アルバム『ユグドラシル』ロング・インタヴュー1

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バンプ・オブ・チキンの最新アルバム『ユグドラシル』は、
バンドの生命線の太さを感じさせる、永遠の傑作と呼ぶにふさわしい内容だ。

歌詞もサウンドも今まで以上にシリアスで重いが、不思議と息苦しさはない。
むしろ、聴き終えた後に訪れるのはすさまじい覚醒である。
価値の重いものを片方に乗せ、沈む天秤のように、
『ユグドラシル』は聴く者になにが大切かを語りかけてくれる。

思うに、このアルバムにおいて、バンプにとっての音楽の意味は大きく変わった。
おさななじみだった4人が一緒に楽しむための手段ではなく、
人生を賭ける目的そのものへと音楽が「完全に」深化を遂げたのだ。
前作『jupiter』から2年半のあいだに、4人に何が起きたのか。


「歌が、曲が、こうしてくれああしてくれっていう声がたくさん聞こえたから
それを再現するために練習するしかなかったですね」
▲左上:藤原基央(Vo&G)、右上:升秀夫(Dr)、左下:直井由文(B)右下:増川弘明(G)
升(Dr): 例えば直井くんなんかは、すごくスタジオにいるんですよ。一日の半分もスタジオにいるっていう。一緒に曲を作ってく上でそういう姿を見るのはすごく刺激になりましたね。

直井(B): うん。練習って言っても、曲の練習じゃないんです。運指とか、グルーヴを深めるための、なんでもない練習をしてましたね。もう、指の筋肉を鍛えるための練習ですよ。野球だったら素振りだとか、走りこみだとか、きついほうの練習に近いです(笑)。『jupiter』の頃は、藤くんの曲を聴いて、なにも考えないでプレイできたんです。簡単に出てきたベース・ラインを変えることもなく、レコーディングでもぱっとやってしまうことが多かったんですけど、今回は考えました。歌が、曲が、こうしてくれああしてくれっていう声がたくさん聞こえたから。それを再現するために練習するしかなかったですね。だから、ベース・ラインをつけるのが怖くなりましたね。

――練習すればするだけ怖いっていうのは、独特の感覚ですね。

直井: うん。“ああ、こんなにやろうとしてることはすごいことなんだな”っていう。はじめて音楽に触れられた気がするんですよね。そういう怖さを知った分、やりがいもあるし、幸せですね。

増川(G): ぼくの場合、根源的な部分で“人としてどうするんだ?”みたいな選択というか、メンバーで話し合いをしたこともあったんですけど……そういう話し合いをする時期にバンドも曲も来ていて、自分がそこに追いついてない部分、気づいてない部分もすごいあって。そういうことを理解する時期ではありましたね。

――曲によっていろんな音が鳴ってるし、アレンジもリズムパターンも豊富ですが、総楽器数はどれくらいですか?

直井: 藤くんがシーケンスで作った曲なんかは、“藤くん、この楽器なに?”とか思ってて(笑)。「同じドアをくぐれたら」って曲とか、これをどうやってギターで再現するのかなっていう。

藤原(Vo&G): ギターはギターで総称するとして、アコースティックギターと、ガットギターと……。

増川: マンドリン。

藤原
: あと、ブズーキ。弦楽器はそれくらいですね。奏法もいろいろです。曲が求めている音をどうやったら出せるのかって考えたら、その楽器しかないっていう感じで。

――楽器ごとにコードが違うわけで、いろんな楽器を弾くことで再びギターに戻ると、今までとは違ったアプローチが見つかったりしましたか?

藤原: ああ、ありましたありました。要するにギターから見れば変則チューニングなんですよ、マンドリンとかブズーキとか。だから、チューニングの違う楽器に触れて、今度はギターも変則チューニングで弾いたりしましたね。今まではそういうことをしてなかったんだけど、そういう曲がいくつもあります。サウンド・バリエーションは増えたと思います。
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