【インタビュー】中島卓偉、全16曲収録アルバム『GLITTER』と革新的リリース形態に理想像「たったひとりの人生を狂わせられたほうが光栄」

中島卓偉が新たな音楽販売プラットフォーム“SerialTune”の第一弾アーティストとして7月29日、独立第三弾アルバム『GLITTER』をリリースした。同サービスでは、高音質音源のダウンロード販売に加えて、7月5日に行なわれたばかりのSURFACEとの対バンライヴ<さぁ!大器晩成!>の一部が驚くべきスピード感で限定特典映像としてパッケージされる。
“SerialTune”は従来の定額ストリーミングサービスでは体験できないクオリティの高さで提供されるほか、アーティストへの高い収益還元モデルであることも大きな特徴だ。妥協の無い作品づくりを徹底してきた中島卓偉のクリエイティヴや独立性の保持に有意義なシステムであり、ファンにとっても作品そのものの価値を直接購入しアーティストを応援できる、いわば原点に忠実なシステムとなっている。
そしてリリースされたアルバム『GLITTER』は“きらめき”や“輝き”を意味する言葉を冠したものであり、グリッターロック=グラムロックを示す言葉でもある。タイトル曲「I’M A GLITTER」はブギーのリズムやキャッチーなメロディ、コーラスやホーンを大々的に採り入れた派手なサウンドが特徴のナンバーだ。
ハロー!プロジェクトへの提供曲セルフカバーを含む、全16曲という大ボリューム感で届けられた『GLITTER』に込めた想いとは? SerialTuneの理念に共鳴したのはなぜ? アーティスト中島卓偉、いち人間としての中島卓偉が今、思い描く理想像とは? ロングインタビューで迫った。

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■ミュージシャンが聴いてるのと同じ環境で
■ファンの方々にも聴いてほしい
──7月29日、新たな音楽販売プラットフォーム“SerialTune”にて、ニューアルバム『GLITTER』のダウンロード販売がスタートとなりました。SerialTune第一弾アーティストに抜擢されたことをどのように受け止めていますか?
卓偉:第一弾アーティストに決まったのは、僕のビジネスパートナーをはじめ、いろいろな人との巡り合わせもあってたまたま、という面もありまして。SerialTuneが始動するタイミングに、もともとこの夏リリースすることが決まっていた僕のアルバムがちょうどハマッたんだと思います。もっと掘り下げていくと、レコードからCDへ、その後CDから配信へと音楽を取り巻く環境が変わったこの時代の中で、配信のパーセンテージがおかしいというか。そこにはCD時代から疑問を感じていたんですよね。
──アーティストへの利益還元率が不当に低かったと?
卓偉:というのも、アマチュアの頃からレコーディングはしていて、 1曲作るのにどれだけお金が掛かるかは10代の時から分かっていたので、“これでシングル1000円、アルバム3000円っておかしくないかな?”と。さらに、この40数年もの間、値段が変わらなかったわけじゃないですか? 社会情勢がこれだけ変わり、消費税も変動し、今で言うとこれだけジャパンマネーが弱い時代に、買う人ももう麻痺して“そういう値段のものだ”という認識が強く残ってしまっていて。デビュー当時から“危険だな”と思ってはいたんですよね。
──デビュー当時ということは、27年も前から危機感を抱かれていたんですね。
卓偉:だからこそ、音楽がCDから配信へ主流が変わった時に、“垂れ流しにしかならないのに、何の意味があってこうなっちゃったんだろう?”という疑問がより強くなりまして。僕の後輩世代になってくるともうCDすら作れない、リリースすら危うくなって、もっと言うとドラムもギターも生でレコーディングできない状況になってしまっている。“これは本当にマズいぞ”と。アーティスト側へちゃんと利益還元される形にするために、先ほど言ったように僕のビジネスパートナーとか、いろいろな人とミーティングを重ねて、やっとここまで辿り着いたという感じです。還元されるというのは懐事情の話ではなくて、”その次に生かすため”ということなんですね。

──高い利益還元率に加えて、SerialTuneは高音質であることも大きな特徴です。CDや通常のストリーミングサービスよりも音質が良く、“こういう音で聴いてほしい”というアーティストの理想に近い形でそのまま届けられるというメリットもあるそうですね。
卓偉:たとえば、ハイレゾ(ハイレゾリューションオーディオ:高解像度・高音質な音楽データ)配信が始まった当時、坂本龍一(『ハイレゾ音源大賞』(2016年スタート)の初代セレクター)さんが推されていましたよね。
──はい。「いい音楽があって、いい録音があって、それをどうやってベターに再生するか」ということをおっしゃってました。
卓偉:そう。我々アーティストがレコーディングスタジオで聴いているときの音の波形の大きさっていうものがあるんですね。ところが、 CDになるとそこからすごく狭まるし、奥行きも圧縮されてしまう。僕自身、1stシングルをレコーディングした若かりし頃、スタジオで完成した音を聴いて“カッコいいな”と。その印象のままマスタリングもしたんだけど、実際に家に帰ってCDで聴いたら“あれ?”と。当時は今ほどマスタリングのことは分かっていなかったにしても、耳は正直なので“スタジオで聴いた音のレンジの広さがなくなった。なぜこんなに音が詰まってしまっているんだろうな?”と疑問でした。音の配置がグーッと寄って塊になって、窮屈な満員電車のような音になってしまったというか。
──レコーディングスタジオで録った音が、そのまま再現されないと。
卓偉:僕がミックスで注文した時はちゃんと音に隙間を作っていたはずなのに、それが無くなってしまうことにずっと違和感があったんです。これまでのキャリアの中で僕は、わざと音を大きめにマスタリングしたり、逆に音を小さめにしてボリュームを上げるとカッコよく聴こえるようにしてみたりとか、いろいろ試してきてはいるんですが、やっぱりそもそもの音の波形がマスタリングの段階で変わってしまうので、“どうにかならないのかな?”とずっと思っていたんですよ。ミュージシャンが聴いてるのと同じ環境でファンにも聴いてほしいというのは、音をちゃんと作っているミュージシャンみんなが思っていることですから。そこは絶対にマストで、とSerialTuneの方にお願いして完成まで持っていったつもりです。

──実現に至るまでに障壁はありましたか?
卓偉:いい音にしていくことによって値段も変わっていくんでしょうし、簡単ではなかったのは事実です。余談ですが、うちには子どもが2人いて、小さい時からレコードをよく聴かせてて、CDとの聴き比べもさせてきたんですよ。上の子がCDを聴いて言ったのは、「音が全部整列してる感じがする」と。レコードは「ボウリングのピンみたいな感じで並んでる。歌が一番前にあって、その後ろに他の音たちが配置されていて、天井の高い感じがする」と説明したんですよね。
──その感性もすごいですね。
卓偉:いや、子どもは正直だということだと思うんですよ。たとえば、マイケル・ジャクソンのレコードを聴かせたら「YouTubeで聴くよりも、いろんな音が聴こえる」とか言うわけです。やっぱり子どもが聴いても大人が聴いても一致するような良い音で届けるには、とにかくミュージシャン自身がレコーディングスタジオで聴いている音にこだわらなきゃダメだと。
──シンプルで重要な基本ですよね。そこに立ち返った音楽体験をもたらすのがSerialTuneと言うこともできそうです。
卓偉:もっと遡って自分の記憶を信じてお伝えすると、僕は毎年誕生日にザ・ビートルズのレコードを親父に1枚買ってもらっていたんですね。小学校4年生だった1988年はちょうどレコードからCDへの変換期で、福岡のレコード店に行ったら、親父がCDの『ラバー・ソウル』とレコードの『ラバー・ソウル』のふたつを持って、「どっちがほしい?」と僕に訊いたんです。子どもながらに「大きいほうがいいから、こっちで」とレコードのほうを選んだら、親父は「CDのほうが、音がいいぞ」と言ったんですよ。僕は「こんなにちっちゃいけど、こっちのほうが音がいいのか?」と一瞬悩んだんですよね。
──たしかにCDが出始めた当時は、音にノイズがなくてクリアだということがメリットとして言われていました。
卓偉:親父は他にもセールスポイントとして「曲の頭出しができる」ことを挙げたんです。「頭出しって何?」と尋ねると、「アナログ盤のように針を動かしたり盤面をひっくり返さなくても最後まで全曲聴けるってことだ」と。 で、「それは確かに便利かもしれないな」と一瞬思ったんですが、「いや、それでもこっちがいい」とアナログ盤を選んだんです。

──卓偉少年はなぜレコードを選んだのでしょう?
卓偉:親父がステレオにCDデッキを組み込んだり、CDラジカセを買って、クラシックやジャズを聴くようになってたんですよ。確かに便利そうには見えてたんですけど、全然音がいいと思わなかったのをハッキリ覚えています。レコードのほうが絶対にダイナミクスがあるし、音量レベルの落差があった。たとえばレコードを聴いてると、“サビになると音がドーン!と大きくなるから、この曲はちょっとボリュームを下げなきゃ”とか、子どもながらに僕は無意識にそういうことをやっていて。僕も自分の子ども同様、10歳の時にそれを感じたという絶対的な記憶が残っているんですね。巡り巡って、そこから30数年経った今、世界ではレコードセールスのほうが戻ってきているという状況もある。僕も直近3枚は全てアナログ盤を受注生産でリリースしているんですけど、出すたびに受注枚数がどんどん膨れ上がってきていますし。1枚目と比べると『GLITTER』は倍の受注があるんですよ。
──ファンの方もアナログ盤に魅力を感じていらっしゃるんですね。
卓偉:“何が便利か?”ということの答えは未だに出ていないと思うんですけど、何より見た目が良ければ音も良いというところに、もう一回みんなが行き着いたのがすごくいいことなんじゃないかな。『GLITTER』のアナログ盤は2枚組なのでA・B・C・D の4面あるんですよ。全16曲入りなので片面4曲ずつ。これが全12曲だと片面につき2〜3曲なのでゆっくり聴いていられないじゃないですか。盤面をひっくり返すのは4曲くらいがちょうどいいんですよね。で、4面に振り分けることを想定すると、頑張って16曲入れようと。
──ということは、全16曲の曲順もアナログ盤の4面を意識しつつ決められたんですか?
卓偉:そうなんです。たとえば「光よ」はB面の1曲目になるように、とか。
──その「光よ」が名曲で、メロディ展開が美しくて聴き惚れました。たしかにここを起点として、冒頭からのアグレッシヴな空気感が一変しますよね。
卓偉:ファンの方々も「アナログ盤1枚にオープニングとエンディングが2回ずつくる。全部で4回それがくるってすごいことですね」と言ってくれています。
──SerialTuneでは音源だけでなく、限定特典映像もパッケージに含めてリリースされるんですよね。
卓偉:特典というのは要するにお得感を出すということなので、ドキュメンタリー映像を付属する人もいれば、アコースティックライヴ映像を付属する人もいるし、そこに新曲の音源を付けてしまおうという人もいる。やり方は様々ですが、今回僕がこだわりたかったのはスピード感でした。7月5日の対バンライヴから7曲がいち早く観られる・聴ける。そういうライヴ映像を特典として付けています。もちろん時間が経って、“この特典っていつのライヴだろう?”ってなるんですけど、だとしても中島卓偉の活動の今を出来たてホヤホヤの状態で配信できるというタイムリーさ、それをまず証明したかったんです。
──ファンの方にとっても、リアルタイムをアーティストと一緒に生きている喜びが感じられる試みだと思います。
卓偉:これは独立事務所だからできるという面もあるかもしれません。僕は自分で会社を持っていて、ミックスや映像編集など関わる全てのスタッフに素早く作業をしてもらえることができたので。今までだったらどんなに早くてもやっぱり3ヶ月は掛かっていたと思うんですよ。だから、“これだけ早く出来るんだ”ということを今回、セールスポイントにしたかったのはありますね。







