サカナクション、デビューアルバム『GO TO THE FUTURE』インタヴュー

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サカナクション
デビューアルバム『GO TO THE FUTURE』を5/9リリース

■インタヴュー後半

――テクノといっても、やっぱりバンドサウンドにはこだわりがあるみたいだね。

山口:僕の作ったメロディと言葉をたくさんの人に届けるためのバックトラック、というコンセプトは常に持っていて、僕にとってそれを伝える手段は生演奏じゃなきゃいけないんです。打ち込みだとただのハウスになっちゃうし、1人でやったら他の人の意見が入ってこない。つまりロックじゃなくなっちゃう。スタンスはあくまでロックバンドだから、バンド形態で生演奏、それでテクノをやることに意味がある。そこに面白さを感じるし、ふざけた感じが出るんじゃないかな。

――『GO TO THE FUTURE』の収録曲は、これまでの活動の中で作ってきたもの?

山口:そうです。リリースが決まってから完成まで1ヶ月もなかったんですけど、その前のデモ制作で時間をかけて練り込んでいたので、比較的スムースにできました。最後の曲だけはこのアルバム用の書き下ろしで、このステージの最終曲というつもりの曲なんです。メロディを伝える手段として、今回はたまたまクラブミュージックのエッセンスを使ったけど、次はどうなるかわからないんで。今回の方法の完結編という感じ。

――次は別のサウンドになるかもしれない?

山口:はい。今のサウンドにこだわっているわけではまったくないので。今回は歌モノとテクノの融合を提示してみた、というだけで、次はメタルとかパンクとの融合になるかもしれないし。まあそれはできないと思うけど、できなそうだからやってみたいとも思いますね。

――このアルバムの中で特別に思い入れのある曲は?

山口:「三日月サンセット」と「白波トップウォーター」ですね。やっぱりこの2曲は、クラブミュージック的なことをバンドでやるきっかけになった曲だし、そういうことに最初にトライした曲ですから。こういうメロでこう展開すればきっとハマるだろうと思って始めたのが、今回のレコーディングでやっと完結したという感じですね。

――その2曲は地元のカレッジチャートやラジオでも好評だった。

山口:もしこれが好評でなかったら、自分の感覚が間違ってたということで違う方向へ行ったと思います。好評だったから、このやり方は正しいんだ、みんな面白いと思うんだなと。自分のメロディと言葉が認められたんだと思いました。

――アルバムに入らなかった他の曲もこの方向なのかな?

山口:さあ、それはどうですかねぇ(笑)。けっこう違うのもありますし、今はプログレっぽいのをやってたりします。つねに成長途中だと思ってるから、方向性についてはこだわりはないです。ただ、1つのコンセプトを持ってこのメンバーでやってる以上、すごくぶっ飛んだことをやったつもりでも、そんなにかけ離れたものにはならないと思うんです。大きな変化はしたいと思ってますけど。

――ライヴでも同じ音を再現したいと思う?

山口:それはもうまったく別物。CDとかの音源は“作品”なんです。僕たちの目指すところは、クラブシーンのアンダーグラウンドのリスナーと、J-ポップリスナーの両方に向けたものなんです。アンダーグラウンドのリスナーは音の質やアート性にこだわりがあってJ-ポップに批判的だったりする。逆にJ-ポップリスナーは歌に執着があっても音には関心がなかったり。でも“作品”はその両方に投げかけられるものにしなきゃいけない。ライヴは生で演奏してるし、両方を取り込める可能性があるんですね。ロックバンドである自分たちをさらけ出す場がライヴだと思ってます。

――歌詞の世界にもこだわりが感じられるけど。

山口:曲はほかの人に向けてやってるんですけど、歌詞、言葉は完全に自分に向けていて、内面的な要素が多いですね。ある意味フォーク的な内面の世界の歌詞が、外に向けた曲に乗っていて、さらにバックグラウンドに新しいと思えるエッセンスが入っている、そのバランスが今のサカナクションの中核となるコンセプトなんです。

――次作の構想を教えて。

山口:自分の中では、みんなが理解できる範囲で、こうしたら新しいだろうという構想はすでにありますよ。でも今は言えない(笑)。今回アルバムとして1つの方向性を提示できたので、これがどう評価されるかによって、それを受けてまた次の方向性を考えていくことになると思います。

取材・文●田澤 仁

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