<FRF'05>ベック、「ルーザー」から現在までのベスト的選曲

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'90年代を象徴する先端クリエイター、のように思われがちなベックだが、実は全米チャート上でアルバムがトップ10に入ったのは2002年の『Sea Change』からで、最高はなんと最新作『Guero』の2位。実際問題、本場アメリカではここにきて、ようやく大御所となったような状態だ。日本だと『Guero』も、('90年代を代表する傑作)『Odelay』みたいだから良い、みたいな後ろ向きな評価が目立って、どうにも“今のベックそのもの”の評価がつながっていかない。そこが歯がゆくあるのだが、果たして今回ベックは“ベック2005”を日本のファンにアピールできるのか!? そこを楽しみにして、このライヴに僕は臨んだ。

表現者としては悪かろうはずがない。奇想天外な音を鳴らすことに関しては'90年代から他の追随を許さない。過去のどのアルバムに入っている曲も今聴いて古びていることなどもない。まさしく“一流クリエイター”のライヴである。だが、にも関わらず、今回のベックはちゃんとに“今現在の彼自身”を、しっかり聴衆にアピールすることができていなかったように思う。

原因は様々ある。ライヴの最中に見せてしまったバックメンバーとの演奏上の不調和(ステージ脇でベックがメンバーをたしなめていた)など、演奏が本調子でなかったことも、もちろんある。だが、それ以上に気になったのはセットリストだ。'94年のあの「ルーザー」から現在までを俯瞰する、まるでベスト盤のような選曲。さしてベックに興味のない人ならそれで良いだろう。

だが、彼はアルバムの度に“今の自分のモード”をハッキリと打ち出してくるタイプ。中途半端にヒット曲を選曲するより、今の彼のモードに忠実な姿をこそ、いちベック・ファントして僕は観たかった。40代後半を過ぎたベテランならベスト的選曲も貫禄があっていいものだが、まだ彼は30代前半の創作盛り。まだまだ、もっとワガママに今の自分を主張してもいいと思う。過去の作品と共にノスタルジックに語られるのはベックには似合わないのだ。

取材・文●沢田太陽
Photo/Barks

BECK
2005/7/30 GREEN STAGE

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
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