蜉蝣、熱狂と感動、そして涙…ヨーロッパ公演レポ

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『言葉の違いなんて関係ない。ただ蜉蝣しなさい。』


“蜉蝣”の最期はある日突然やってくる。長いようで短い一生を終えようとしている“蜉蝣”が最終ツアー<Tour '06 『蜉蝣』>の国内公演16本を大盛況で終え、続けて今回で5度目となるヨーロッパ公演2本にて2006年を締めくくった。

今年9月の突然の解散発表は日本国内のみならず、海を越えたヨーロッパにも想像以上の衝撃を与えていた。鳴り止まぬ電話、絶えず受信を告げるメールボックス…ヨーロッパ中のファンそして関係者が、蜉蝣の欧州プロモーターであるGan-Shinにその衝撃発表の真意を求めた。その反響を受けて急ピッチで進められた欧州公演。開催地はベルリン(ドイツ)とパリ(フランス)だ。

12月15日のベルリン、17日のパリの最終公演に集まったファンは延べ2,300人超。ソールド・アウトとなった両公演では、開演前から失神者が出るほどの熱狂ぶりだ。この冬の寒空の中、公演日の数日前から会場前に泊り込むファンの姿も当たり前の光景となっている。

客電が落ち、SEが流れ出すと会場のボルテージは一気に高まった。オーディエンスはこの瞬間を二度と味わえないのだと悟ったかのように、ある者はメンバーの名前を喉が壊れるほど叫び、またある者は感極まり泣き出す。一心に感情をステージにぶつける観客の姿は、“果たしてここは海外なのだろうか?”と疑う程で、そこには言葉の壁も国境もなかった。ステージの色鮮やかな照明に包まれた4人の姿は観客を見据え、観客はヴォーカル大佑とシンクロしながら日本語で合唱し、時に絶叫する。すべての神経がただステージを感じることに集中し、時間という概念すら忘れるほどの充実感の中で瞬く間に全18曲を披露し本編を終了した。

ステージが暗転するや否や“ka-ge-rou!”コールが会場に響き、そのアンコールに応え、再びメンバーが登場した。アンコールでは全4曲を披露し、ヨーロッパで支持率の高い「絶望にサヨナラ」で幕を下ろした。オーディエンスは“解散”という事実を受け入れながらも、信じたくないという気持ちが涙となって溢れ出し、声にならない声でメンバーを叫び続けた。いつもならすぐにステージを下がるメンバーもまたそこから動くことなく会場を見つめ、抑えきれない思いを隠しながら、大佑がヨーロッパでの最後の言葉を残した。「ありがとう!ありがとう!ありがとう!ありがとう!」

ヨーロッパでの活動はバンド人生の終盤に訪れ、欧州のあらゆる人々の心を掴んだところで、惜しくもそのステージから降りることになった。公演終了後には、Korn、マリリン・マンソンといった大物アーティストのプロモーターでもあるフィリップがただ真っ直ぐに目をみながら“本当に最高のライヴだった。本当に感動的だった。私は今まで数え切れないほどライヴを見てきたけれど、今日このライヴを成し遂げたメンバーを誇りに思う。ありがとう。”と語った。現地媒体の関係者も口をそろえてこう言った“今までの人生で最高のライヴだった。本当に感動した。”と。

両公演のステージを通して、今の蜉蝣にとって在るべき姿は“余力で懸命に生きる”という柔なものでなく、“ただ今を生きる”というごくシンプルな形で楽曲を伝えることなのではないか、と実感させられた。残すは、2007年1月8日(月)Zepp Tokyo。チケット即完こそ、まさに蜉蝣の生きた軌跡を象徴する事実である。

蜉蝣の時に情熱的で、時に冷酷な生涯は儚さと共に、ここに眠る…
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