<Glastonbury '05>ひたすら我が道をゆく、ベイビーシャンブルズ

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今のベイビーシャンブルズを一言で表すならば、まさにカオス&ディスオーダー。リリースもツアーも、とにかく全ての「予定」を狂わせ続けている。もっとも、そのカオスの台風の目にいるピートの囚われぬ生き方こそが彼の音楽そのものであり、理屈を超えた素晴らしい表現とは何かをマーケティングや宣伝活動にまみれた音楽業界に叩きつける。

だから。ピートのその野生っぷりを何より愛すからこそあえて言おう、この日のピートは「普通」だった。今や誰よりもゴシップ誌をにぎわす男のお手並み拝見、と思しき大多数のテンションの低い客たち。が、そんなヌルさを吹き飛ばす破壊力こそピートの得意としてきたもの。だからこそグラストの「ピースフル」な空気をピートが切り裂くさまを期待するファンもいただろう。少なくとも、私はそうだった。だがピートはこの日、破壊ではなく「普通」の道を選んだ。

今やUKロック随一のカリスマ・スターであることを証明するように、Other Stageには大観衆が詰め掛けている。パナマ帽をふわりとかぶってステージに登場した、ピート。バンドの演奏はお世辞にも上手いとは言えず、ふとリバティーンズのデビュー当時のどしゃめしゃな演奏を懐かしく思い出す。そこにふわりと乗るピートの歌声は、投げ捨てるような切り裂き系ではなく、この日はどこまでも柔らかい。「キラマンジャイロ」などでは詰め掛けた大観衆から合唱さえ起こり、突然ステージからピートが観客席にダイヴしたり。元気な姿を確認しただけで正直、私は満足。その一方で、あまりに「普通」にライヴが進むさまにはスリル不足を感じたりも。だが、最後の「ファック・フォーエヴァー」を見ながら、これこそピートなのだとふと合点がいった。誰からの評価も期待も放棄し、ひたすらわが道をゆく――これぞピートの本質だ。ゆえに今の彼がある。今回の「普通」のライヴは、だから、ものすごく貴重な体験だった。

文●妹沢奈美

BARKSグラストンベリー・フェスティヴァル特集
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BAKRS夏フェス特集2005
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