは思えない、高域や低域の量感や帯域の広さが確保されている。ちょっとした違いだが、そこが両者の印象を大きく変える分水嶺になっているようだ。

型番から見ると、X7iは、X10よりもX5寄りなのかと思えるが、そのサウンドから受ける私の印象では6:4でX10の方に近く、いっそX8iという名前の方がしっくりくる。ただ、X5とX10の同一線上に位置するのかというとそういうイメージでもなく、3者は三角形に位置し、それぞれに特徴と違う魅力を携えている。つまりはお互いに上位互換でも下位互換でもなく、それぞれの在り様に価値があるといえそうだ。

ちなみにX10の方が全体がクリアで見通しが良いのは間違いない。つまりは最も上質である。とはいえ一方でX7iは肉厚な中域が音に重量感と迫力を与えてくれている。その上でキレも良いので、パワフルながらメリハリのある音がツボに入れば、整理整頓されたX10のイメージよりもX7iの方が好印象に感じる人も相当いることと思われる。

繰り返しになるが、X5やX10のように外耳道にぶっすり挿すような装着感ではなく、耳穴の手前にぱこっとはまる感覚なので、カナル型を初めて使う人や深く差すタイプに違和感や抵抗感、痛みを感じる人には、X7iは救世主とも言える装着感を提供してくれることだろう。実のところ、X5もX10も装着感の素晴らしさでは飛びぬけた魅力を持つモデルだけれど、X7iの高度に安定した使用感は、プロダクトデザインとしての高い完成度を裏付けるひとつの証でもあるのだ。

もちろん、X7iにも良くない点はある。最も気になるのは、ケーブルのタッチノイズがかなり目立つ点だ。X7iではフラットケーブルが起用されており、これによって絡みにくく使いやすいものとなった。おそらく耐久性も上がっていると思われるが、一方でタッチノイズはお世辞にも少ないとは言えない。クリップのようなもので止めれば随分と軽減されるが、このケーブルの採用は改善か改悪か人によって評価が割れるところだろう。ケーブルを耳に回して掛けるいわゆるSHURE掛けをすればタッチノイズは格段に改善できるが、リモコンまでの分岐が短く長さに余裕がほとんどないため、そこは注意が必要だ。

丈夫で上質、信頼度も高く品質の高い、それでいて人を選ばず良い音を安定して聞かせてくれる、そんなハイエンドちょい前の安心モデルとして、X7iは非常に魅力的。カナル式が苦手な人でも、X7iなら大丈夫という人もいるんじゃないかな…。そう、耳の小さな女性にこそ、是非お薦めしたいモデルだ。

text by BARKS編集長 烏丸

●Klipsch Image X7i
・販売価格:オープンプライス(オフィシャル販売サイト:22,800円)
・スタイル:インイヤー
・ドライバー形式:バランスド・アーマチュア
・ドライバー:Full Range KG 623X7
・ドライバー口径:8.5mm
・周波数特性:10Hz-19kHz
・レベル(1mW):110dB
・インピーダンス:50Ω
・プラグ:3.5mm
・重量:10.5g
・カラー:Black/White
・その他:Apple製品対応スリーボタンリモコンマイク付
・ケーブル:フラットケーブル採用
・付属品:専用ケース、クリップ、4種類のイヤーチップ(サイズ違い)

◆Klipsch Image X7iオフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
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●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
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◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
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■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
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●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
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◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
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■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
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◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
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■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
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■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
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◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
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●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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