<SUMMER SONIC 06>メタリカのために用意されたサマーソニック06

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敢えて誤解を恐れずに暴言を吐かせてもらう。今年のサマーソニックはメタリカのためにあった。そう断言してもおそらく誰も反論できないだろう。仮にその人が、現在のメタリカのあり方について否定的であったとしても。

とにかく、サマソニ史上最長ということになる2時間20分に及ぶステージの密度濃さは圧巻だった。お祭りムードのなかでの“Die!”の大合唱という不思議な光景を生んだ「クリーピング・デス」に幕を開けた演奏メニューの軸に据えられたのは、なんと「バッテリー」から「ダメージ・インク」に至るまでの『マスター・オブ・パペッツ』(邦題:『メタルマスター』)全収録曲再現。1986年に発表されたこのアルバムは、このバンドのその後の歩みを左右するまさに運命的な1枚となったわけだが、今年は同作のリリース20周年の記念すべき年である。同時にこれは、初代ベーシストであるクリフ・バートンの遺作にもあたる。スクリーンに映し出された彼の在りし日の姿に、メタリカが生き抜いてきた年月の重みを感じずにいられなかったのは、僕だけではないだろう。

そして興味深かったのは、そうした重みばかりでなく、現在のメタリカが良い意味でのラフさ、軽やかさをも持ち合わせている点だ。もちろんそれは、今回のライヴがニュー・アルバム制作準備段階での“スタジオからの逃避”と銘打たれたツアーの一環としてのものであり、ある意味“番外編ツアー”的なものであることとも無関係ではないだろう。が、メタルの象徴でありながら体質的にはとてつもなくロックンロール・バンドだったりもするメタリカの“素”の魅力が過去最高に堪能できたこと、また、それが20年を超える歴史を知らない世代をも温度差なく熱狂させるものであることが証明されたことは、間違いなく大きな収穫だったといえる。

アンコールでは未発表曲の新曲まで披露してくれた彼ら。ラーズ・ウルリッヒは“新しいアルバム、新しいツアーで会おう!”と言ってステージを去った。その瞬間、メタリカのネクスト・アルバムは、マリンスタジアムを埋め尽くしたオーディエンスにとって“一番待ち遠しい1枚”になったに違いない。

文●増田勇一


SUMMERSONIC 06 TOKYO
2006.8.12
MARINE STAGE

1.Creeping Death
2.Fuel
3.Wherver I May Roam
4.The God That Failes
5.Fade To Black

from『Master Of Puppets』
6.Battery
7.Master Of Puppets
8.The Thing That Should Not Be
9.Welcome Home*Sanitarium
10.Disposable Heroes
11.Leper Messiah
12.Orion
13.Damage.Inc

14.Sad But True
15.Nothing Else Matters
16.One
17.Enter Sandman
=Encore =
18.Other New Song
19.Last Caress
20.Seek & Destroy

◆SUMMER SONIC 06特集はこちらから
https://www.barks.jp/feature/?id=1000025892
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