BUCK-TICK、夢か現実か……ゴシック様式美を見せつけたツアー、追加公演レポ

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“ゴシック劇場”というテーマのもとに制作された、BUCK-TICKにとって初のコンセプト・アルバム『十三階は月光』。オフィシャル・サイトで公開されている櫻井のコメントによれば「BUCK-TICKらしいのか、らしくないのか分かりませんが…」とのことだが、一聴してその世界をヴィジュアルでイメージできる作品である。このアルバムを細部に至るまで視覚的に再現したツアー<13th FLOOR WITH MOONSHINE>の追加公演、6月30日(木)のNHKホールでそれを確認した。

ほの暗い照明の中、ステージ後方の中央にそびえる深紅の階段、その横には燭台が並び、天井にはシャンデリアを模した巨大なセットが浮かび上がる。舞台の幕開けを告げるインスト曲「ENTER CLOWN」、ジワジワと暗黒の夢想へと誘うような「降臨」と続く、アルバムと同じ流れのオープニングで一気に現実感覚を引き剥がされる。そして、映画『IT』に登場する不気味な道化師にも似たクラウンが登場、ジャグリングを披露する横でソファに腰をかけた櫻井がニヤリとしながら「そんなもんかい?」と挑発してみせる。コートの裾をゆったりと翻し、美しい旋律の中で両手を宙に泳がせながら歌う「Tight Rope」、マイク・スタンドに妖しく指を這わせて魅せる「誘惑」など、歌声も去ることながら視線から指の先まで圧倒的な表現力を放つ櫻井の存在感を再認識させられる場面だった。

そしてライヴ終盤。純白のチュチュを着たバレリーナがメンバーの間を∞を描くように舞う「Passion」、愛しげに人形を抱きしめながら陶酔の面持ちで歌われた「DOLL」、蝋燭を手に自虐的なパフォーマンスで目を釘付けにさせた「月蝕」と、めくるめく演出が続き、本編が終了した。そしてアンコールでは、朝陽のように客席を眩しく照らす照明の中で珠玉のロマンティック・ナンバー「die」を披露。暗く重たい後味のする夢から醒めたような感覚に浸り、「悪の華」でリアルなライヴ空間の熱気に包まれるも、2回目のアンコールのラスト「DIABLO」で再び暗転。ゴシック劇場は終わっていなかった。

夢なのか現実なのか錯覚に陥らせ、現実のような夢を徹底した様式美で見せつける。それとともに、ヘヴィかつタイトなヤガミと樋口のリズム隊、トリッキーなサウンドを繰り出す今井と、艶やかさと攻撃性を併せ持った星野のギターとの絶妙なコントラストという、不動のメンバーによるアヴァンギャルドなバンド・アンサンブルで聴かせる。これぞBUCK-TICKの“らしさ”を見た気がするステージだった。

文●望木綾子
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