比嘉栄昇 独占インタヴュー

ツイート

──アルバム『とうさんか』は、心が温かくなる素晴らしい作品に仕上がりましたね。東京のような緊張感の高いところではなく、沖縄に生活の拠点を置いているからこそできた作品だと思います。

比嘉栄昇(以下、比嘉):沖縄の自然が教えてくれることが第一ですね。それと、一昨年にハワイで開催された沖縄フェスティバルに出て以来、沖縄から移住された人と知り合いになって、ハワイに行く機会が増えたんです。ハワイにも音楽と生活の独特な関わりがあって、そこから癒しや心の平穏を教えてもらいました。このアルバムでは、そのハワイと沖縄の良さを伝えられたらいいなと思ったんです。これから何年もの間、僕のテーマになるんじゃないかな。

──変わったタイトルですよね。

比嘉:今までも“歌”は自分の子供だと思ってたんですが、実際に自分が父親になって、本当にそうだと思えるようになってきたんです。そうすると、自分の“歌”という子供に、タイトルということで名前は付けてあげられるけど、“故郷”も持たせてあげないとかわいそうだと思うようになってきたんです。そうすれば、沖縄から出て全国に紹介されたときに、“僕は沖縄出身のこういう歌です”と自己紹介できる。そうすれば、これだけ音楽が溢れてる中で、歌たちが迷わないでいられると思ったんです。それで、島で産まれた歌ということで“島産の歌=とうさんか”としたんです。そして自分が父親になったんで、父親の気持ちとしての歌“とうさんの歌=とうさんか”。また、島を讃える歌“島讃歌=とうさんか”としました。

──このアルバムは、沖縄音階などもなく、沖縄のエッセンスが薄いですね。これまでは沖縄のエッセンスを入れなきゃという外部からのプレッシャーは大きかったんですか?

比嘉:それはないですね。BEGIN自体が、他人から何かを言われて作るということがなかった。それよりも、どうやったら馴染むのかということを考えましたね。沖縄の祭りで流される時に、馴染むように三線や太鼓を入れようと。まあ、BEGINが「恋しくて」っていう、沖縄音楽とは思えない曲でデビューしたというのも大きいですね。だから、沖縄音楽をやらなければならないというプレッシャーは感じませんね。

──このアルバムはリズムも心地よく、比嘉さんも声を張り上げずに、気持ちよく歌っているのが伝わってきます。

比嘉:気持ちが騒がないで、ゆったり聴けるような歌い方にしようと思ってました。寝ながら聴いていると、曲にはピークがあって、必ず耳に入ってきて起きてしまうんです。そういうことのないようにしようと。抑えて歌うのって難しかったです。

──では、1曲ずつ詳しく聞かせてください。まず「八重のふるさと」。ワルツのリズムが心地良いですね。歌は寂しいですが。

比嘉:実はこの曲は、仕事で東京に来ていて、タクシーで世田谷あたりを走っているときに、ふと思い浮かんだ歌詞とメロディなんです。ちょうどその時に、石垣島の新空港建設が決定とニュースで流れて。友達や親からも“石垣島は変わるよ”っていう話を聞いてて、なんとも言えない寂しさと不安と歯がゆさがあった。でも変わることは時代の流れで決して悪いことではないし、力ずくで押さえようとすると、もっと悪い方向に進んでいく。だから、ちゃんとサヨナラを言おうと思ったんです。島の人間として、当たり前にあると思ってたけど、島も年を重ねて変わっていく。でも変わり行くときに、ちゃんとサヨナラを言わないと次に進めない。また、自分も親にも友達にも島にもサヨナラを言えてないなって。この曲が、今回いちばん歌いたかったことかもしれません。

──2曲目が「まえの日」。おとうさんとしての歌ですね。

比嘉:BEGINのときとは違ってたっていうのが、この曲でわかりましたね。BEGINは3人なんで、歌詞で言うことが増えることもあれば、言えないことが出てきたりもする。でも一人だと、自分の子供のことや家庭の風景なんかでも100%出せるんです。照れくさいけど、こんなことまで歌になるんだという発見もありました。オレ、歌作りって照れくさいんです。夜中の3時くらいから朝までそういう作業をするんですが、“誰か起きて聴いてるんじゃないか”っていう恥ずかしさがいつもある。だから鶴の恩返しみたいに、部屋にこもってやってるんです。

⇒INTERVIEW NEXT

 
  
この記事をツイート

この記事の関連情報