【Hotwire Music Business Column】ビジネス目線で観る夏フェス成否の鍵

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カレンダーは2月になったばかり。まだまだ冬の最中だというのに音楽業界や多くの音楽ファンはすでに夏フェスに心を奪われている。音楽ビジネスにとって非常に大きな位置を占めるまでに成長した夏フェスだが、日本では数日間に渡って数ヶ所のステージで開催されるFUJI ROCK FESTIVAL(以下フジロック)をSmashが立ち上げて以来、まだ10年しか経っていないのは驚くべき事実である。

世界規模で史上初だったフェスティバルを特定するのは難しいが、最も寿命が長く成功しているヨーロッパの大規模フェスはイギリスのグラストンベリーとレディング、そしてデンマークのロスキルデだろう。アメリカの大規模フェスはボナルーとコーチェラだが、その歴史はまだ10年にも満たない。

傍観者からすれば、こういったフェスを運営するのはバンドを沢山揃えて、お楽しみムードでチケットを売るだけの楽な作業に見えるかもしれない。しかしながら1つのフェスを成功させるのは非常に困難なことで、適切なアーティストを望ましいギャラで確保。目的に見合った安全な会場探し、何千人もの観客の会場までの移動管理、会場内で観客が思う存分楽しむための飲食・トイレ・睡眠場所の提供。そして、開催中の天気にまで気を配らなければいけない。

実際、集客不足や音楽ファンがエンジョイできる環境をちゃんと提供できず失敗に終わったフェスも数多くある。ウッドストック・フェスティバルを再現しようとして致命的な結果に終わり、金銭的に破綻したオーガナイザーの例が最も顕著だ。日本では、コンサート・プロモーターとして評判の高いUDOが大規模フェスに関しては大失敗を繰り返している。フェスを成功させる方程式は単純なものではないが、重要なのは強力なヘッドライナー陣を押さえ、その周りを新進気鋭かつ話題になっているアーティストで固めて人々の見に行きたいという欲望を駆り立てることだ。

社交場でもあるフェスの醍醐味は、友達や他の音楽ファンたちと面白いセッティングの中で楽しむことにある。フジロックがこれほどまでに人気を集めているのは、田舎だがアクセスのいい山中にある会場内に設置されたユニークな“ヴァイブ”を持つ数々の遊び場が素晴らしい雰囲気を生み出しているからだろう。SUMMER SONICも独自の“ヴァイブ”作りのために様々な工夫を凝らしている。

スタート当初から客層の大部分が“ジャム・バンド”好きなボナルーは、現在でも音楽マニアにはたまらないゆったりしたヴァイブを保っている。“オルタナティヴ・ロック”イベントとして立ち上げられたコーチェラには確実にエッジのきいたヴァイブが流れている。ボナルーとコーチェラは毎年注目を集めるラインアップを実現しており、同フェスへの期待感は年々高まるばかりだ。音楽ファンにとって、昔から大好きだったアーティストや新顔など数多くのバンドを心ゆくまで堪能できるフェスでの数日間は正に至福の時なのである。

キース・カフーン(Hotwire
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