ソウルフルな歌声で魅了するネイト・ジェームス特集 ~INTERVIEW~

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──初めての日本は楽しんでますか?

ネイト:もちろん、楽しんでるよ! 実は、スシが大好きなんだ。イギリスでも食べられるんだけど、やっぱり違うね。ホンモノのスシは、日本に限る(笑)。ラーメンも食べたよ。それに焼き肉もね。焼き肉って自分で肉を焼くだろ。それが楽しかったんだ。ちょうど桜も満開だし、日本に来てからは、ありとあらゆるものが楽しいんだよ。

──昨日のライヴ(4月3日の渋谷DUO MUSIC EXCHANGE公演)も、とても素晴らしかったですね。ネイト自身も楽しんでいる様子が伝わってきましたよ。

ネイト:実は、あんなに盛り上がるとは思ってなかったんだ。だって、僕はまだ新人だろ? だけど、お客さんはすごく盛り上がってくれた。おかげでバンドも僕も楽しむことができた。いいショウになったと思っているよ。

──日本ではノン・プロモーションだったにもかかわらず、『セット・ザ・トーン』の輸入盤が、まず話題になったんですよね。レコード会社があれこれお膳立てした結果、ヒットしたというよりも、そういう人気の火の付き方のほうがネイト自身もうれしいんじゃないですか?

ネイト:実はイギリスでもシングルを何人かのラジオのDJに送っただけで、大々的にプロモーションしたわけじゃないんだ。確かに、そういう売れ方のほうが本当の意味でのファンが見つかると思うんだ。僕も一音楽ファンとして、いいと思えるアーティストやレコードを、常に探しているけど、そういう作品に出会うと、口コミじゃないけど、友達と音楽の話をしたりしているとき、話題に出すよね。そういう広がり方は僕にとってベストだよ。そういう方がホンモノっぽいよね。

──ところで、音楽があふれている家庭に育ち、6歳の頃にはすでにプロのシンガーを目指していたそうですね。音楽や歌うことの、どんなところがネイトを、そんなに魅了したんでしょうか?

ネイト:幼い頃から『TOP OF THE POPS』(イギリスの人気音楽番組)といった音楽番組で歌っている人達を見て、“いいなぁ”と思っていたんだ。だからって、決して注目されたいと思っていたわけではないんだ。何て言うか、歌うことは僕にとって楽しめることだったんだよ。だから、プロとしてデビューした今でもそれほど仕事という感覚はない。本当に楽しんでやっているんだ。幼い頃から、歌うのが楽しくてしかたなかった。つまり、僕にとってはその延長がプロになることだったんだ。

──人前で歌うことの喜びを、初めて味わったのはいつですか?

ネイト:人前というわけではないけど、子供の頃、自分の部屋でよくボーイズIIメンやモータウンの曲を歌っていたんだ。ある日、いつものように部屋で歌っていて、喉が渇いたんで、水を飲もうと思って、部屋を出たら、母が涙を流していたんだよ。どうやら僕の歌に感激したらしい(笑)。その時、母に言われたんだ。“そんなに素晴らしい才能を持っているんだから、歌うことで自分の道を切り開くべきだ”って。それが8歳ぐらいだったと思うんだけど、本当の意味で人前で歌ったってことになると、小学校の聖歌隊に入ってからだね。今でも忘れられないのが、聖歌隊で歌っているとき、雛壇の一番後ろの段から落っこちて、お客さんを大爆笑させたことだよ(笑)。

──「セッド・アイド・ショウ・ユー」や「アイル・ディクライン」といった曲を聴くと、R&Bのみならず、ロックからも影響を受けていると思うんですけど、実際には?

ネイト:もちろん! たとえば、レニー・クラヴィッツやパーラメントやプリンスなんかの影響は、割と分かりやすいと思うんだけど、リンキン・パークやリンプ・ビズキット、それにエアロスミス、もうちょっとポップ寄りだとマルーン5とかピンクも大好きだよ。

──へぇ。リンキン・パークやリンプ・ビズキットですか。それはかなり意外な答えですね。

ネイト:そうだね。でも、僕は音楽のファンなんだよ。ジャンルは関係ないんだ。

──ネイト自身も便宜上、R&Bにカテゴライズされているけれど、そういう枠組を越えて、幅広いリスナーにアピールできるアーティストですよね。

ネイト:新人アーティストの最初のアルバムは型にはまったものではなく、多様性のあるものであることが必要だと思う。カテゴライズなんてメディアに任せておけばいいんだよ(笑)。僕自身は、どんなスタイルだろうと音楽は音楽だと思っている。だからこそ、『セット・ザ・トーン』には、いろいろな人が楽しめる曲が入っているんだ。僕がどんな音楽に影響を受けてきたか、その要素がアルバム全体に散りばめられているんだ。

──そろそろ新作のアイディアも考えはじめているのでは?

ネイト:すでに8曲ぐらいでき上がっているんだ。この後、残りの曲を、L.A.、スウェーデン、フランスに行って、ソングライターやプロデューサーと一緒に書き上げるつもりだよ。多分、イギリスでは9月にリリースできると思う。日本でも今年中に出せたらいいんだけどね。『セット・ザ・トーン』はアップテンポでハッピーな作品にしたかったんだけど、2枚目はそのコントラストという意味で、もっとミッドテンポで、どちらかと言うと、恋人とのんびりしているときに聴けるような作品にしようと考えているんだ。

──その『セット・ザ・トーン』は恋愛をテーマにした曲が多いですけど、恋愛体験は豊富な方なんですか?(笑)

ネイト:ハハハ。確かにそういう曲が5、6曲あるけど、全部、一人の元カノの曲だよ。だから、豊富ってわけじゃない(笑)。彼女とは結構長い間つきあっていたんだけど、結局、彼女を選ぶか音楽を選ぶかって状況になってしまったんだ。でも、音楽は小さい頃からの夢だったからね、どうしても音楽をあきらめることはできなかった。それで別れることになってしまったんだけど、でも、そこでそういう決断をしたからこそ、今、僕はここにいられるわけで……。

──元カノは『セット・ザ・トーン』を聴き、どんなことを思ったでしょうね。そんなことを考えたことはないですか?

ネイト:実は、今でもいい友達なんだよ。彼女のことを歌っているとは言え、悲しい別れの体験だけを歌っているわけじゃないんだ。たとえば、楽しかった頃の思い出を歌った“ファンキー・ラヴ”を聴いて、彼女は『私達の曲ね』って喜んでくれたよ。確かに、音楽を選んだことで別れることにはなってしまったけど、きっと彼女はそんな僕を誇りに思ってくれているはずだよ。

取材・文●山口知男

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