TASCAM、iPhone/iPad用ステレオコンデンサーマイク「iM2X」&マイク/ラインアンプ「iXJ2」試用レポート

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iPhone、iPadなどのiOSデバイスを音声収録に使いたいというニーズはけっこうあるようで、マイクをはじめとする周辺機器が数多くリリースされている。そんな音声収録をターゲットとした周辺機器のなかからティアックのTASCAMブランドから発売されている「iM2X」と「iXJ2」の2製品の試用レポートをお届けする。

いずれもiPhoneと同じくらいの幅と厚みでポケットに収まるコンパクトなサイズながら16ビット/44.1kHzの録音が可能なのだが、その利用方法は異なる。「iM2X」はコンデンサーマイクなので、iOSデバイスに接続すれば即録音が可能。一方の「iXJ2」はマイク/ラインアンプとなっており、外部マイクや楽器などを接続して録音することになる。いずれも音にこだわりたい人は見逃せない製品だ。

なお、iOSデバイスとの接続は30ピンドックコネクターを利用する。iPhone 5以降のモデルの場合はドックコネクターが搭載されなくなったので直接接続することはできないが、Appleの「Lightning - 30ピンアダプタ」を使用して接続することになる。

■ドック接続するだけでiOSデバイスを高音質レコーダーに
■コンデンサーマイク「iM2X」


▲iPhoneに取り付けた状態。机上に置いた際にマイク取り付け部の下に空間が空くので、振動を受けにくくなっているようだ。
まずはコンデンサーマイクの「iM2X」から見ていこう。「iM2X」の特徴はなんといっても、高音質のステレオ録音が気軽にできるという点にある。搭載されるマイクは、同社のリニアPCMレコーダー「DR-07MKII」と同等の単一指向性ステレオコンデンサーマイク。このマイクを含む回路設計には業務用録音機器で培った技術が投入されており、S/N比95dB以上、10~20kHzの広い周波数特性を実現しているという。すなわち、iOSデバイスで単体のリニアPCMレコーダーに匹敵する高音質が収録できる=iOSデバイスを高音質レコーダーに変身させる周辺機器が、この「iM2X」なのだ。


▲マイク部は手前から反対側まで180度回転。操作しながらの音声収録が無理なく行える。
使い勝手の面ではまず、マイクが180度回転するvari-angle機構が秀逸。ステージに向けてライヴを録音する。あるいは手前に向けて自分の声を録音する。いずれの場合も画面を見て操作しながらの収録が可能だ。また、録音レベルは本体側面に備えられたインプットボリュームで無断階に調整可能。ボリュームには1~10の数字が印字されているので、似たようなシチュエーションで再録音するといった場合には調整の時間が短縮できるというメリットもある。さらに入力レベルの確認ができるLEDインジケーターも本体に搭載。録音アプリのレベル表示がない場合でも適正なレベル調整がしやすくなっている。そして、大音量の過大入力でも安心のアナログリミッターも装備、本体のスイッチですぐにON/OFFできる。iM2Xのマイクで収録された音声はiM2X内でデジタル化(AD変換)され、iOSデバイスに伝送される。ADコンバーターは旭化成のAK5357で、A/Dコンバーター単体で100dB(@3V,48kHz)のS/N比、ダイナミックレンジを誇る高性能なものだ。

■X-Yマイクで中抜けのない収録が可能、楽器録音に最適

「iM2X」のルックスを特徴づけている要素の1つ、マイクの配置についても触れなければならない。2つのマイクが向かい合うように取り付けられているこの配置は、「X-Y方式」と呼ばれるもので、カタログなどでは「インタビューやアコースティックギター、ドラムなど単一の音源を狙って録りたい場合に適している」と紹介されている。TASCAMからはiOSデバイス用コンデンサーマイクとして、マイクを外側に向けたA-B方式の「iM2」もリリースされており、こちらは「ライブコンサートの収録や、走行音の録音などの収録において広がりのある音が得られる」としている。単一の音源をねらう「iM2X」と、広がりのある音が得られる「iM2」、録音対象によって選択できるラインナップが揃っているというわけだ。


▲「iM2X」に使われているX-Y方式は、単一音源の収録に適した方式。「iM2」は広がりのある音が得られるA-B方式を採用。
また、「iM2X」のX-Y方式についてさらに言うと、A-B方式に比べて中央の音が小さくなる「中抜け現象」が起こりにくいというメリットもある。自宅録音で楽器演奏やボーカルを録音したいという場合にもこちらを選ぶことになるだろう。

気になる音質については、インタビューから講演、ピアノコンサート、エレキギターやドラムの演奏などさまざまなシチュエーションで試したが、いずれの場合もこれが非常に優秀。その音はクリアかつノイズレス、まるでその場にいた時の音が再現できるといった印象だ。コンデンサーマイクだけに感度は高く、インタビューでも二人の話者のどちらが話しているかカンタンに判別できるし、息遣いまで捉えられる。オフィス内の録音なら遠くで誰かがペンを落とした音とその方向までわかってしまうし、エアコンの動作音やパソコンのファンの音まで聞こえてくる。

録音機器を多数リリースしているTASCAMの製品だけあって、楽器録音も得意だ。アコースティック・ギターの自宅録音はなんなくこなせるし、小さめのホールでのピアノコンサートではピアニシモからフォルティシモまでプレイを余すことなく収録、再現してくれた。一方、大音量のエレキギターやドラムの演奏では内蔵のリミッターが活躍。大きな音でも割れることなくしっかり収録できた。爆音バンドのライブ録音は残念ながら試すことはできなかったが、映画館の最大音圧の約10倍にあたる125dB SPLの耐音圧設計ということなので、こちらも期待できそうだ。

非常にコンパクトなので、いつでもiOSデバイスといっしょに持ち運びたくなる「iM2X」。電源はiOSデバイスから供給されるので、バッテリーのもちが気になる人も多いだろう。特に普段は電話として利用するiPhoneなどでは録音後に通話の待ち受けができなくなるのでは魅力も半減だ。しかし、その点もミニUSB端子の搭載でクリアしている。ミニUSB端子に電源アダプターを接続すれば、「iM2X」で録音しながらiPhoneの充電が可能なのだ。長時間の録音が必要となる場合には、iPhone用のACアダプターとミニUSBケーブルを別途用意すれば安心感も増すというもの。こうした電源への配慮もうれしいところだ。


▲表面中央には入力レベルインジケーターを用意。その上には180度回転するマイクが、左側面にはミニUSBとリミッターのスイッチ、右側面にはボリュームを備える。
■録音アプリも用意、機能豊富なTASCAM PCM Recorder

録音に使うアプリについても触れておこう。iOS用には数多くの録音アプリが各社から出ているが、一部のアプリではステレオ録音に対応していないものがあるという点には注意が必要だ(iPhoneやiPadの内蔵マイクおよびイヤホンジャックに接続するマイクがモノラルのみなので、それに対応すればいいということなのだろう)。そのへんを考慮したのか、TASCAMからは「TASCAM PCM Recorder」という無料のステレオ対応の録音アプリがリリースされている。録音時のレベル調整はもちろん、イコライザーやローカット(空調機器の動作音の低減などに)も搭載。イヤホンを接続して収録される音を聞きながら録音できるのもよくできている。アプリを切り替えたり、スリープした場合でも録音が継続できるのも便利だ。


▲「TASCAM PCM Recorder」で録音したファイルはiTunes経由でパソコンに取り込めるほか、直接SoundCloudにアップロードも可能。
このほか、無数のアプリから好きなものを選択できるのもiOSデバイスの魅力。無料のボイスメモアプリから、数千円の本格的な音楽制作アプリまで、「iMX2」の高音質を存分に活用できるアプリはいくらでもある(もちろん、AppleのGarageBandもOK)。iPhone/iPadを高音質なボイスレコーダーとして利用したい人も、一人で楽器のアンサンブルを多重録音するマルチトラック・レコーダー的利用でも、有力な候補となるはずだ。

■2つのマイクが接続可能、動画撮影にも威力を発揮
■さまざまな用途に対応するマイク/ラインアンプ「iXJ2」


▲iPhoneにiXJ2を取り付けた状態。INPUT Aは一番上にくる。中央の電源インジケーターは青、入力レベルは緑からオレンジ。
さまざまな入力ソースを使いたいなら「iXJ2」がオススメだ。「iXJ」は3.5mmミニジャックを2系統備えたマイク/ラインアンプで、市販のステレオマイク、モノラルマイクが利用できるほか、楽器やオーディオプレーヤーになどのラインレベルの入力にも対応する。マイクに関してはプラグインパワー出力が可能なので、ICレコーダーやビデオカメラ用に市販されているエレクトレットコンデンサーマイクからも好きなものが選べる。

iOSデバイス用周辺機器としては珍しいのが入力がINPUT A、INPUT Bの2系統あること。それぞれの端子はモノラルでもステレオでもOK。INPUT Aのみ、Bのみ、そしてSTEREOが選択でき、STEREOの場合はINPUT AがL、INPUT BがRになる。たとえば、インタビューならマイクを2本をそれぞれINPUT A/Bに接続してSTEREOを選択すれば、インタビュアーと対象者の声を的確なレベルで捉えられる。ステレオマイク1本で手軽に利用するなら、どちらか一方の好きな方につなげばいい。左右(L/R)のレベルは個別に調整が可能で、プラグインパワーのON/OFFも個別に行える。iOSからはステレオ×1チャンネル、またはモノラル×2チャンネルとしての利用となる。

録音時のレベルは、L/R個別に設けられたダイヤルで調整可能。2本のマイクをつないだ場合はINPUT AがL、INPUT BがRとなる。ダイヤルは普通に回すとLとRがいっしょに回るので、片方だけ動かしたい場合はもう一方を押さえて動かすことになる。個別に動かすにはけっこう力が必要なのだが、左右のバランスを保ったままレベル調整ができることを考えれば、理にかなった仕様だと感じる。また、「iM2X」同様数字が刻印されているのもいい。


▲表面には中央に電源、左にL/Rの入力レベルインジケーターを搭載。裏面にはMONO SUM、LIMITER LINK、INPUT SELECT、プラグインパワーのON/OFFのスイッチを用意。左側面はINPUT Aの入力端子、右側面にはミニUSB端子を備える。
裏面にはINPUTチャンネルの選択とプラグインパワーのON/OFFのほか、「MONO SUM」と「LIMITER LINK」のスイッチが用意される。「MONO SUM」はモノラル/ステレオ切り換えスイッチで、ONにするとLとRの入力音をあわせてセンター定位のモノラルで出力する。インタビューや対談の収録を聞きやすくするためのもので、モノラル対応のみのインターネット生放送のアプリを使用する際にも、2つの入力をモノラル化できるこの機能が活躍する。一方のLIMITER LINKは入力音がひずまないように過大入力を抑制するリミッターの動作モードを設定するもの。ステレオ、モノラルそれぞれの入力に対応できるよう、一括動作(ステレオリンク)と個別動作から選べるようになっている。電源に関しては「iM2X」と同じく、ミニUSB端子からの給電&iOSデバイスへの充電が可能だ。

よく考えられているなあと感心したのが、INPUT A、Bが別の面に配置されているところ。マイクをケーブルを使って接続するならどんな角度でも問題ないのだが、コネクタと一体化したマイクを使用する場合はこの角度が非常にありがたいものとなる。


▲写真左はINPUT Bにピンマイクを接続した状態。右はiPhoneを横向きにしての動画撮影。INPUT Aに接続すればステレオ・マイクがしっかり左右に配置されることになる。
ご存知のとおりiPhone、iPadのカメラアプリで録画する際に本体を縦向きにすると、収録映像は縦長になってしまう。よって、パソコンで見る、YouTubeにアップロードするといった場合には、横長の映像になる横向きで録画するのが一般的だ。しかし、横向きで撮影するとなると、ステレオ音声で収録したい場合に問題が出てくる。先に紹介した「iM2X」のようなドックコネクター直結タイプのマイクでは、マイクの向きが上下になってしまい、せっかくのステレオ対応が生かせないのだ。一方、「iXJ2」なら側面のINPUT Aにステレオマイクを接続すれば、画面に合った定位でのステレオ音声収録が無理なくできる。音声収録のみなら、iOSデバイスを操作しやすい縦向きのまま上にあるINPUT Bを利用すればいい。片手でiOSデバイスを持って撮影&ステレオ録音するなんてことも「iXJ2」との組み合わせであればカンタンに行える。

マイクアンプの音質は、接続したマイクのキャラクターが素直に出るという印象で、少なくとも同価格帯の単体レコーダーのマイクアンプに見劣りすることはないと感じた。思わず複数のマイクをとっかえひっかえ録音して聞き比べることに没頭してしまったほど。そして、ライン入力もそれは同様。さまざまなソースが扱えるオーディオインターフェイスとして即戦力になるデバイスだ。

2本のマイクが同時に使えるのはとても楽しい。ケーブル接続のマイクなら離して設置すればより広がりのある音像が得られるし、アコースティックギターの録音ならサウンドホールとネックを個別に収録してミックスするといった凝った音作りも楽しめる。また、パソコンを使った録音の場合、オーディオインターフェイスとコンデンサーマイク2本を揃えるとけっこう重装備になるのだが、iOSデバイスと「iXJ2」、プラグインパワーのマイクの組み合わせなら非常に軽量&コンパクトなシステムに仕上がる。持ち運べるレコーディングシステムとしても魅力に感じる人は多いはずだ。

■iOSデバイスならではの便利な録音システムの構築に

パソコンを使ったマイク録音ではファンやハードディスクのノイズが気になるが、iOSデバイスならその心配は無用。軽量&コンパクトな録音システムとしては、ICレコーダーやリニアPCMレコーダーの方が手軽だが、録音後の編集や他の人に聴かせる手段(メール送信やネットでの公開など)を考えると、さまざまなアプリが利用できるiOSデバイスに分がある。また、持ち運べる多重録音システムとしては、小型のマルチ・トラック・レコーダー(MTR)もリリースされているが、打ち込みのトラックを併用するとなると、やはりiOSデバイスのほうが便利だと感じる点も多い。

こうしたiOSデバイスを核とした録音環境の構築には、今回テストした「iM2X」「iXJ2」の2製品は非常に魅力的だ。すべての面でパソコンや単体レコーダーに勝るとまでは言わないが、手持ちのiPhone、iPad、iPod touchを高音質レコーダーに変身させられるというファクターはガジェット好きならずとも抗いがたいのではないだろうか? そして、何よりも音がいい! iOSデバイスで「いい音を録音したい」「本格的に音楽制作がしたい」という人は、まずチェックしてほしい製品だ。

<おもな仕様>
●iM2X
内蔵マイク:単一指向性、ステレオ、X-Y方式
最大耐入力音圧:125dB SPL
USB:Mini-Bタイプ
電源:iOSデバイスから供給
消費電力:90mW
外形寸法:57.0(幅)×58.6(高さ)×19.0(奥行き) mm
質量:30g
周波数特性:10Hz~20kHz
S/N比:95dB以上
歪率:0.01%以下
対応機種:iPhone 4S、iPhone 4、iPad(第3世代)、iPad 2、iPad、iPod touch(第4世代)。iPhone 5およびiPod touch(第5世代)はApple社純正の「Lightning - 30ピンアダプタを使用。

●iXJ2
入力(A /B):アンバランス
コネクター:3.5mm(1/8")ステレオミニジャック
入力インピーダンス:2.2kΩ(プラグインパワーON)、10kΩ(プラグインパワーOFF)
最大入力レベル:+6dBV
規定入力レベル:-66dBV ~ -10dBV
USB:Mini-Bタイプ
Dockコネクター:30ピンDockコネクター
電源:iOSデバイスから供給
消費電力:125mW
外形寸法:59.8(幅)×46.7(高さ)×16.6(奥行き)mm(コネクターを含む)
質量:30g
周波数特性:20Hz~20kHz +0/-2dB
S/N比:90dB以上
歪率:0.02%以下
対応機種:iPhone 4S、iPhone 4、iPad(第3世代)、iPad 2、iPad、iPod touch(第4世代)。iPhone 5およびiPod touch(第5世代)はApple社純正の「Lightning - 30ピンアダプタを使用。

◆iM2X
価格:オープン(オンラインストア価格:7,980円)
◆iXJ2
価格:オープン(オンラインストア価格:7,980円)

◆iM2X 製品詳細ページ
◆iXJ2 製品詳細ページ
◆TASCAM PCM Recorder 製品詳細ページ
◆TASCAM
◆BARKS 楽器チャンネル
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