初回の放送から34年が経過し、番組を放送したNHKでもテープが消失していて、視聴者が録画していた最終回のビデオだけが、唯一残っている素材だとされてきた。そのサウンドトラックが正式にCDとして復刻されるのだから、あきらめざるを得ないと長年思っていたファンにとってはもう涙モノの1枚だろう。

「タイム・トラベラー」のサウンドトラックは、いわば偶然発見されたものだという。その出所は、作曲者の高井達雄氏だった。

濱田:3年前、2003年は鉄腕アトムの誕生年ってことで、アトムの作曲者である高井達雄さんにお会いしたんです。そのとき、カビだらけで真っ白な6mmのテープを預けられたんです。テープのカビをとって再生してみたら、「タイム・トラベラー」が入っていてびっくり。高井さんも実はテーマくらいしか入ってないんじゃないかと思っていたらしいんですが、ドラマの中で使われたいろいろな音楽がたくさん入ってる。それが2003年の9月のことです。

「タイム・トラベラー」のサウンドトラックのテープを入手したものの、すぐにリリースにこぎつけられたわけではなかった。

濱田:面白いものが手に入ったけれど、出してくれるところを探すのがけっこう大変でした。実際聴いてみたら音は悪いし、尺もそんなにない。この3年間、高井さんとは何度も話しましたよ。今すぐには出せないけれど、そのうち絶対に出せる日が来ますから、そのタイミングを待ってください、僕はこれまでの10年間、こうしたCDを作ってきたけれど、企画してから7~8年経ってから出せたものもあるんですよって。結局、今年「TVエイジシリーズ」の企画が成立したので、ようやく出せることになりました。今また「時をかける少女」のアニメ映画がヒットしていますが、これはそれにタイミングを合わせたわけじゃなくて、たまたま時期が重なっただけなんです。

今回のサントラ盤には、テーマ曲、ドラマのなかで使われた挿入曲など数多くの音楽が収録されている。そしてそのほかに、特別なボーナストラックも含まれている。イタリアの名トランペッター、ニニ・ロッソの演奏する特別バージョンだ。

濱田:ビクターでお蔵入りになってるというんで、これはぜひ入れたいと思って探してもらったんですが、ビクターにはなくて。これも、結局は、高井さんのご自宅から出てきたんですよ。しかも、サントラ盤の発売ギリギリのタイミングでした。当時、高井さん自らがアレンジして録ったんだそうです。

ただ、今回のCDの音質については濱田氏も納得していないと言う。

濱田:音は悪いですね。でもこれはどうしようもない。元々のテープの状態が最悪ですからね。言い訳じゃないですけど、今回は音が悪いっていうのを敢えて帯の裏に明記したんです。買った人が聴いて、なんだこれ音悪いなあって思う人が絶対いると思うんです。僕だって買う立場だったらそう思いますよきっと。でもこればかりは歴史的意義を感じてもらうしかない。

そして濱田氏は今後の展開についても話してくれた。この「タイム・トラベラー」のほかにも、同じ少年ドラマシリーズのサントラが今後リリースされる可能性があるという。ファンにとっては期待の膨らむ話だ。

濱田:実はこのほかにも、少年ドラマシリーズの音源が存在するんです。いずれは、それらも出したいですね。クリアすべき問題がたくさんあるので、いつになるかはわかりませんが、それもタイミングを見ながらということで。