【インタビュー】PassCode、 南菜生が語るシングル「Liberator」の無垢な強さと自由への決意「大事なのは“この4人である”ということ」

PassCodeが3月4日、フルアルバム『INSIGNIA』から約9ヶ月ぶりの音源となるCDシングルをリリースした。表題曲「Liberator」は2026年1月クール TV アニメ『「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』のオープニングテーマ。重厚なバンドサウンドの中核を突き抜けるシャウトや壮麗なクワイアコーラスは素晴らしく、これまでの約10年の経験と、新たに進む真っ直ぐな道を重ね合わせた4人の現在地でもあるようだ。
はたして、ラウドロックを歌うアイドルなのか。アイドルの佇まいをまとったラウドロックなのか。「Liberator」はそんな概念を木っ端微塵に吹き飛ばす、痛快にして爽快な仕上がりだ。「歌詞は自分達にも重なる」とは、このインタビューでの南菜生の言葉だが、葛藤の中で確立した独自的なスタイル、ツアーやオーディエンスとの至近距離のやり取りの中で掴んだ自信、そして自らの未知を楽しみながら歩む決意が、“足枷を解いて羽ばたくの”という一節に凝縮されているようでもある。
CDシングル「Liberator」初回限定盤Blu-rayに映像収録された、日本武道館以来約3年9ヶ月ぶりのアリーナ公演『2025.11.9 PassCode YOKOHAMA BUNTAI 2025 “DESTINEX”』を振り返りながら、PassCodeの今を南菜生に語り尽くしてもらったロングインタビューをお届けしたい。
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■自然体でいられることが
■今の自信に繋がってます
──2025年11月に行われた横浜BUNTAI公演の映像を拝見したんですが、「セットリスト全曲を当てた方にオリジナル楽曲を書き下ろします」という企画についてのMCにびっくりしたんですよ。そもそもセットリスト全曲なんて当たるはずがないと笑いつつ、観客に楽曲をプレゼントすることを「豚に真珠」と表現されていたじゃないですか。あれが凄いなと思って。
南:はい(笑)。悪口が過ぎるっていう。
──悪口というよりは、観客と音楽に対しての態度が一貫して毅然としている方だなと思ったんです。ファンとの絆を大事にしつつもPassCodeの選択を委ねることはしないし、あくまでも自分達自身で道を作っていくという意志がはっきりと伝わってくるシーンだったし、そういう意志のもとに突き進んでいくライヴだと感じたんです。で、まさにそういう意味での強さがストレートに入っているのが「Liberator」だと思いましたし、理路整然としたポストハードコアをここまで直球でやった曲は、実は今までになかったんじゃないかなと。南さん自身は、どう感じている楽曲ですか。
南:2024年にバンダイナムコミュージックライブ(以下、バンナム)に移籍してからは、アニメタイアップが増えたこともあってPassCodeっぽいシャウトを抑えた爽やかな曲が多かったんですね。でも今回の「Liberator」は、『「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』のオープニングテーマをいただくときに、「PassCodeらしいシャウトやメタルの要素が似合うと思ってオファーしました」と言っていただけたとのことだったので、それなら求められていることをストレートにやろうと思いましたし、今までやってきたことをアップデートできたらいいなって。そういう意味での強さがある楽曲だと思いますし、アニメの主人公に寄り添った歌詞ではありつつ、自分達自身の歌でもあると感じられるんですよね。嘘っぽくないというか。

──歌詞のどういう部分に対して、そう感じます?
南:この歌詞は、自分達の歩みもまた表している気がしていて。PassCodeを十数年やってきて今年メジャーデビュー10周年を迎えるんですけど、振り返ってみると、最初の頃は与えられたものを必死にやっているだけだったんですよ。でも今は、私達自身から出ているものをプロデューサーの平地(孝次)さんや作詞家の方が汲み取ってくれているので、曲と自分達が合致している感じがするんです。嘘っぽくならないし、制作でも難しさを感じる場面はそんなになかったですね。
──2000年代から2010年代のポストハードコアをドンとやっている曲で、PassCodeっぽさのひとつになっている強引なトランジションも少なく、行くところは行く!という展開で最後まで駆け抜ける。こういったストレートさも、ご自身が呼んだものだということですよね。だとすれば、今の自分達からはどんなオーラが出ているんだと思いますか。
南:PassCode自体が確立されてきたんやと思います。もっと言えば、私達4人のやることがPassCodeなんやっていう順番になってきたというか。平地さんは「ライヴを観た上で、ライヴに必要な曲を作っている」とおっしゃっていたんですけど、それはつまり、“女の子が踊りながら重たい曲をやっていたら面白いでしょ?”っていう部分が抜けて、純粋にPassCodeとして確立されてきたっていうことやと思うんです。まだ公開されていない、とある映像でも、平地さんが「アイドルが激しい曲をやるのが面白いっていう感じでやってきた。でも彼女達が10年続けてきた中で、純粋にライヴでやったら面白いと思う曲を書くようになった」とおっしゃっていて。昔は、平地さんが他のアーティストに楽曲提供するとヤキモチを焼くことがあったんですよ。その曲はPassCodeでもやれるやん、みたいな。でも今はそんなことがなくなって、なぜこの曲を私達が歌うのか、なぜあの曲はあのアーティストが歌うべきなのかが自分でもわかるようになってきたんですよね。用意された個性ではなく、自分達の意志を表現する場所がPassCodeになった。それが一番大きいことかなと思います。

──アイドルとヘヴィミュージックをかけ合わせることが面白いんじゃなくて、PassCode自身が面白いんですよっていう変化ですよね。その確立を感じられたのは、いつ頃のことですか。
南:どうやろ……ここ2〜3年のことじゃないですかね。(有馬)えみりが加入して新体制になったのが2021年ですけど、今の4人で固まってからの数年で急激に、与えられているのではなく自分達の意志で進んで行くっていうことが明確になってきました。2022年の武道館公演ももちろんポジティヴな要素ではあったんですけど、そういう大きなライヴによって何かが変わったというより、あくまで自分達自身の変化だと思うんですよね。メンバーが変わると、そのメンバーにいくら技術があったとしてもチームになるには時間がかかるじゃないですか。そういう意味で、今の4人とスタッフ全員がチームPassCodeとして固まったと感じられたから、余計なことを考えず、素直な自分達でやれるようになりましたね。そういう意味でも「Liberator」の歌詞は自分達にも重なるんですよ。大切にしたいものって、自分にとっての強さになるじゃないですか。『「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』というアニメはそういうメッセージが込められている作品やと思うし、そこが、それぞれに大事なものがあるということを理解し合えているPassCodeにもフィットする部分なんですよね。それこそPassCodeの音楽性の話にも繋がる話ですけど、私達は激しい楽曲をやっているにもかかわらず、メタルを日頃から聴いているのはえみりだけなんですよ。逆に言えばヘヴィミュージックに対して本格志向になり過ぎないからこそ広いフィールドにアプローチできるのがPassCodeの大事な部分だと思っているんですけど、えみりはえみりで、メタルはこう在るべきや!っていう信念を持っていて。そういうお互いの気持ちがぶつかり合うのではなく、調和する方向で曲を作れているのが今なんですよね。型に縛られず自由でいられることの強さも、こだわりや信念を持っている人の強さもある。それがチームとしての強さに繋がるということを学んできましたし、個々に大事なものがあるから強い集団になってこられたのがPassCodeなんです。そういう意味で、「Liberator」はPassCode自身に重なる歌やなって思いますね。

──南さん自身の信念に重なる歌でもある。
南:はい。私自身は、自分のことを“何も持っていない人”だと思ってるんですよ。歌も上手じゃないし、曲を作れるわけでもない。足りない部分のほうが多い人間やと自認してるんですけど、でも私はPassCodeの一番のファンなんですよね。自分自身が何かを持っているわけじゃないけど、でもPassCodeのことを一番大事に思ってる。劣等感があるからこそ、PassCodeで表現できることがあると信じてるんですよね。それが私の強みになっているし、いろんなものを持ち過ぎていなくてよかったなって今は思ってます。何も持っていないがゆえに、いろんな挑戦ができるし。
──なるほど。先ほどおっしゃったPassCodeの確立とは、南さん自身の解放でもあるのかもしれないですね。ラベルを必要とせず、完璧ではない自分を素直に打ち明けて、自分のままでどこへでも行けるようになった。
南:そう思います。私自身の転機として思い当たることがひとつあって。……チームの人達は「あなたの思うことを正解にしていけばいいよ」と言ってくれるし、ここ2〜3年は特に、歌の重要なパートを私に任せてもらえることが多いんですよ。でも私はずっと「私でいいのかな?」っていう感覚を持っていたんです。で、バンナムに移籍して最初の曲(「WILLSHINE」2024年9月発表)の歌い出しを任された時も、こんな大事なタイミングで一発目に流れるのが自分の声でいいのかな?って思ってしまって。それまでは自分から言い出すことはなかったんですけど、その時初めて、「このパートは私で大丈夫なんですか?」って訊いてしまったんです。そうしたら「あなたの声だから意味がある箇所なので、自信を持ってやってください」と言ってもらったんですよ。私が自信を持てていなくても期待してくれる人がいるって、それはわかってはいたんですけど……改めてそのタイミングで、もっとPassCodeを信頼すべきだ、だとすればもっと自分を信じるべきだと思えました。そこが私個人のターニングポイントだった気がします。

──意外と最近のことなんですね。
南:特にライヴでは強い言葉で喋ってきたのに、本当は自信がない。でも正直に自信がないと言ってしまうと、PassCodeの南菜生はこうじゃないといけない!っていう部分が壊れてしまう気がしてたんです。だからこそ強い言葉を鎧にしていたし、事務所やチームからも「任せた」と言われて、矢面に立ち続けて……“私がなんとかしなくちゃいけない”と思って背負い込んでた部分がたくさんあったんです。でも、自分の自信のなさを告白できた時にやっと“メンバーやチームを頼っていこう”というふうに気持ちが変化したというか。そう思えた時に、本当に身軽になった感覚があったんですよ。だから今言われた通りで、身軽にどこへでも行ける状態になれて、自然体でいられることが今の自信に繋がってます。







