ライノセラス特集 INTERVIEW編

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間違いなくうれしかったよ!と今回インタヴューに応じてくれたジャン=フィリップ。特にこれまでの歴代のアップルの数々のキャンペーンを知っていたからね。iPodに限らず、Macのものも含めて、どれも非常に良くできている。美しくて、華麗で、音楽のセンスも素晴らしい。僕もパトゥも昔からアップル・マニアでね。PCは絶対に使わない。いつもMac。11歳になる娘もiPodnanoを持っているし。

今や、iPodのCMに起用されることは世界中でのヒットが保証されたようなもの。絶好のタイミングでリリースされた初のベスト盤『ライノセラス』だが、“Best Of Rinocerose”を出そうというアイディアは以前からあったようだ。

よくぞ聞いてくれたよ。実は1年前から“Best Of Rinocerose”を出したいと思っていたんだ。今年でライノセラスのちょうど10周年になるから、ベスト盤を出すのにちょうどいいんじゃないかと思ってね。

ライノセラスにはすでに4枚のアルバムがある。レ・マラカスというバンドを経て、ジャン=フィリップとパトゥがライノセラスを結成したのは1994年。スペインのステレオフォニック・エレファント・ダンスから1996年にデビューした。初期のトラックは『Retrospective』にまとめられ、V2と契約後の1999年に『Installation Sonore』、2002年に『ミュージック・キルズ・ミー』、そして昨年秋に「キュービクル」が収録されている最新作『Schizophonia』がリリースされている(この7月に『Installation Sonore』以降の3作が日本盤として再リリースされるので入手しやすくなるはず)。シングルを中心に代表曲がコンパイルされた『Rinocerose』の選曲は、あえてスタッフに任せたようだ。
※日本盤のあるものはカタカナ、輸入盤のみの作品はアルファベットで表記しています

「ミュージック・キルズ・ミー」や「ル・モビリエ」「メス・バカンス・ア・リオ」といったライノセラスの定番曲は入るだろうと思ってはいたけど、「ロスト・ラブ」や「ル・トライアングル」といった、ライヴではやらないけどレコードで聴くとすごく楽しめる曲もしっかり入っているのはうれしかった。あと、すべての曲がうまくなじんでいることがうれしかったね。ライノセラスのディスコグラフィーを見てみると、アルバムごとに大きな変化がある。例えば、最新作の『Schizophonia』はフル・ヴォーカル・アルバムという点で他のアルバムとはずいぶん違う。でも、『Schizophonia』からの曲と『ミュージック・キルズ・ミー』からの曲を並べて聴いてみても違和感がない。同じ人間によって作られた曲だというのがわかる。すべての作品に一貫したスタイルがあることに気付く。それがうれしかったね。

「キュービクル」で彼らの音楽に初めてタッチしたなら、ロック・バンドを想像して当然だが、彼らは活動開始当初からハイブリッドなセンスは持ち合わせていた。特に初期はダンス・ミュージックやエレクトロニカ志向で、シングルはダンスフロアを賑わせていた。変化は意識的なものだったとジャン=フィリップ。

『Retrospecitve』と『Installation Sonore』で僕らはギター・サウンドを実験的に取り入れていた程度だったのに対して、『MusicKills Me』と『Schizophonia』で僕らはいくつかのロック・アンセムをいじることを試みた。リフを大胆に取り入れるという方向性を見いだし、ザ・フーやローリング・ストーンズっぽいものを目指した。そんなすごいリフをプレイできたことはすごく楽しかったよ。その結果、1stや2ndにはない、より実験的なロックの要素が全面に出てきたんだと思う。

ライノセラスは“ロックか”“ダンスか”というカテゴライズを必須としない。

その二つの世界の架け橋だと思っている。一種のハイブリット・バンドだと思う。僕らには強いロックの影響がある。でも同じくダンス・カルチャーにも興奮する。二つのどっちかという問題ではなく、その二つから生まれた雑種のようなもの。

'60年代のモッズ・カルチャーやガレージ・ロック、'70~80年代のニュー・ウェイヴやパンク、そして、'90年代以降現在進行形のエレクトロニック・ミュージックと、彼らは大胆な融合を試みている。

今、音楽は一つの大きな融合だと思う。2006年はビック・ミックスが鍵だと思う。だって、周りの人を見てごらんよ。みんなインターネットをやっていて、iPodを持っていて、曲単位でダウンロードして、自分独自のコンピレーションを作っている。それも、音楽性や時代もまったく無視してね。境界線なんて存在しないんだ。

この夏、ライノセラスは<FUJI ROCK FESTIVAL 06>での初めての来日が決定している。ダフト・パンクやエールに代表されるような、フレンチ・タッチと呼ばれたフランス勢が注目されていた時期に登場したわけだが、他との違いはライヴ・パフォーマンスにあるという。彼らのステージには定評があり、ジャン=フィリップ自身も自信を持っている。

(ライヴは)メインの活動だといってもいいくらいだ。僕らはライヴで魅せる術を知っていた。ライノセラスが生き残ってきたのもライヴがあったからだ。バンドにとって最も重要なのはライヴ・バンドであることなんだ。

取材・文●栗原 聰(Zelig)

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