ストロークスやザ・ホワイト・ストライプスと共に、世界のロックシーンにおけるニュー・メタルやポップ・パンクによる独占状態の牙城を崩した立役者、ザ・ヴァインズがついに待望の初来日を5/19(水)渋谷CLUB QUATTROにて果たした。

“ニルヴァーナmeetsビートルズ”と喩えられる彼らだが、フロントマンのクレイグ・ニコルズはその“天才と狂気紙一重“のキャラクターまでをもカート・コバーンと比較されるほどだ。しかし、そのトラブル・メイカーぶりも知る人ぞ知るところ。過去2度の来日予定はいずれもキャンセル。2ndアルバム『ウイニング・デイズ』の発表タイミングの今回でようやくかなった来日公演だった。だが、いざフタを空けてみると、それは多くのファンにとってはほろ苦い後味を残すものとなった。

代表曲の一つ「アウタザウェイ」からライヴは滑り出し、ファンはこらえ切れなかった思いを爆発させるように盛り上がろうとした。しかし、のっけから音のバランスが悪く、当のザ・ヴァインズの演奏もバラつきが目立つ。明らかにリハーサルもウォーミング・アップもしていない。クレイグはもはやトレードマーク化した“顔歪め”でヤケクソ気味に歌を振り絞るが、しかし、それは“狂気から生まれる緊迫感“とはやや様相を異にする。そして、その微妙な違和感は時が流れるにつれ徐々に大きくなっていった。

“fuck!” “shit!“。しまりのない演奏にキレるクレイグはMCで悪態を憑きまくり、挙げ句の果てには「オマエらの国、サイテーだな!」とまで言い放つ始末。それに対し、英語の分からない観客が「イエーッ!」などと言って盛り上げてしまう光景は目も当てられなかった。これを面白がったクレイグは「オマエら言葉わかんないだろ」とばかりに悪ノリを続けたが、これにキレた日本人女性の観客は「クソはアンタの方よ!」と英語で応酬! ここでクレイグ vs. 客席のしばしの口論が起こり、会場には冷ややかに白けた空気が流れた。これで完全にザ・ヴァインズは緊張の糸を切らせてしまった。ベーシストはクレイグの態度に怒り、ベースを叩きつけた挙げ句退場。ギタリストとドラマーも続いて退場し、ライヴはいきなりクレイグのアコースティック・ライヴ状態に。やがて3人がステージに戻って来たものの、最大の代表曲「ゲット・フリー」ではイントロの途中でクレイグがギターを降ろして急遽中断。結局、約50分弱、彼らの演奏に精彩が戻ることはなかった。

このツアーの直後、ザ・ヴァインズは母国オーストラリアのシドニーのラジオ局のショウでも、クレイグが写真撮影を許可をしたはずの女性カメラマンにキックを食らわせ、怒ったベーシストが退場し、なんと1曲で演奏を中止。翌日の公演もキャンセルさせている。この事実からも分かるように、今回のザ・ヴァインズの極東ツアーは嵐の大波乱だったのだ。

確かに考えようによっては、僕たちは貴重な瞬間に立ち会えたのかも知れない。だが、これを“スリリングな狂気が生んだ伝説“と取るか”気の抜けたただのわがまま“と取るか。判断するのはあなた次第ではあるのだが……。(取材・文●沢田太陽)