<FRF'05>怒涛のツイン・ドラム、Prefuse73

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Prefuse73ことスコット・ヘレンが来日するのは、今年2回目。前回の来日はアルバム『Surrounded by Slince』を引っ下げて、3月に行なわれた渋谷O-EASTでのライヴだった(https://www.barks.jp/news/?id=1000006741)。BATTLESやBEANSととも行なった前回の公演が素晴らしい内容だっただけに、今回のフジロックにも大きな期待を持っていた。

しかし、フジロック・フェスというイベントの性格上、彼のようなエレクトロニカ・アーティストは、(いわゆる“ロック”ではないという理由で)オーディエンスにどうしても外様的な扱いを受けてしまう。そんな状況の中、Prefuse73がいわゆるロック・ファンにどこまで受け入れられるのか、という懸念も同時に少なからず持っていたのも事実だ。

彼が出演したのは、初日7/29のWHITE STAGE。若干早めに会場に着くと、ステージにはなんとドラム・セットが2台も鎮座している。程なくしてメンバーがステージに現れる。編成としては、前述の通りドラムが2人。そのうちの一人がなんとスコット・ヘレン! それにベースとマニュピレーターに加え、ターンテーブルはDJ NOBODYが担当した。前回公演同様、メガ・ミックス的に演奏されたのだが、とにかくドラムの音圧がハンパじゃない。1人では手数が足りない分は、もう1人が補う。ステージ上の見栄えとして、この屈強なドラマー2人のプレイは相当にカッコいい。そこに、DJ NOBODYのブロークンなスクラッチが加わると、最初はその独創的なステージに呆気に取られていたオーディエンスたちも徐々に身体を揺すられていった。そこにあるのは、ステレオタイプなエレクロニカのイメージ(いわゆるPCに向かってクリックしている内向的なベッドルーム感)とはかけ離れた、ハードコア・パンクのエモーションとエレクトロニカの繊細さを共存させたPrefuse73のみ持ちえる世界観だった。

最新アルバムのラストに収録されていた「And I'm Gone」でステージは終了。次のアーティストを観るために、恒例の民族大移動が行なわれたわけだが、その際の会話の中で“初めて聴いたけど、プレフューズってホントにスゴイね”といった内容を多くの人から聞くことができた。この怒涛のライヴ・パフォーマンスでPrefuse73の外様感は一掃されたことだろう、少なくともこのステージを観た人からは。

フジロック・フェスティバルという場所は、普段ロックしか聴かないような人でもこういった新しい音楽と出会えるキッカケを作ってくれる。もしかしたら大自然のピースな雰囲気が、普段頑なな人の気持ちも多少和らげてくれるのかもしれない。ジャンルなんて、本当にくだらない。大切なのは、“音楽が好きだ”という気持ちなのだ。

ぼくは、小さな音楽好きの波紋が広がっていく瞬間を見ることができて、ちょっと嬉しい気持ちになった。

取材/文●宮崎敬太
Photo/Masanori Naruse

Prefuse73
2005/07/29 WHITE STAGE
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