ANGRAのスーパー・ギタリスト、キコ・ルーレイロがバンドとソロのすべてを語る

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ブラジルが誇るシンフォニック・スピードメタルの雄ANGRAの来日公演が始まる。

あのメロディックでありながら難解な超絶メタルをどのような表現で日本のファンに見せてくれるのか。公演を直前に控えて興奮は募るばかりだ。

そして、そのANGRAのリードギタリストであるキコ・ルーレイロがソロアルバムをリリース。日本のファンにとって二重の喜びになった。

キコに、ソロアルバムのこと、そしてANGRAの日本公演に向けての抱負を訊いた。

この記事を読んだら、さあコンサート会場へ急げ!
ソロ・アルバム


「NO GRAVITY」
VICP-62973 \2,520(tax in)
2005年2月23日発売

01.ENFERMO
02.ENDANGERED SPECIES
03.ESCAPING
04.NO GRAVITY
05.PAU-DE-ARARA
06.LA FORCE DE L'AME
07.TAPPING INTO MY DARK TRANQUILITY
08.MOMENT OF TRUTH
09.BEAUTIFUL LANGUAGE
10.IN A GENTLE WAY
11.DILEMMA
12.FELIZ DESILUSAO
13.CHORO DE CRIANCA




キコからの緊急メッセージ

キコ・ルーレイロから、日本公演を直前に控えてのメッセージ。画像を
来日公演スケジュール

(NIGHTWISHとのジョイント)
3/12(土)大阪 なんばHATCH
3/13(日)福岡 ZEPP FUKUOKA
3/14(月)広島 広島CLUB QUATTRO
※ANGRAのみ(NIGHTWISHは出演なし)
3/16(水)東京 SHIBUYA-AX
3/17(木)東京 SHIBUYA-AX
3/18(金)名古屋 ZEPP NAGOYA
■オフィシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/
angra/



──世の中にギターアルバムはたくさんあるけど、これほど色々な音があってアイデアに溢れているアルバムはない。アルバムの出来には満足してる?

キコ・ルーレイロ(以下、キコ):最高の気分だよ。ソロアルバムを作るということは夢だったんだけど、ANGRAの活動が忙しくてなかなかできなかったんだ。オレの持ってる様々なスタイルや、ヘヴィメタルだけじゃなく色々な趣向をみんなに聴いてもらいたいという思いで作ったんだ。それを分かってもらえて嬉しいよ。

──このソロアルバムは、angraのアルバム『TEMPLE OF SHADOWS』と同時進行で作ってたらしいけど、どんな進行だったの?

キコ:長~いアルバムを作ったというカンジかなぁ。プロデューサーのデニス(・ワード)も“どうかしてるよ”って言ってたね。でも、『TEMPLE OF SHADOWS』は曲作りとギターの録音が終わったら、あとはエドゥの歌入れだけで、ミックスまでは時間があったんだ。その間に集中して作ったんだよ。曲作りやギターを弾くこと、スタジオでの作業は僕にとって楽しいものだから、ぜんぜん苦にならないよ。

──ソロアルバムで一番表現したかったことは?

キコ:ギターの奏法的なことはもちろんだけれど、僕はブラジル出身だから、ラテン風なものやブラジルらしさを表現したかった。今回はアコースティックギターを弾いた曲が2曲あるんだけど、「09.BEAUTIFUL LANGUAGE」を聴けばそれが分かってもらえるよ。ヘヴィな曲の中でもパーカッションを入れてみたりして、ラテンのフレーバーを感じてもらえるようにしてる。とにかく、自分の音楽性をフルに見せることができたと思うよ。

──ギターソロの部分はすべてインプロビゼーションなの?

キコ:ハーモニーとメロディはピアノで譜面に書いてる。ソロはほとんどがインプロビゼーションだね。それでフレッシュさというか、スポンテニアスな展開が楽しめるんだ。でも、それができるようになるまでは、かなりの練習が必要。プレイバックに合わせて何度も弾いてみるんだ。でも、できるようになると、これに勝る芸術的なことはないと感じるよ。

──一つ一つの音を聴き取れないほど速いあんなパッセージでよくハモれるなと感心するんだけど。

キコ:自分で弾いてるから大変じゃないよ。速いけど、僕にとっては自然な速さだから、それを音を変えて弾くだけだからね。でも、二人でやるとなると大騒動なんだ。どちらかが考えた難しいフレーズにもう一人がハモリを重ねる時は、まずどういう風に弾いたのか教えて覚えてもらわなきゃならない。それからハーモニーを変えてだから、これは大変な作業になる。だから、ANGRAのレコーディングでは、僕一人でハモリの部分もレコーディングしてるんだよ。ライヴではラファエル(・ビッテンコート)と弾き分けるんだけどね。

──常々疑問に思ってたんだけど、ギターのフレーズって、ピッキングで弾くかレガードで弾くかで大きく表情が変わるよね。手クセも大きく関係すると思うんだけど、ライヴでハモルときって、そういうのも二人ですべて合わせてるの?

キコ:ものすごく速く複雑なフレーズなんかは、あらかじめ譜面に書き出して、ピッキングする部分とレガードの部分をすべてラファエルに説明するんだ。ラファエルはそれを猛練習するわけさ。で、バンドでリハーサルする前に、ギタリスト二人でそのへんのすり合わせをするんだ。だから100%に近づくように合わせてはいるんだけど、まったく同じにはならないね。でもその微妙なズレもライヴの味わいってことだから。

──このアルバムに入っているラテンなどの色々な音楽的なエッセンスは、ブラジルで生活している人にとっては自然なものなのかな?

キコ:音楽っていうのはブラジルのカルチャーの大きな部分だからね。でも、僕は一般的なロックギタリストとは影響の受け方が違うかもしれない。普通のロックギタリストは、ブラジルのトラディショナルな音楽をあまり好きじゃない、というかダサイと思っている人が多いんだ。でも、僕は母の影響で小さい頃からブラジルのポップスやボサノバを良く聴いていたし、アマゾンなんかのブラジル各地に出かけてはCDを集めて勉強したんだ。それが僕の脳みそに蓄積されているんだよ。それと、ブラジルというのはカルチャー的にすごく強力なものを持っていると思うんで、それを世界中に紹介したいという気持ちもあるんだ。すごく誇りを持っているからね。

──アルバムにはアコースティックギターも多く入っていますね。エレキと比べてアコースティックギターの面白いところは?

キコ:まったく別の楽器だね。左手の運指から右手の動かし方まで全部変えないと、アコースティックギターからは良い音が出せない。もっと時間があれば、じっくり練習したいんだけどね。ブラジルのアコースティックギターってナイロン弦のことなんだよね。ブラジルはスペインやヨーロッパのクラシカルミュージックの影響が大きくて、それとブラジル独自のグルーヴが合わさったショロっていう音楽がある。僕は今それに興味を持っていて、その要素を取り入れた曲「Choro de Crianca」も入れている。

──「Choro de Crianca」はとても良い音が鳴っている。

キコ:Choro=ショロで、英語では“cry(泣く)”っていう意味なんだ。だから英語訳では“Children's Cry”となって、子守唄みたいな曲調になってるだろ? もう一つの意味は、“ショロを勉強して一曲作ってみたんだけど、まだまだダメでしょ、子供でしょ”っていう意味も込めたんだ。

──最後にギターの魅力、メタルミュージックの楽しさを教えてくれる?

キコ:難しい質問だね。ギターというか音楽をプレイすることが、なによりも僕にとって重要なことなんだ。もう21年間もギターを弾いて、自分が好きで選んだことをずっとやってきている。かなりの時間を費やして、こうして音楽を続けてるんだ。スタジオにいることも、友達や家族と離れてツアーして回ることも、どれも僕にとっては楽しくて、何の苦にもならないんだよ。これで答えになってるかな?

──angraのコンサートが迫っているね。どんなコンサートにしたい?

キコ:『TEMPLE OF SHADOWS』の曲をいっぱい演るよ。ツアーをいっぱいやってきた後だから、バンドもタイトになっているし演奏も充実している。曲が簡単に演奏できるものじゃないだけに、時間をかけて馴染んできた後だから、音楽の流れに身を任せられるし、お客さんとのやり取りを楽しむ余裕もできてきたので、すごくいいショーになると思うよ。


>>キコによるアルバム全曲解説はコチラ

取材・文●森本智
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