ハードコアとクラブ・シーンを繋ぐミッシング・リンク STRUGGLE FOR PRIDE IMAZATOインタヴュー

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 ストラグル・フォー・プライド。この名前を見たことがあるだろうか? もしくは彼らの名を世の中に知らしめている圧巻のライヴを“体感”したことがあるだろうか? あればその衝撃を説明する必要はないが、なければ、まずは一度、彼らのライヴへと足を運ぶことをオススメする。

 耳を劈くギター・ノイズ、高速ビート、そしてヴォーカルのIMAZATOが発する言葉。それは、おそらくあなたが体験したことのない音空間であろう。そんな彼らのライヴは、ライヴハウスはもちろんのこと、クラブ、そしてロウ・ライフ、イレブンといったイベントでも見ることができる。ハードコア・パンクである彼らのサウンドは、ハードコア好きの間でだけでなく、クラブ・シーンでも話題となっている。言い方を変えれば、ハードコアとクラブ・シーンを繋ぐ重要な存在と捉えられていると言ってもいいかもしれない。ただ、IMAZATOは今のこの状況に関しても冷静、いや自分なりのスタンスで接しているだけだ。

「実際は(クラブ・イベントに)誘ってくれる人も一緒に何かやる人とかも人もそうだけど、ただ友達なだけで、その人たちと遊んでるだけだったりするから。(クラブ・イベントでライヴすることに対して)そんなに意識はしてないですね」IMAZATO

 ストラグル・フォー・プライドの音源は、これまで幾つかのコンピ、そしてスプリット作品でのみ聴くことができたが、この度単独作品としては初となるアルバム『YOU BARK WE BITE』をリリースする(先行シングルとしてリリースされたDJ ノブ、ブッシュマインドのリミックスを収録した12インチは、発売と同時に即完売!)。今作は今までの彼らの諸作品と比べても、ギター・ノイズを強調し、ヴォーカルを抑えた彼らのライヴに近い音の質感に仕上がっている。

「(このタイミングでアルバムをリリースするのは)オファーがあったので。(アルバムのアイディアは)あったような、なかったような感じでしたね。普通のハードコア・パンクのアルバムで一曲ずつにステイトメントがあってそうなってるんだと思うけど、短い曲が沢山入っているというのはよくあるんですよ。自分たちはそういうのではなく、アルバムに明確なテーマがあったわけではないけど、一回の再生で最後まで聴けるものにしたいと思って。全部を聴き通せるものにしたかった。(全部を聴き通せるためにしたことは、)曲順を考えることですかね」IMAZATO

 今作には盟友アブラハム・クロスを始め、D.OMSCと麻暴が参加、そしてアルバムの冒頭はカヒミ・カリィの朗読で始まる。その朗読からストラグル・フォー・プライドの演奏が始まる瞬間は、まさに鳥肌もののタイミングであり、その後の漢と麻暴のラップによって、今作は怒濤の勢いを増す。

「カヒミ・カリィの声は、それだけで使いたかったんですよ。“(朗読から曲の入り方は)もうちょっと前、もうちょっと後”、とかそういうことばかり言ってて(笑)。最終的にはエンジニアの坪井くん(Illict Tsuboi。MSCの『新宿STREET LIFE』も担当)が、“始まるところでこれを押して”って。俺たちに決して触らせなかったコンピューターを、俺に委ねだして(笑)。MSCに関して言ったら、俺はすごい好きで憧れてて。たまたま知り合いになって、話したりして。年とっていくと、憧れとかなくなっていくけど……。MSCには憧れてるし、(ストラグル・フォー・プライドと)共通性もあると思う。(自分たちが)共感を覚えるのは、キャリアだけ長くて何やってるのか分からないえばってるようなバンドとかじゃなくて、MSCだったり、ノブくん、ブッシュマインドだったり、今現在動いてる人だったりするから。そういう意味でもMSCはちゃんと使いたくって、あれはああいう導入にしたかったんです」IMAZATO

 このアルバムからは、ある種のストーリーを感じる。が、IMAZATOは一定のストーリーを押し付けようとはしないし、だからと言って聴き手の想像力に任せるというような投げっぱなしのことも言わない。彼が今作に関して口にしたのは、“自分達の周りで起こってることを形にしたアルバム”。

「何かこう、本当に何かを変えようとか、何かに対して対抗してという気持ちで(アルバムを)作ってなくて。自分達の状況を出してみただけだったりするから。バンドを始めた時とかは、色んなことが気に喰わなくって不愉快に感じてたけど。まぁ、嫌がらせに近い感じで(バンドを)始めたりしてたんだけど(笑)。(排他的な)音楽を聴いて、そういう気持ちで作ったんだなって理解はできるけど、自分がやる場合は......。ライヴの場にいてライヴを見に来ている人は、敵じゃないから。俺らは、“おまえらはどうこうで、俺はどうこうだ”ではなく、“彼らはああで”という(状況を表わす)もののほうが自分の気持ちに近かったりするから」IMAZATO



取材/文●池田義昭




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