増田勇一のライヴ日記【10】2007年8月18日(土)サスライメイカー@下北沢CLUB 251

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“お気に入り”が増える瞬間の到来というのは、誰にとっても無条件に嬉しいことであるはず。逆にそれを想定しつつ出かけたライヴで肩透かしを喰らわされたりすると妙な疲労感に襲われることになったりするものだが、この夜のライヴは間違いなく前者だった。

サスライメイカーという名前には、まだ馴染みのない人のほうが多いはず。これは山口県出身の新進シンガー・ソングライター、磯部俊行の別称。ライヴ自体はバンド形態で行なわれているのだが、あくまで彼個人がサスライメイカーというわけだ。去る8月8日、あのJがオーガナイズするINFERNO RECORDSから『虹色列車』と題された2ndミニ・アルバムを発表したばかりで、この夜のライヴにも同じタイトルが掲げられていた。

CROSS、スナッフロール、ストロボという3組の共演者たちの演奏を経て、充分に温まったステージに登場したのは、女性キーボード奏者を含む4人のメンバーたちを従えたサスライメイカー。そのサウンドは、ポップともロックともフォークとも形容可能なものだが、僕個人の感触で言えば「日本なりのオルタナ・カントリー」であり「現代版ソフト・ロック」といったところだろうか。繊細だけれども意外なほど芯は太く、いまどきありがちな閉塞感ではなく、むしろ大地の匂いみたいなものを、そこはかとなく感じさせる。ここで「オーガニック」なんて言葉を使うと妙にお洒落なニュアンスになってしまうだろうが、実際、とても有機的な音楽だと僕は感じた。

軽やかで、決して太くはないけれども、しっかりと届く磯部の歌声。だから、さまざまな思いが込められたリアルな言葉も、音に埋もれずに飛び込んでくる。甘くなりすぎず、しかも悲壮感に塗りつぶされることのないメロディのさじ加減にも光るものを感じずにはいられなかったし、あくまで楽曲に相応しい空気感を構築することに徹しつつも、まさに微熱状態のような情感を感じさせてくれるサスライメイカー全体としての演奏ぶりも、僕にはとても心地好かった。そう、悲しみが起点にある曲でも絶望的じゃなく、アッパー系の楽曲でも過剰な暑苦しさとは無縁なのだ。

ちなみに彼らは8月27日、磯部(とメンバーのうち2人)の地元である山口県の周南・TIKI-TAを皮切りに『TOUR 2007:虹色列車』をスタートする(その前日、8月26日には同じ山口県の下関で『しものせき馬関まつり』にも出演)。そして10月6日には、レーベルの親分(笑)であるJの渋谷・AXでのライヴ(5夜連続公演の第4夜)にスペシャル・ゲストとして出演することも決まっているし、さらには11月11日、渋谷・O-Crestでのサスライメイカー史上初となるワンマン・ライヴも決定した。まずは是非一度、この男と仲間たちのライヴに触れてみることをおすすめしたい。

「四つ星のクローバー」PV
https://www.barks.jp/watch/?id=1000019600


文●増田勇一
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