ピンク・フロイド『ザ・ウォール』を大物たちが完全再現!

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これまで、幾百というトリビュート・アルバムと名のつくものはあったが、対象のアーティストへの愛が微塵も感じられないものだったり、参加アーティストの稚拙な自己解釈に基づく演奏だったり、知り合いのミュージシャンを集めてのただのセッションだったりと、トリビュートという言葉を理解して、理想的な形で聴かせてくれるものは希少だった。

ところが、史上最強ともいえるトリビュート盤が2006年1月18日にリリースされる。それが、ピンク・フロイドの名作中の名作『ザ・ウォール』のトリビュートアルバム『バック・アゲインスト・ザ・ウォール』(写真)である。このアルバム、オリジナルアルバムを細部にわたって完璧に再現していることも驚きなのだが、一番のトピックとなっているのは、参加しているミュージシャンの顔ぶれである。アラン・ホワイト、リック・ウェイクマン、クリス・スクワイアのイエス勢、エイドリアン・ブリュー、ジョン・ウェットン、トニー・レビンのキング・クリムゾン勢、スティーブ・ルカサー、スティーブ・ポーカロのTOTO勢、グレン・ヒューズ、スティーブ・モーズのディープ・パープル勢、エイジアのジョフ・タウンズ、そしてなんとキース・エマーソンもラインアップに名を連ねており、まさに凄腕のプログレ・ミュージシャン全員集合。こんな面子が集まることなんて考えられないほどの豪華ラインアップなのである。

仕掛け人は、モーターヘッドやTOTOのプロデュース、そしてイエスの再結成メンバーであるビリー・シャーウッド。ピンク・フロイドがこのアルバムを作るときのコンセプトである“人間社会に存在する様々な壁=コミュニケーション・ギャップ”を2枚組の大作として再構成させた。そしてトリビュート盤は“真似ではなく、オリジナルに忠実なものにしようとした”という、一見矛盾していそうなコンセプトを立てて、これだけのミュージシャンを集めて見事に作り上げてしまったのである。

このトリビュート・アルバムは、コンセプトどおりオリジナルに忠実に演奏されており、参加ミュージシャンの腕達者さをまざまざと感じるが、それがすべてではない。これらのミュージシャンをもってしか再現できなかったアルバムを70年代に創り上げていたピンク・フロイドというバンドに対する畏敬の念を抱かせてくれることが重要なのだ。スピリチュアルな世界から現実の世界までを音楽という形で作り上げたピンク・フロイドというバンドの驚異さ、崇高さを改めて感じさせてくれるアルバムなのである。

なんと、このアルバムをライヴ化するという企画もあるらしい。これだけのミュージシャンが一堂に会したライヴ、信じられないような壮大な企画だ。すべてのロックファンが集う、歴史に残るものになるだろう。

そしてもう一つ、ピンク・フロイド・ファンにうれしいお知らせがある。この『バック・アゲインスト・ザ・ウォール』に続いて、同じくピンク・フロイドの代表作である『狂気』のアルバムプロジェクトも進行しているというのだ。現在まで世界で3,000万枚以上を売り上げているとされる世紀の大ベストセラーである同アルバムが、またも豪華ミュージシャンの手によって再現されるのである。世界中のファンの耳目を集めることだろう。トリビュート中のトリビュート。たっぷりとピンク・フロイドの世界観の中で泳ぎまわりたい。
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