ヴェルヴェット・リヴォルヴァー『リベルタド』への道(3)

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ヴェルヴェット・リヴォルヴァーというバンドの成り立ちについて説明しようとするとき、「アクセルとイジー抜きのガンズに、ストーン・テンプル・パイロッツのヴォーカリストが加わった状態」と片付けてしまうのは簡単だが、その形容にはあてはまらないメンバーが1人いる。言うまでもなく、デイヴ・クシュナーのことである。

日本では、あのhideの遺志を継ぐようにして活動していた変則的グループ、zilchに籍を置いていたことでも知られているデイヴ。だから大概の場合は“元zilch”という肩書きで紹介されることになるし、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーの他のメンバーたちとはまるで縁もゆかりもなかった人物のように語られることも少なくない。が、実は彼ほど“ここに居る必然性”の高いギタリストは他にいないのである。

まず興味深いのは、デイヴとスラッシュが、ジュニア・ハイスクール時代から友人関係にあったということ。さらにデイヴは1992年、エレクトリック・ラヴ・ホッグスというバンドでメジャー・デビューしているのだが、当時、彼らとよく“対バン”していたのが、マイティ・ジョー・ヤングというバンド。そこでフロントマンを務めていたのが若き日のスコット・ウェイランドだった。スコットは当時を振り返りながら「お互いのバンドに対して敬意を抱きつつ、どちらが先に成功を手にするか競っていた」と語っている。また、余談ながら、このバンドのデビュー作『エレクトリック・ラヴ・ホッグス』では、モトリー・クルーのトミー・リーがプロデュースを手掛けていたりもする。

そしてもうひとつ興味深いのは、デイヴがzilch在籍時代にダフ・マッケイガンと出会っているという事実。LUNA SEAの終幕を経たJとzilchの合同主宰による国内ツアー、『FIRE WIRE 2001』に、当時ダフ自身がフロントマンを務めていたローデッドが参加しているのだが、その際にデイヴとダフは意気投合し、のちにデイヴはローデッドにも一時的に籍を置くようになっていたりするのだ。

こうした事実関係を踏まえれば、「誰かいいギタリストはいないか?」という話になったとき、彼らのなかからデイヴの名前が出てくるのも当然であることがおわかりいただけるはずだと思う。さらに補足しておくと、デイヴにはインフェクシャス・グルーヴスやダンジグ、デイヴ・ナヴァロと活動を共にしていた時代もあり、もっとさかのぼればL.A.パンクの老舗バンド、ウェイステッド・ユースでの活動歴に突き当たる。そして同バンドでドラマーを務めていたのが、彼とzilchで活動を共にし、現在はクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジで活躍中のジョーイ・カスティロなのである。

そんなデイヴが一時苦労していたのが、自身とzilchとの関わりについての説明。この特殊なグループについてまったく知識を持たない欧米のジャーナリストたちに、「首謀者がすでに亡くなっているにもかかわらず、プロフェッショナルズやダンジグ、ホワイト・ゾンビでの活動歴を持つツワモノたちが名を連ねていて、しかも日本でのみ活動している」というこのグループについて理解を得ようとするのはとても困難だったようで、実際、デイヴ自身も「欧米のメディアに僕の過去の経歴を説明しようとすると、zilchについて理解してもらうだけで取材時間が終わってしまう」と語っていた。

しかし現在のデイヴ・クシュナーの肩書きは“元zilch”ではなく、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーのギタリスト。彼がこのバンドに不可欠な存在である事実は、彼らのライヴに接したことがある人ならば誰もが理解しているはずである。

と、いうわけで、いよいよ発売が迫ってきた『リベルタド』。筆者はすでに関係者特権でその音源を聴きまくっていたりもするのだが、そろそろ個人単位でこっそり楽しむことは止めて、次回あたりからこの2ndアルバムについてさまざまな観点から分析を始めていこうと思う。

文●増田勇一
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