<FRF'05>フー・ファイターズ、再び頂点まで登り詰める

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'97年、'00年とグリーン・ステージに登場して来たフー・ファイターズが2005年の今年ついにグリーンのヘッドライナーに。ここ数年、世界の名だたるフェスでもヘッドライナーをつとめ、レッチリやグリーン・デイ、レディオヘッドなどと並んで“'90年代から育った大御所アクト“となってはいた彼らだが、ここ日本でもこのフジでその座を不動のものにすることになりそうだ。

登場順は、今回のフジで最高の注目株だったコールドプレイの後。目下世界一の人気アクトの後の出番ということもあり、トリながらもなかなか難しいシチュエーションではあったと思うのだが、そこはさすがに百戦錬磨のライヴで鍛え上げたバンド。自然体のままのホットなプレイでたちまち大観衆を魅了する。決して手の込んだワザを見せつけるわけでも、ロックをネクスト・レヴェルに進めるような高等技術を持っているわけでもないが、しかしデイヴ・グロールは、いつの世においてもどういうロックンロールがキッズに最初に興味を持たせ、かつ大人の心を普遍的に掴み続けているかを本当によく知っている。コンパクトにまとまったタイトな楽曲と誰もが口ずさめるグッド・メロディ。KISSにチープ・トリックにラモーンズ……。いつの世にもこうしたシンプルで爽快なロックがあって欲しい。

「All My Life」や「My Hero」「Everlong」「Slacked Actor」「Monkey Wrench」などの名曲を聴いていると、楽しいと同時にそんな感傷まで起こって来てしまう。先の2枚組の新作では「彼らもやや大御所っぽくなり過ぎたかな」とやや心配もしたが、このライブを見る分には、「永遠のロック少年」の感性を止めたデイヴのセンスに思わず唸らされてしまう。

そして、個人的に感慨深かったのは「これは10年前、僕がこのバンドのデモを作ったときに最初に録音した曲なんだ」とデイヴ自らが語って披露した「Thi Is A Call」。ニルヴァーナという、ロックの歴史を変えたバンドに所属しカート・コバーンの自殺という壮絶な結末をバンド仲間として迎えた男。普通ならその栄光と共に歴史と共に燃え尽きてもおかしくなかったはずだし、当のデイヴもこの曲を録音した際にはまさか自分がフロントマンとしてニルヴァーナに近い商業的な成功を収めるとは思っていなかったはず。それから10年。デイヴはニルヴァーナのあの嵐の日々を汚すこと一切なく、ポジティヴに自分の道を切り開いて来た。そして10年経って今のフジのクライマックスの中心に彼がいる。

いちニルヴァーナ・ファンとしてはじ~んと来た。そしてアンコールでは、ファン待望! デイヴ自らがドラム台に座り、ドラマーのテイラー・ホーキンスをヴォーカルに据えて一曲披露。ニルヴァーナ時代を伝説でしか知らない今の若いキッズもこれには大喜びだった。ニルヴァーナが去って10年。しかし、その間、ニルヴァーナとはまるで違った切り口で再び頂点まで登り詰めたデイヴ・グロール。改めて拍手を送りたい気分になった。

取材・文●沢田太陽
Photo/Barks

フー・ファイターズ
2005/7/29 GREEN STAGE

1. IN YOUR HONOR
2. ALL MY LIFE
3. TIMES LIKE THESE
4. MY HERO
5. BEST OF YOU
6. UP IN ARMS
7. LEARN TO FLY
8. LAST SONG
9. THE ONE
10. STACKED ACTORS
11. THIS IS A CALL
12. EVERLONG
13.MONKEY WRENCH
 ─ ─ ─
14.COLD DAY IN THE SUN
15.BREAKOUT

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
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