[短期集中全力レポート] Dir en grey in Europe 2007 フィンランド編(2)

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8月5日、午後4時。日没が遠いどころか、太陽が傾く気配すらない『ANKKA ROCK FESTIVAL』のステージに登場したDir en greyを待ち受けていたのは、耳をつんざくような嬌声だった。前日に出演したドイツのメタル・フェス、『WACKEN OPEN AIR』とはまさに正反対の観客層。9割近くは女性、と言って間違いないだろう。そして彼女たちの熱狂は、ちょうど60分の演奏時間のあいだ、一度も冷めることがなかった。

誤解を恐れずに言えば、僕自身、現在のDir en greyには、黄色い嬌声よりも野太い怒号のような歓声のほうが似つかわしいと感じているし、正直、女性ばかりのオーディエンスのなかでライヴを観るという行為には、抵抗こそないものの、若干、居心地の悪さを感じることがある。が、この日、彼女たちが熱狂するさまにネガティヴな印象を持たなかったのは、そこに邪念を感じなかったからではないかという気がする。とにかくステージ前に過剰な密度で集結したファンの大群は、ずっとまっすぐにステージを見据え、ヒステリックに声を発し続けていた。長年願い続けてきたフェイヴァリット・バンドとの対峙。その瞬間を素直に喜び、興奮を押さえきれずにいるさまは、むしろ清々しくさえあった。文字通りの加熱を抑えるために、客席には常に水が放出され続け、一帯には湯気が立ち込め、そこに虹が見えることもしばしばだった。

が、バンド側にとっては運が悪かった部分も少なからずある。午後4時から5時にかけてという彼らの出演時間は、結果的にこの1日のなかでもいちばん熱い時間帯とぶつかってしまい、さらには直射日光がステージに襲いかかることになった。メンバーたちの体力的な消耗度の高さは、間違いなく過去最大級のものだったはずだ。

ちなみにこの当日、彼らと同じステージに立ったのは、地元フィンランドのSONATA ARCTICAやAMORPHISといったメタル・バンドや、スウェーデンのパンク・バンド、MILLENCOLINなど。他のステージにはNINE INCH NAILSやTHE 69 EYESが登場していた。

なお地元関係者によれば、この『ANKKA ROCK』というフェスの名称は、意味的には英語で言うところの「ダークなロック」に近いそうで、「明るく楽しいばかりではないロック」といったニュアンスを持ち合わせているらしい。また、同じ人物からは「Dir en greyが今回のフェス開催について果たした貢献は、とても大きいと思う」とも言われたが、それは敢えて指摘されるまでもなく、会場の熱狂ぶりを見ただけで明らかだった。なにしろ、実際どの程度極端な状態だったのかはわからないが、「Dir en greyの演奏中、他のエリアが閑散としていた」という話も耳に飛び込んできたほどなのだから。

写真は、終演後に話を聞いた少女たち。「Dir en greyはすごく有名。学校の友達もみんな知ってる」と言う。そして「私たち元々ヘヴィ・メタルも大好きで、SONATA ARCTICAのファンでもあるの。メタル・ファンのなかには日本のバンドに興味を持っている人が多いと思う」とも語っていた。メタルの支持層がかなり低い年齢層にまで広がっている事実もまた、この国の音楽シーンのあり方を特徴づけている要素のひとつなのかもしれない。

そしてDir en grey一行は、このフィンランドに一泊した後、隣国スウエーデンのストックホルムへと向かった。もちろん同国でライヴを行なうのも、彼らにとっては“初”ということになる。

文●増田勇一
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