伴 都美子の新アルバムで再認識する「はじまりはいつも雨」の奥深さ(前編)

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伴 都美子初のカヴァーアルバム『Voice ~cover you with love~』がリリースされた。このアルバムでは、アン・ルイスの「夜に傷ついて」や井上陽水の「コーヒー・ルンバ」、ASKAの「はじまりはいつも雨」、小泉今日子の「優しい雨」、財津和夫の「切手のないおくりもの」など全11曲を彼女自らのセレクトで、そして彼女自身の解釈の下にカヴァーしている。さらに、ボーナストラックとして、ソロ3枚目のシングル曲「夢路」のアコースティックバージョンも収録。

まずは伴ちゃんの声質の面から見てみよう。彼女は柔らかく、人に安らぎを与える声を持っている。なので、どちらかというと、スローバラード系の曲にはピタリとハマると想像できるだろう。現に、今回のアルバムでいうと、国民的スタンダードナンバーとなっている坂本九の「見上げてごらん夜の星を」や、財津和夫の名曲「切手のないおくりもの」などは、伴ちゃんの声だけですべてが満たされてしまうような空気感を持つ楽曲に姿を変えている。特に「切手のないおくりもの」はアカペラアレンジが施されており、人の温かみがほんのりと伝わるような、原曲の雰囲気をさらに膨らませた素敵な1曲に仕上がっている。

しかしその逆もしかりで、たとえば「コーヒー・ルンバ」などは、聴いていて何かスパイスが足りない気がした。井上陽水が歌った「コーヒー・ルンバ」と比較しながら想像するに、この曲には、彼女の声質や歌い方など、我々が彼女から受ける“安心感”とは対極にある、“不安感”や“ミステリアスさ”が必要なのだ。いや、実際に伴ちゃんの歌にも怪しい感じは出ている。だがしかし、井上陽水のように、“こってりと妖艶で怪しさ満点”なムードこそが、このマイナー調のメロディーラインと紡がれた物語を際立たせている要素なのだ。

このように、カヴァーアルバムによって、アーティストではなく、その曲自身が持つ魅力や、さらに際立たせる要素などを再認識させてくれるということはよくあり、これもまたカヴァーを聴く際の楽しみの1つといえるだろう。

ただ、我々が意識しなければならないのは、カヴァーというものはオリジナル歌手の真似をすることではない、ということ。たとえば彼女の「コーヒー・ルンバ」は、はるか昔のアラブという、想像できない摩訶不思議な曲の雰囲気こそ足りないかもしれないが、その一方で、若い娘に恋をした(哀れだった)男が幸せで胸を膨らませている雰囲気は十分に伝わるだろう。原曲の雰囲気を壊さないことも大切なのかもしれないが、逆に大胆なカヴァーをされることによって原曲について改めて気づくこともあるし、何より大胆にアーティストの色を見せた方が聴いていて楽しい。

では、このアルバム内からもう1曲取り上げてみよう。「はじまりはいつも雨」だ。

⇒ 「伴 都美子の新アルバムで再認識する「はじまりはいつも雨」の奥深さ(後編)」に続く
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