DTM音源の名機がiPhone/iPadで復活! 「Sound Canvas for iOS」のPVが公開&撮影現場への潜入レポも

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これを待っていたんだ! コンピュータで音楽を作っていた人なら持っていない人はいなかったほどDTM音源の定番として絶大な人気を誇ったローランド「Sound Canvas(サウンドキャンバス)」がiPad/iPhoneアプリとして復活する。2015年初頭の発売を前にプロモーションビデオ(PV)がいちはやく公開された。BARKSではそのビデオ収録の現場に潜入取材を敢行、期待のアプリについてじっくり話を聞いた。

◆「Sound Canvas for iOS」PV

Sound Canvasシリーズは、90年代にローランドから発売されていたいわゆるDTM音源。当時、DTMをかじっていた人なら知らない人はいない、絶大なる人気を集めたMIDI音源モジュールだ。今回新たに登場する「Sound Canvas for iOS」は、そのSound CanvasシリーズをiOS上に再現したアプリ。11月21日~23日に行われた楽器フェアで突如デビューし、多くの来場者の注目を集めただけでなく、Twitterなどのソーシャルメディアでも多くのユーザーが言及、その期待の大きさをうかがわせる結果となった。

「Sound Canvas for iOS」のスペックは楽器フェアの会場に掲示されたパネルでこう紹介されていた。

・iOS対応のGS互換ソフトウェア・シンセサイザー
・約1,600音色/60ドラムセット、64種類のインサーションエフェクト
・SMFプレーヤー機能を内蔵(キー/テンポ変更、ループ再生対応)
・用途に合わせて使い分けできる2種類のスキンを装備
・iPad/iPhone両対応(ユニバーサル・アプリ)


▲楽器フェアの展示にはiPhone/iPadとともに鍵盤やMacBookも用意。鍵盤で弾ける、パソコンでコントロールできることもあわせてアピールされた。

その場で担当者に話を聞くと、音色数やエフェクトの機能的には「SC-88Pro」(通称ハチプロ)相当、ただしチャンネル数は16(実機は32チャンネル)とのこと。ヘッドホンで試聴してみるとSC-88Pro用のデータの再現性は高く、その音はまさに「ハチプロ」そのものといった印象。さらにiOSアプリならではの最新の機能を多数搭載しての登場となる。

■歴史的な名機もフィーチャーした最新Sound CanvasのPV


今回公開されたPVでは、「SC-55」に始まるSound Canvasの名機をフィーチャー。「SC-55」(シリアル端子のない初代モデル!)、音色数&同時発音数アップ&パート数32となった「SC-88」、そして、さらなる音色数アップ&エフェクトを強化した「SC-88Pro」が登場している。今見るとかなりゴツイ感じだが、なかなかかっこいいルックスだ。

これらの音源がMIDIデータを再生しているところを収めた画面から、スライダーと呼ばれる撮影機材でカメラがなめらかに移動すると、そこにはiPad上に再現された「Sound Canvas for iOS」が登場。ハードウェアからソフトウェアへの移行でここまでスマートな外観になるのだと実感させられるシーンだ。ほかにもiOSデバイスならではタッチ操作で手軽に懐かしのサウンドが楽しめることがわかるシーンなど、期待を盛り上げてくれるPVに仕上がっている。


▲スライダーを使った本格的な撮影が行われたスタジオの様子。音源の位置やカメラの位置を調整、モニター画面を見ながら何度もカメラ移動を繰り返し、納得いくまで収録が続けられた。

撮影が進められたスタジオでは、今回のPVで登場していないSound Canvasシリーズも見せてもらうことができた。ノートパソコンのPCカードスロットに挿入して使う「SCP-55」や、「SC-88」を1Uハーフラックサイズとした「SC-88VL」、「SC-88Pro」の鍵盤搭載バージョン「SK-88 Pro」など、当時DTM系記事を多数制作していた取材班にとっては懐かしいものばかり。ここにはないモデルの話にも花が咲き、Sound Canvasシリーズの歴史とバリエーションの広さを改めて感じる機会となった。


▲写真左は下からSC-55、SC-88、SC-88VL、SC-88Pro(発売順)。これらの音源が小さなiPhoneで再現されるのはなかなか感慨深い。


▲写真左は鍵盤搭載のSK-88Pro。写真右のPCカードにSC-55mkII相当の音源を搭載した「SCP-55」は、MIDI端子と音声出力をブレイクアウトボックスに用意。


■再現だけじゃない! 「Sound Canvas」最新モデルならではのサウンドと機能


▲SC-88Proの実機とiPad上の「Sound Canvas for iOS」で試聴、再生はMacBookのLogic Pro Xで行っている。

撮影終了後は、「SC-88Pro」の実機との比較を含め、「Sound Canvas for iOS」をじっくりチェックすることができた。試聴に際しては「SC-88Pro」実機と、iPad上の「Sound Canvas for iOS」の再生を同時にスタート、ミキサーで切り替えつつ比較するという手法がとられた。スピーカーから鳴らされるそのサウンドはまったく違いが感じられない、再現性は文句なしというレベルだ。ギターの歪みもインサーションエフェクトによる迫力のあるもので、当時のDTM音源としては最高クラスのサウンドが、iPadでもしっかり鳴っていることが実感できた。最新の大容量サンプリングデータを駆使したソフトウェア音源と比較すると、単音色では多少のチープさは否めないが、それでもiOS用の多音色のマルチティンバー音源と考えれば、十分戦える品質だ。

Sound Canvasシリーズのソフトウェア音源としては、90年代に「Virtual Sound Canvas」(VSC)がリリースされていたが、そちらはインサーションエフェクトを搭載していなかったため、物足りなさを感じることも多かった。対して、今回の「Sound Canvas for iOS」ではそうした不満もまったくなし。“Virtual”ではない“Sound Canvas”であることが納得できる出来だ。音色にはSC-88Proのほか、SC-88マップ、SC-55マップ、さらにCM-64マップも持っているということで、データの再現性に不満を持つユーザーは少ないと思われる。また、派手さはないものの、バックトラック制作には主張しすぎず楽器間のなじみもよい、ミックスしやすい音源という性格は、最新ソフトウェアでも健在だ。

「過去の資産の再現性はバッチリ」、取材班がそんな感想を持ったところで、ローランドの担当者からは、「再現性が100%かと言われると、そうではない」「Sound Canvas for iOSはSC-88Proの再現を目指したものではない」という意外な言葉が飛び出した。

ローランドでは、「SC-55」「SC-88」「SC-88Pro」とをリリース後、さらに「SC-8850」「SC-8820」といった新しい音源を出してきた。その流れを汲む製品として、その延長線上にある“今”の製品、“今のSoundCanvas”を作ったときにどういったカタチができるか? そうした問いへの答えが、iPhone/iPadで実現した「SoundCanvas」なのだと言う。

実際のサンプリングデータは銘器「ハチプロ」をはじめとした歴代「SOUND Canvas」シリーズのものを使用しているが、DSP処理などの部分は最新の技術が投入されている。中でもわかりやすいのがエフェクト、特にリバーブだという。それを聞いてから再度試聴すると、確かに音の消え際は実機よりもソフトウェアの方が高品質に感じられる。

「Sound Canvas for iOSは、なんらかの音源を完全に再現したものではありません。もちろん、GS音源としてローランドの互換音源ではありますが、1つの新しい音源、違った音源である」とさらに続ける。つまり、Sound Canvasファミリーのラインナップに連なる最新モデルが「Sound Canvas for iOS」なのだ。

その一方で、SC-55やSC-88を使っていたユーザーに「もう一度自分が作った曲を聴いていただきたい」という思いもあったという。そこで、「互換性はある程度きっちりとできるように」開発。その上で「ソフトウェアによる最先端の技術を使って、実際に再現性があるようにしていますが、音としては違いが若干出てくる」という結果になっている。

最新モデルならではのポイントは、そのサウンドだけでなく機能にも存在する。まずはMIDIファイルプレーヤーとしての機能。MIDIファイルのインポートはパソコン(Mac/Windows)とiOSデバイスを接続して、iTunesを使ってカンタンに行える。また、Open Inにも対応しているため、Dropboxなどのクラウド系のアプリを介したインポートも可能だ。

MIDIファイルを持っていないという人には、ローランドのMIDIデータ販売サービスと連動したiOSアプリ「Roland MusicData Browser」が便利。これはローランドの電子楽器向けミュージックデータの試聴・購入・転送ができるアプリで、「Sound Canvas for iOS」にデータを送る機能も備えている。インターネットでデータを購入後、すぐにMIDIデータの再生ができるというわけだ。


▲「Roland MusicData Browser」アプリでは、データの試聴・購入、「Sound Canvas for iOS」への転送が可能。

MIDIファイル再生時には、前述のキー/テンポ変更、ループ再生のほか、マイナスワン再生にも対応する。ギターやドラムといった自分が演奏する楽器のパートをミュートすることで、楽器の練習に使えるようになっているのだ。パートのミュートはギターやベース、ドラムのアイコンをタップするだけ。どの楽器がどのトラックに入っているか探すといった面倒は不要。楽器カラオケが気軽に楽しめる。

パソコンとの連携も抜かりはない。iOSデバイスにCoreMIDI対応のMIDIインターフェイスを接続したり、Lightning - USBカメラアダプタ経由でローランド「UM-ONE」などのUSB MIDIインターフェイスを接続すれば、ハードウェアMIDI音源と同様の使い方が可能。さらにMacではOSが提供するMIDIネットワーク設定機能によりワイヤレス接続も行える。ネットワークMIDIのプロトコルを使うので、WindowsでもrtpMIDIを使うことで同様の使い方ができそうだ。もちろん、iOSでアプリ間の連携を可能にするInter App AudioやAudiobusにも対応予定。GarageBandをはじめとした各種音楽制作用アプリで、音源として使用することが可能だ。


▲マイナスワンで楽器カラオケが楽しめるもう1つのスキン(左)。Macではカンタンな設定ワイヤレスでMIDI音源としての利用が可能(右)。

気になる発売日、価格は未定。担当者によれば、1月中のリリースを目指しているとのこと。対応機種も未定だが、少なくともiPhone 5以降のモデルなら大丈夫だそうだ。音楽制作をしたいというユーザーにとっては、iOS用音楽アプリの新定番の1つとなりそうなこのアプリ。発売までまだ少し時間があるが、PVを見ながら期待して待とう。


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