萬Z(量産型)&manzo、『萬Z。Best』インタビュー

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■INTERVIEW

――初のアルバムは、ベストアルバムで来ましたね。

マンゾー:事務所社長の石川から、ここらで一度ベスト盤を出してみようという話があったんです。ちょうどそのとき自分の気持ちの中でも、「日本ブレイク工業社歌」の盛り上がり以降いろいろやってきて、なにか一回りしたなあという感じがあって。それで、これまで培ってきたものを詰め込んだベストを作ってみようと。

――発売が半年延期になったとか?

マンゾー:最初は、今までの音源をそのままとりあえずまとめて1月に出そうということだったんです。でも、なにも手を加えずリマスターだけで出すのって、もし僕がファンだったらそれはいやだなと思って。自分自身が買ってもいいと思えるものを作らせてくれと言って、延ばしてもらったんです。だから、自分自身で納得したものができたという自負はあります。

――過去の音源のどんなところに手を加えたの?

マンゾー:最近機材をMACからWindows対応に変えたんです。そうしたらやれることが増えた。特にミックスダウンですね。僕自身この1~2年で、ミックスでかなり聴こえ方が変わることがわかってきたんです。だから変えたのは主にミックスです。あとは、曲によっては歌を録り直したし、演奏でも縦のライン、つまりリズムが揃ってないのを弾き直したりしてます。

――特に思い入れのある曲は?

マンゾー:やっぱり「日本ブレイク工業社歌」ですかねえ。元々僕がmanzoという名前で細々とやってたときに、TVで取り上げられることになって、じゃあもっと急ピッチで出していこうというところから萬Z(量産型)という名前が生まれて今につながっているんですよ。今回「日本ブレイク工業社歌」は2パターン入ってるんですが、前に作ったオリジナルと今回作り直した「2007」でアルバム全体を挟むことで、“萬Z”という屋号の歴史をたどっていくという意味があるんです。だから1曲目に置いた2007バージョンは、この数年間でこう変わりましたというプレゼンテーションみたいなもんですね。

――2007バージョンは今のマンゾーの渾身の一作ということだね。

マンゾー:そうですね。これに関しては、僕のリニューアルした魅力をどれだけ伝えられるかずいぶん悩みました。以前セリフだったところがギターソロになっていますが、最初は他のギタリストに頼んだんです。でも、上手くてよかったんですけど、なんかカッコ良すぎちゃって。自分が弾いたほうがいい意味でカッコ悪くてそのほうがよかった。素人が一生懸命やってるっていう感じ。ただこの曲って、あの作業着のイメージがキツ過ぎて、やりたくなかった時期もあったんです。でもこの曲があったからそれから色々あったわけだし、今まで僕が培ってきた知識を、わかりやすい形でこの曲に詰め込んでみようと。

――すっきりと聴きやすいしパワフルになった。

マンゾー:歌も演奏も、基本的には全部録り直してます。元々は全部打ち込みなんです。ギターも僕が弾いたものをサンプリングして使ってる。そのいかがわしい感じがいいんです。ただ、何年もたって同じことやってもしょうがないし、機材的にもできることが増えたから、とにかく音を立たせようと思って。すべてツブ立ってきちんと聴こえてくるというのを目指したんです。

――他の曲にもかなり手を加えたの?

マンゾー:歌は録り直してない曲のほうが少ないですね。「翔べ!ウサライダー」と「21st Century Motorway Star」だけは歌い直してないですが、ミックスにむちゃくちゃ時間をかけました。「ウサライダー」はタイコのパターンとかフィルまで変えました。この曲はグループサウンズっぽいんですけど、より近づけようと研究しましたね、70年代の歌謡曲とかを聴きまくって。当時ってまだ4トラックとか8トラックで作ってることが多くて、リバーブもステレオじゃないのに歌がちゃんと抜けてるし、ギターとかベースもきちんと聴こえる。チープな魅力というか、あの感じがいいんです。前よりさらにできることがあるならやってみる。それが制作者としての義務だと僕は思ってるんです。

――萬Z名義とmanzo名義はどう使い分けてるの?

マンゾー:これ、そもそもは音の違いじゃないんですね。僕は自分のことをアド・アーティストって言ってるんです。広告っていう意味の「アド」。たとえば小林亜星さんとか山本直純さんとかキダタローさんとか、偉大な作曲家さんのCMソングっていっぱいありますよね。商品名を連呼するあのパターン。あれって作曲家さんが作ってアーティストが歌ってる。それを自分で作って自分で歌ってるのが萬Zなんです。逆にアニメの「げんしけん」のタイアップの2曲は、タイアップだから僕は脇役にならなきゃいけない。だからmanzoなんです。

――基本はロックやメタル、ポップでも、アレンジはゴージャス。

マンゾー:曲は10歳くらいから作り始めたんですが、僕は飽きっぽいんで音楽も全部つまみ食いなんです。ただやっぱり基になってるのは小中学校までの原体験、歌謡曲でしょうね。だからゴージャスに聴こえるかもしれませんが、歌謡曲なんです。僕は曲を作るときには、ギター1本と鼻歌だけで聴けるものにしなければと思ってるけど、それをアレンジでどう聴かせるかというのはまた違う回路なんです。筒美京平先生の影響もすごく大きいです。筒美先生は確かジュディ・オングの「魅せられて」くらいまで、作曲と編曲を両方やってらっしゃったんですが、アレンジが何しろ派手でカッコいい。今聴いてもそう思います。あと、母が飲み屋をやってて元歌手なんで、小さいときから流行歌に触れる機会が多かったから、その刷り込みもあるかも。ジャンルがどんなとかいうのは後の話で、まず派手にしたいというのがあるんだと思います。

⇒マンゾーインタヴュー NEXT

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