【ライブレポート】<WORLD HAPPINESS 2026>、15組の名演と9年ぶり復活に歓喜「幸宏の集めたミュージシャンが、どんどん立派に素晴らしくなっています!」

2026.07.09 20:00

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“音楽:文化を発信するミュージシャンの夢の共演” “森・水:命を育む、地球を抱きしめてみよう”──今から18年前、高橋幸宏がキュレーターを務める新しい音楽フェスの企画書には、この“音楽” “森・水”の他にも、“地球” “宇宙” “家族・子供” “夢・未来”といったワードが並んでいた。こうして2008年に始まった<ワーハピ>こと<WORLD HAPPINESS>。以降は毎年、都市型夏フェスとして東京都内で開催され、2017年の10周年アニバーサリー公演でその歴史にひと区切りをつけた。あれから9年。会場を野外から国立代々木競技場第一体育館(以下、代々木体育館)へと移し、2026年6月28日、<ワーハピ>が帰ってきた。

復活<ワーハピ>のタイトルは<I’m HOME>、すなわち“ただいま”。それに対して、まさしく“おかえり”と言いたくなるような懐かしさと、音楽の純粋な楽しさと、<ワーハピ>が蒔いた種が着実に育っているという感慨と、そして高橋幸宏が不在であるというちょっとツライ現実を目の当たりにしながらも、それを上回るほどに高橋幸宏と<ワーハピ>に向けられた溢れんばかりの愛とリスペクトに満ちた<ワーハピ>との再会。その様子を、総勢15組にアーティストを出演順に3ページ構成でレポートする。

まずは、開演前の様子も含め、東京スカパラダイスオーケストラ、Open Reel Ensemble、moonriders、Rol3ertのライブレポートをお届けしよう。

※初回となった2008年は信藤三雄(アートディレクター)、2017年にはいとうせいこうも共同キュレーターとして名を連ねた。
※2019年には、青森・八戸市のYSアリーナ八戸竣工記念イベントとして“出張編”ワーハピが特別開催されている。

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関東を通過した台風の影響が残り、屋内フェスと言えども交通機関の乱れも心配されたこの日。それでも、“ワーハピと言えば、晴れ男の幸宏さんがいつも雨雲をよけてくれたな”とか、“昔に豪雨の中、ピエール瀧さんが電気グルーヴのステージで「本日のスペシャルゲスト、台風11号!」と叫んで盛り上がったな”と、過去の<ワーハピ>のさまざまなシーンが頭に浮んだ観客は少なくなかっただろう。悪天候さえもが、<ワーハピ>の記憶をよみがえらせてくれる。もちろん、当時は年齢的に、あるいは生活スタイルの都合で<ワーハピ>を体験できず、初めての<ワーハピ>に心躍らせて来場した人も多かったに違いない。

そんなさまざまな想いが集った代々木体育館に、定刻の12時30分、“いつも通り”にチャイムが鳴った。そう、<ワーハピ>は学校のようなチャイムで各アーティストのステージが始まるのが恒例なのだ。“そうだ、ワーハピってこうだった”といろんな感情が沸き上がってくる中、9年ぶりの復活ながらも仰々しい挨拶やオープニングセレモニーもなく、全出演者の写真がスクリーンで紹介され、またとない一日が始まった。このスマートさも<ワーハピ>のカルチャーであり、高橋幸宏が残した情景のひとつだ。

▼東京スカパラダイスオーケストラ▼

最初にステージに登場したのは、世界中のフェスを熱狂の渦に巻き込む強者バンド、東京スカパラダイスオーケストラ。2008年の第1回<ワーハピ>でも最初にセンターステージに立っている彼らは、「さあ、楽しい一日の始まりだ! みんな歌え、踊れ、叫べ!」と「¡Dale Dale! ~ダレ・ダレ!~」、そしてアップテンポの「5 days of Tequila」と、問答無用に踊らずにはいられない2曲を連発。まさに“フェスってこうでしょ?”と言わんばかりに、開始わずか数分で代々木体育館の空気を巨大なハピネスで包み込んでいった。

「今日は大先輩のイベントということで、フレッシュな気持ちで真心を込めて演奏させていただきます!」と谷中敦が笑顔でMCをし、「みんなの声も音楽の一部になるので、演奏中もどんどん声を出してください!」と観客に呼びかける。こうして、オープニングの緊張感から観客を解き放つと、「みんな、闘うように楽しんでくれ!」と叫び、「DOWN BEAT STOMP」や「スキャラバン」などを次々と披露していく。

すると、高橋幸宏のツアーにも幾度となく参加した川上つよしが「こういう形でWORLD HAPPINESSに帰ってこれて本当に嬉しいです」と素直な気持ちを言葉にすると、「幸宏さんには10代の頃から多大な影響を受けて、この世界に入ってからも公私に渡ってお世話になりました。想い出を挙げたらきりがないんですが、その中で、幸宏さんとスカパラで一緒にやった曲をやります」と告げ、大森はじめのボーカルでYMO「SIMOON」をカバー。1999年に彼らのライブに高橋幸宏がゲストドラマーとして出演した際に演奏された曲であり、そこから高橋幸宏が1980年にスカを取り入れた「I-KASU!」を続けざまに演奏すると、早くも会場はヒートアップ。そして最後には、スカパラのライブ大定番曲「Paradise Has No Border」で会場をさらに熱狂させ、トップバッターにして最高潮の熱気を生み出していった。

▼Open Reel Ensemble▼

メインステージのライブが終わると、すぐさまステージ下手に設置されたレフトステージへのパフォーマンスが始まるという、2つのステージで交互に展開していくスタイルも<ワーハピ>特有の進行。今回もこれまでと同じように、続くレフトステージでパフォーマンスを行ったのはOpen Reel Ensembleだ。その名の如く、改造したオープンリール式テープレコーダーを楽器のように使い、そしてDJのターンテーブルのように操って演奏を行う、世界的にも類を見ない音楽グループ。テープに録音された“過去(の音)”という異国からやって来たと自称する彼らは、極めて実験的な手法を用いつつも、そこから繰り出される音楽はとてもダンサブルだ。

テープを使ってシンセ的なサウンドを放ちながら、3人のメンバーが弦楽器アンサンブルのように音を重ねていく「Bowing Ensemble」、テープをスティックで叩いてパーカッション的なリズムを刻む独自の奏法を生かした「Magnetik Phunk」、さらに「NAGRA」へと曲が進むにつれて、観客の身体も自然と動き出す。

するとリーダーの和田永が、その場でリアルタイムにマイクへ向かって「O・TA・GI・RA」とオープンリールに録音。観客が“何を言ってるのだろう?”と思っているところに、そのテープを逆回転させて「A・RI・GA・TO (ありがとう)」というメッセージを送る遊び心も。そして、14年前に彼らのレコーディングに参加した高橋幸宏のボーカルトラックを持ってきたことを観客に告げると、スクリーンにはレコーディング時の貴重な映像が映し出された。

そのテープを再生しながら「Gone」を披露。時空を超えた高橋幸宏の歌声と、3人のリアルタイムなライブ演奏を融合させるというOpen Reel Ensembleのコンセプトを体現するパフォーマンスに、観客からは惜しみない拍手が送られた。

▼moonriders▼

続いては、早くもセンターステージにレジェンドバンド、moonridersが登場。中でもリーダーの鈴木慶一は、moonridersとしてはもちろん、ソロや高橋幸宏とのバンドであるTHE BEATNIKSなど、さまざまな形で<ワーハピ>皆勤を果たす数少ないアーティストの一人だ。その鈴木慶一がステージ上手に立ち、隣には座ってバイオリンやトランペットを演奏する武川雅寛、そしてギター白井良明、下手にはベースの鈴木博文が並ぶ。その後方に、ドラムの夏秋文尚、そしてサポートの2人、キーボードの佐藤優介と、ギターが“スカート”こと澤部渡という7人のステージだ。

「WORLD HAPPINESS!」──そう鈴木慶一が叫ぶと、佐藤優介がYMO「TECHNOPOLIS」のイントロを織り交ぜながら、そのまま「VIDEO BOY」のフレーズへと移り変わっていく。かつての<ワーハピ>でも演奏された、moonridersのラジカル性、ニューウェーブ/アヴァンギャルド感、ポップスセンスが融合した代表曲に、すぐさま客席から大きな歓声が上がる。「楽しんでいってください」という武川雅寛のMCから始まった「Who’s gonna die first」。そのエンディングで鈴木慶一は、「We don’t wanna die yet!」と力強くと付け加え、それは「まだまだ音楽を作り続けるぞ」という宣言のように感じられた。

ひと呼吸をおき、鈴木慶一は「高橋幸宏くんがよく歌ってくれていた曲をやります」と「9月の海はクラゲの海」を歌い、続く「駅は今、朝の中」では鈴木博文が力強いボーカルを披露。そして「彼女について知っている二、三の事柄」へ。ラストを飾るライブ定番曲「Kのトランク」では鈴木慶一が「みんな一緒に!」と声をかけ、両手を耳に手を当てると観客の合唱。ステージと客席とが一体のハピネスな時間を作り上げる。アウトロでの“駆け足”ステップのパフォーマンスではその健在ぶりを見せつけてくれるなど、8月26日に発売される約4年ぶりのアルバム『e.d morrison』への期待を膨らませてくれるライブであった。

▼Rol3ert▼

次にスポットライトを浴びたのは、2025年に本格的な音楽活動をスタートさせた20歳の次世代アーティスト、Rol3ert。透明感のある歌声とグローバルなメロディ/ワードセンスで国内外から注目を集める彼は、バンドを従えてレフトステージへ。「代々木! 初めまして。よろしくお願いします」という挨拶から「savior」を歌い始めた。現代的なオルタナティヴ感と’80年代洋楽風のメロディ&サウンド、そして英語詞というRol3ertの世界観は、<ワーハピ>のステージでも十分すぎる輝きを放っていた。

キーボードを弾きながら歌う「Boy」や、ミュージックビデオのYouTube再生回数が56万回を超える「meaning」、ダンサブルながらアグレッシヴなサウンドで孤独や不安を英語と日本語を混ざり合わせて歌う「(how could i be)honest ?」を次々と披露する中、MCでは「何でレジェンドたちの中に自分が入っているんだろう?」と語り、観客の笑いを誘っていたが、それがおそらく率直な気持ちだったのだろう。

ただ思えば<ワーハピ>は、ビックネームになる前のサカナクション(2010年)や星野源(2011年)といった(当時の)若手アーティストたちを、他のフェスより平均年齢がやや高い音楽的に成熟したリスナーに広く紹介していく場としても知られていた。9年ぶりの開催となった今回もまた、Rol3ertをはじめ、この後のレフトステージにはニューカマーたちが登場。<ワーハピ>の意義を継承すると同時に、こうした若い才能に大いなる希望を感じさせたくれたことは大きな喜びであった。奇しくもRol3ertが最後に歌った曲は“希望”を意味する「HOPE」。今後のさらなる飛躍を感じさせるステージだった。

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