<FRF'05>ザ・コーラル、演奏力、表現力は格段にアップするも100%の力は出し切らず

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う~ん、事前にはここで大絶賛をする予定だったコーラルだが(笑)、ステージを見終えてしばらくたった今も、どうも歯切れの悪い言葉しか浮かんでこないのがたまらなく悔しい。でも、こんなもんじゃ満足しないぞ、という気持ち、おそらくあの場にいた人の多くは感じたことだろうと思う。

もちろん、ファンであるがゆえに求めるものも大きいというわけで、全体的には満足度は高い。初来日公演の時のようなやんちゃなイメージは影を潜め、ドロリとしたサイケデリックな要素も薄れてはいたものの、その分、しっかりと曲を聴かせようとする真摯な姿勢は伝わってきたし、演奏力、表現力も格段にアップしていた。だから、1曲が短くてシンプルな方向になっていたニュー・アルバム『インヴィジブル・インヴェイション』からの曲も、例えば大きな抑揚を持たない「イン・ザ・モーニング」のような曲(名曲!)でさえ、一つ一つ説得力をもって響いてきた。案外気づかれないことではあるが、曲ごとにギターの音色を変えてみるなどの丁寧な作業がステージ上で行なわれていたのは驚くべき成長だし、オーディエンスの反応を視野に入れて演奏を転がしていく余裕さえ見えてくれたのも大きい。同世代のイギリスのバンドの中では、他が霞んでしまうほどに圧倒的な個性とユニークな視点と音楽的なボキャブラリーを持ち、それを形にする才能も兼ね備えたバンドであることを再確認するには十分なパフォーマンスではあった。これはバンドが一つの到達点を越えたことを伝えてくれるものだろう。

だが、それでもあえて言う。腹八分目だ、というのが正直なところであると。少なくとも私はこのバンドの、氷と炎の両方を一気に手にして脳がイカれてしまうようなトリップ感覚にも似た、とんでもなくすさまじいステージを知っている。ホントに、こんなものじゃないのだ、彼らが本気を出せば。

一昨年のフジロックを直前にキャンセルするなど、何かと不安定(?)なバンドではある。今回の来日もオリジナル・メンバーの一人(ビル=ライダー・ジョーンズ)が同行していないという残念な状態。そうしたハンディを、しかしながらサポート・メンバーを加えた彼らはよく乗り越えていたとは思う。でも、隣のグリーン・ステージでニュー・オーダーが今まさに始まろうとしてもアンコールの拍手が鳴りやまず、直前の豪雨があがっていてもそこから立ち去ろうとしないファンが大勢いたことを、彼らはどう受けとめていたのだろうか。雨粒と涙が一緒くたになって惜しまずにアンコールを求めていた女の子たちの表情を今も私は忘れない。

ただ、彼らの熱心なリスナーの一人として、こういうムラがあるところもまたコーラルの魅力なのだ、ということも言っておきたいと思う。いつでも平均点、常にまあまあ。そんなバンドばかりじゃ刺激がないじゃないか。だから、次回の来日公演では、きっとこの日の倍返しの素晴らしいステージを見せてくれるだろうことを信じている。

取材・文●岡村詩野

THE CORAL
2005/7/31 RED MARQUEE

GOODBYE
SIMON DIAMOND
BILL McKAY
SHE SINGS THE MOURNING
PASS IT ON
OPERATOR
SO LONG AGO
DON'T THINK YOU'RE THE FIRST
SKELTON KEY
DREAMING OF YOU
FAR FROM THE CROWD
IN THE MORNING
SOMETHING INSIDE OF ME
CALENDERS & CLOCKS
ARABIAN SAND

BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
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